日本語と日本の文化・歴史を伝える仕事
日本語教師の仕事は、主に外国人学習者に対し、日本語の発音や文法、読み書きを教えること。日本語教育を通じて、日本人の生活習慣や文化、歴史を学ぶきっかけをつくるという大事な役割を果たします。日本語教師には、様々な能力が求められます。日本語そのものに対する幅広い知識はもちろんのこと、非言語のコミュニケーション能力も重要な要素です。これまでの社会経験や、学生時代の経験、自身のIDENTITYが生かせる仕事、それが日本語教師です。
□仕事を通じて国際協力ができる!
□海外で働くチャンスがある!
□外国人学習者との交流で異文化を学べる!
慢性的な人手不足から、さまざまな業種で外国人スタッフを受け入れる企業が増えています。しかし、外国人が独学で敬語や尊敬語などを交えたビジネスレベルの日本語を身につけるのはかなり難しいことから、近年、専門教育を受けた日本語教師のニーズが急上昇しています。日本語教師は、日本語を学ぶ外国人にとって、もっとも身近な国際協力の象徴的存在といえそうです。
日本語教師の活躍の場は日本国内だけでなく、海外の日本語学校や教育機関、現地の日本企業などで、外国人に日本語を教える機会もあります。国際交流が活発になるなか、日本語教師の活躍の場は広がっています。
日本語教師は教える立場ではありますが、日本語を学びたいという強い意欲を持った外国人学習者との交流を通じて、教師自身も異文化を学び成長できる面があります。人に教えることが好きで、海外と日本の架け橋になりたい人にとって、日本語教師はうってつけの仕事といえるのではないでしょうか。
教える以外にもたくさんある
日本語教師の仕事
日本の伝統文化やポップカルチャー、テクノロジーやビジネスへの関心が高まるなか、海外で日本語の学習熱が高まっています。日本語教師は、日本に住む外国人や海外で日本語を学びたい人たちに対し、習得の目的や学習者のレベルにあった指導を行い、日本語習得をサポートします。
日本語教師のおもな業務とは……
(1)習得の目的やレベルにあわせて学習プランを立てる
(2)日本語の発音や文法、読み書きを教える
(3)授業の準備や採点や添削、事務作業、進路相談 など
(1)習得の目的やレベルにあわせて学習プランを立てる
ひと口に日本語を教えるといっても、日本語を習得する目的や学ぶ人のレベル、またグループレッスンかマンツーマンレッスンかでも、教え方は変わります。所属する学校や教室によっては、決められたカリキュラムに沿って教えれば良いということもあるでしょう。しかし、学習効果を最大化させるには、自分が受け持つ教室や学習者の特性・学習環境にあった学習プランを立てることが重要です。これも日本語教師の大切な仕事のひとつです。
(2)日本語の発音や文法、読み書きを教える
学習コースや学習プランに沿って、日本語の発音や文法、読み書きを教えます。日本語教師は、学習者の母語で授業を進めると思われる人がいるかもしれませんが、さまざまな国から学習者が集まる国内で日本語を教える際には、日本語で授業を行う「直接法」が一般的です。一方、海外で教える場合など、学習者全員が理解できる共通言語が日本語以外である場合は、その国の言葉で教える「間接法」を採用することもあります。
(3)授業の準備や採点や添削、事務作業、進路相談 など
日本語教師の仕事は、日本語を教えるだけではありません。副教材制作といった授業の準備から、テスト問題の作成や採点、宿題の添削、出欠管理や報告書作成、会議への出席まで、さまざまな業務をこなします。また、学習者からの質問に答えたり、進路相談に乗ったりすることも日本語教師の大事な仕事です。
国内のみならず
海外でも必要とされる日本語教師
●働く場所−日本語学校や個人教室、教育機関、企業、NPO法人や日本語サークルなど、日本語教師の働く場所は多岐にわたります。
●活躍の場−就職先としては日本国内のほか、海外で日本語教育に携われるチャンスもあります。
<働く場所>
留学生や、外国人ビジネスマンとその家族を対象にした日本語学校や日本語教室、外国人学習者や学生を迎え入れている教育機関、企業・団体などで教えることができます。また、NPO法人や日本語サークルのボランティア教師として教える人もいます。
日本語教師が求められる場所
日本語学校、日本語教室、企業・団体、教育機関(小・中・高・大)、インターナショナルスクール、NPO法人、ボランティアサークルなど
<活躍の場>
日本だけでなく、海外で日本語教育に携われるチャンスもあります。とくに日本との結びつきが強いアジアのなかでも、日本企業が数多く進出している中国やタイ、ベトナム、また経済連携協定(EPA)に基づいて、日本の医療・福祉の現場に、看護師、介護福祉士を送り出しているインドネシアやカンボジア、フィリピンでも日本語学習熱が高まっています。
キャリアアップのためには
指導力の向上がカギになる
【ワークスタイル】
国内や海外、就職先の規模や業態によっても変わりますが、一般的には学校などの教育機関や予備校、塾の教師や講師に近い働き方といえます。ただ、雇用契約によっては、事務作業や会議の出席、進路相談などに割く時間に多寡があるので、応募の際には雇用形態とあわせて、担当する業務を確認しましょう。
【仕事の継続性】
日本語教師の雇用形態は、大きく分けて常勤と非常勤があります。条件が良い常勤職の求人は競争率が高く、非常勤教師として複数の日本語学校をかけ持ちしている人も少なくありません。国内外で日本語学習の需要は高まっています。たゆまない指導技術向上への意欲が、継続的に仕事を得るためのカギになりそうです。
【転職・スキルアップ・キャリアアップ】
日本語教師を採用する側は、資格の有無だけでなく、教師としての経験や指導力、専門性、人柄、コミュニケーション能力などを総合的に判断して採用を決めます。なかでも重要視されるのが、授業における指導力。実践の場である授業を通じていかに指導力を高めていくか、戦略的に学び、自らの能力を高めていける人は、その後のキャリアアップにも良い影響があるでしょう。常勤職は非常勤職に比べて雇用は安定しているものの、授業以外の業務が多くなる傾向にあります。どちらを選ぶかを決めるのも、就職や転職の際のポイントとなるでしょう。
アジア圏を中心に
日本語学習者は今後も増加する
日本国内にいる日本語を学ぶ外国人の数は、2017年11月現在で23.9万人を超え、対前年で約10%増加しました。一方、日本語教育能力検定試験の新規合格者は前年度の1463人から1937人と500人近く増えたものの、日本語教師数全体では4%程度の増加に留まっています(文化庁「平成29年度 国内の日本語教育の概要」)。
また、海外の日本語学習者数は、世界137カ国と地域でおよそ365万人にのぼるとされ(国際交流基金「2015年度海外日本語教育機関調査」)、なかでも経済成長が著しく、日本と関係が深いアジア圏で、今後さらに、日本語学習需要が増加するのではないかと見られています。
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学習者個人の成長を垣間見ながら
国際貢献にもつながる仕事
●学習者の成長を間近に実感できる
日本語教師はけっして楽な仕事ではなく、待遇面でも必ずしも恵まれているとはいえません。しかし、それまで日本語をまったく話せなかった学習者が、少しずつ日本語を覚え、成長していく過程を間近で見ることができるのは、日本語教師にとってこのうえない喜びといえます。
●国と国との架け橋になれる
海外に身を置き、日本語や文化を伝えることができる日本語教師は、さまざまな文化や価値観にじかに触れる機会が多い仕事です。国際交流を通じて、国と国との架け橋になれるのも日本語教師の魅力のひとつです。
●異文化に接して視野が広がる
日本語を教える過程では、国籍や年齢、立場が異なる学習者たちのバックボーンである歴史や文化的背景に触れる機会も少なくありません。異文化に接することで、自分自身の視野を広げることができるのも、この仕事の醍醐味といえるでしょう。
登録日本語教員は、2024年4月よりスタートした新しい日本語教師の資格です
「日本語教育機関認定法」が2024年4月1日より施行されました。これにより、認定日本語教育期間(日本語学校)では、文部科学大臣の登録を受けた「登録日本語教員」でなければ、授業を担当することができません。ただし、経過措置期間内(移行期間)は、従来制度の日本語教師資格(法務省告示校日本語教員)でも、日本語学校で授業ができます。
登録日本語教員になるには?
日本国内にある日本語教育期間(認定日本語教育期間)で教壇に立ち、外国人に日本語を教えるためには、文部科学大臣の登録を受け、「登録日本語教員」になる必要があります。それには3つのルートが用意されています。
●国家試験ルート
下記(①および②)を経て、文部科学大臣の登録を受けます。
①国家試験(基礎試験・応用試験)に合格すること
②実践研修(45単位時間以上)を修了すること(基礎試験合格後に受講可能)
●(新)養成機関ルート
下記(①および②)を経て、文部科学大臣の登録を受けます。
①文部科学大臣の登録を受けた期間で420時間研修を修了すること(実践研修も一体的に実施)
②国家試験のうち応用試験に合格すること(基礎試験は免除されます)
●経過措置の特例ルート(2033年3月までの特例)
下記(①および②)を経て、2033年3月末までに文部科学大臣の登録を受けます。
①必須の教育内容50項目に対応した420時間研修(従来制度)を修了すること(実践研修は免除されます)
②国家試験のうち応用試験に合格すること(基礎試験は免除されます)
2029年3月末までは従来制度で日本語教師として働ける
日本にある日本語教育機関(法務省告示校または認定日本語教育機関)で教壇に立ち、外国人に日本語を教えるためには、学士の学位を有し、かつ、文化庁への届出を受理された日本語教師養成講座を420単位時間以上受講し、修了する必要があります。(2024年4月以降に資格取得を目指す場合)
●「420時間総合コース」を受講して登録日本語教員になるには
「420時間総合コース」を修了した方は、経過措置による特例により、「応用試験」に合格すれば「登録日本語教員」になることができます。
①420時間総合コースを修了後、
②経過措置期間中(2033年3月末まで)に、
③国家試験(応用試験)に合格し、
④文部科学大臣の登録が必要
(2033年3月末までの経過措置期間中は、基礎試験および実践研修が免除となります。)
●従来制度でスタートするメリット
「420時間総合コース」を修了すれば、
①国家資格取得前からすぐに仕事ができる!
⇒資格は最長2033年3月まで有効。それまでに国家資格取得でOK。
②実務を経験することで、国家資格に受かりやすい!
⇒特に「応用試験」は現場経験の差が出やすいといえます。
③日本語教師が不足しており、就職チャンスが多い!
⇒求人も多く、条件も良くなってきています。
●「420時間研修」従来制度と新制度の比較(まとめ)