わかる「公務員」ガイド
公務員は国民の生活の基盤を整えてくれる、社会になくてはならない存在です。なかでも、地方公共団体で働く「地方公務員」は、わたしたちの生活に密接に関わる、一番身近な公務員といえるでしょう。ここでは、地方公務員について、実際にどんな仕事をするのか、また種類や活躍できるフィールドなどについて紹介します。
就活生に人気の高い公務員のなかでも、各地方公共団体で地域密着型の仕事に携わる地方公務員は、地域活性のために貢献できる職業の一つです。
地方公務員は、都道府県あるいは各市区町村などの公共団体で採用されるため、広範囲の転勤がありません。そのため、結婚や育児、住宅購入などの将来設計がしやすい職業だといえます。
また、安定した休日日数や給与を得られるため、経済的に安定した生活を送れるほか、仕事と家庭の両立がしやすいことも地方公務員の特徴です。
ここでは、地方公務員の仕事内容や種類、やりがいを始め、地方公務員になるための試験や勉強法について解説していきます。
各地域の住民にとって一番身近な公務員といえる地方公務員は、実際にはどのような仕事をしているのでしょうか。
地方公共団体に所属し、地域住民のために働く公務員のことを地方公務員といいます。公務員全体の8割ほどが地方公務員となり、全国で270万人以上が活躍しています
地域密着型の地方公務員は、地域住民の要望などを行政に反映させて、住民がより良い暮らしを実現できるようにすることが仕事です。
具体的には治安や交通、消防や水道などのライフライン、教育や文化事業など、地域の生活全般に関することに携わっています。窓口業務などを行なう役所勤務などであれば、地域住民とも深く関わるため、コミュニケーション力が必要とされます。
勤務場所は役所のほかに、公立学校や図書館などの教育関連施設、福祉施設、病院、上下水道施設、清掃施設など幅広く、警察官や消防士も地方公務員に含まれます。
なお、地方公務員は「地方公務員法」により勤務条件や勤務時間、給料などが定められているので、それに従って勤務しなければなりません。
地方公務員にはさまざまな種類があり、仕事内容も異なります。
行政職は社会福祉や都市計画、農林水産業の振興など、地域に必要な施策の企画・立案から予算編成や執行まで携わる職種です。役所の窓口業務や事務業務などの行政サービスにも関わるため、地域住民と接する機会もあります。
行政職の募集は、それぞれの都道府県・市町村・政令指定都市で別々に行なわれており、東京23区は「東京特別区」として募集されます。
技術職には土木・建築・機械などの区分があり、専門知識を活かして、建造物の維持管理や地域の事業者・企業への指導、研究などに携わる職種です。また、地場産業の研究・開発として、農業が盛んな地域なら作物の品種改良、漁業が盛んな地域なら養殖技術などの研究・開発をすることもあります。
技術職はインフラを提供している地方公共団体で募集するほか、電気・農業・化学などの職種もあるため、理工学などの専門知識を持つ技術職の募集もあります。
公安職は警察官や消防士など、地域の治安維持に努める地方公務員のことです。
警察官の多くは地方公務員となります。地域で勤務する警察官には、交番や派出所に勤務する地域警察、交通違反を取り締まる交通警察、犯罪の取り締まりや事件の捜査などを行なう刑事警察などがあります。
消防士は火事が起きた際の消火活動、事故現場での救助、緊急の傷病者に対する応急処置や搬送、防災など多岐にわたります。
いずれも住民の安全や人命に関わるため責任が重く、体力的にもハードですが、やりがいのある職種です。警察官や消防士になるための地方公務員試験では、筆記試験や面接のほかに、適性を見るための身体検査・体力検査などが基本的には実施されます。
資格や免許を活かして働く資格職には、公立学校の教師や保育士、看護師、薬剤師、臨床検査技師、栄養士・管理栄養士などがあります。
また近年は、福祉事務所のケースワーカーや特別養護老人ホームの職員といった福祉職のほか、児童や保護者のカウンセリングを行なう児童心理士といった心理職の需要も高まっています。
地方公務員になると、以下のようなやりがいやメリットがあります。
地方公務員は各地方公共団体に所属し、地域密着型の業務を行ないます。勤務先が徒歩や自転車で通勤できる範囲である場合が多く、通勤時間も短い傾向があります。
転勤する場合も、所属している地方公共団体内の組織への転勤となり範囲が限定的なため、多くは転居の必要がありません。結婚してマイホームを持ちたい、子どもは地元の学校に通わせたいなどの将来設計がしやすいこともメリットです。
地方公務員は管轄地域の住民のことを考えて活動するため、より良い暮らしの実現に向けてライフラインを整える、住民の声を行政に反映させるといった仕事に携わります。
このような地域密着の仕事は住民の反応を間近に見ることができるので、実際に役立っているのかがわかり、地域に貢献できるというやりがいを実感できます。
地方公務員の労働時間や休日は地方公務員法という法律で定められ、勤務時間は基本的に休憩時間を除いて1日8時間まで、土曜日・日曜日および祝日などは休みとされています。
休暇制度が充実しており、年次休暇(有給)のほかに病気休暇、特別休暇(夏季、結婚、出産、忌引、ボランティアなど)、介護休暇があります。そのため、出産後の女性も働きやすい環境となり、長く働き続けることが可能です。
また、給与は法律に基づいて決められているため、民間企業のように景気に左右されることが少なく、経済的に安定した職業であるというメリットがあります。
地方公務員の給与は、所属する地方公共団体によって変わります。そのため、ここでは総務省が発表したデータをもとに、全体の平均給与を紹介します。
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団体区分 | 平均年齢 | 平均給料月額 | 諸手当月額 | 平均給与月額 | 平均給与月額 (国比較ベース) |
---|---|---|---|---|---|
全地方公共団体 | 42.1 | 316,993 | 83,867 | 400,860 | 360,949 |
都道府県 | 42.8 | 324,055 | 89,667 | 413,722 | 366,268 |
指定都市 | 41.8 | 319,806 | 110,227 | 430,033 | 379,749 |
市 | 41.9 | 316,209 | 76,776 | 392,985 | 357,276 |
町村 | 41.3 | 302,270 | 48,606 | 350,876 | 330,286 |
特別区 | 40.6 | 300,184 | 122,883 | 423,067 | 377,355 |
国 | 43.2 | 327,564 | — | — | 408,868 |
※「平均給料月額」とは、給料の調整額を含む。
※「諸手当月額」とは、月ごとに支払われることとされている扶養手当、地域手当、住居手当、特殊勤務手当、時間外勤務手当等の諸手当の額を合計したものである。
(期末手当、勤勉手当、寒冷地手当、任期付研究員業績手当、特定任期付職員業績手当及び災害派遣手当は含まない。)
※「平均給与月額」とは、平均給料月額と諸手当月額を合計したものであり、「平均給与月額(国比較ベース)」とは、比較のため国の公表資料と同じベース(=時間外勤務手当等を除いたもの)で算出している。
出典:総務省「令和2年地方公務員給与実態調査結果等の概要」(https://www.soumu.go.jp/main_content/000722714.pdf)
上記の表の「国」とは、国家公務員のことです。この結果を見ると、地方公務員の給与は国家公務員と比較すると低めであることがわかります。
ただし、これは一般行政職の平均給与額です。所属する地方公共団体や仕事内容、年齢によって異なりますので、あくまで参考として見てください。
地方公務員になるには、地方公務員採用試験に合格しなければなりません。ここでは、試験方法や注意点について解説します。
地方公務員採用試験は、地方上級(大卒程度)・中級(短大卒程度)・初級(高卒程度)と分かれています。「大卒程度」などとありますが、これは難易度を示したものであり、多くの場合は学歴要件ではありません。
また、地方公共団体によって受験資格や試験内容が異なるため、希望する試験の要項を確認することが重要です。
都道府県・政令指定都市の大卒程度の試験です。自治体によって1種・1類・大卒程度などと名称が異なります。
一次試験は教養試験と専門試験を実施するのが一般的ですが、自治体によっては教養試験か専門試験のどちらかのみを実施するところもあります。二次試験では面接や集団討論、適性試験などが実施されますが、自治体によって内容が異なるので確認しましょう。
短大・専門学校卒程度の試験です。
一次試験は教養試験、専門試験、論文試験を実施するのが一般的ですが、自治体によっては専門試験を実施していないなど、内容が異なります。
二次試験では面接や適性試験などが実施されますが、こちらも自治体によって内容が異なるので確認が必要です。
また、現在は地方中級公務員試験を実施する自治体が全国的に少なくなっています。「希望する自治体では地方中級公務員試験を実施していない」ということもありますので、上級もしくは初級を検討したほうが良いかもしれません。
都道府県・政令指定都市の高卒程度の試験です。自治体によっては、初級職・3種・3類・高卒程度などの名称で実施されることもあります。
一次試験は教養試験、論文試験を実施するのが一般的ですが、自治体によっては教養試験のみを実施するところや、エントリーシートと面接のみで合否を決めるところもあります。二次試験では面接や集団討論などが実施されますが、自治体によっては適性試験も実施されるところもあるので確認が必要です。
警察官や消防士の採用試験では、多くの自治体が学歴と年齢を要件にしています。ほかにも身長、体重、視力などが一定の基準に達している必要があるなど、身体的要件もあるため、事前にしっかり確認しておきましょう。
東京の行政を担う東京都職員になるための試験が東京都Ⅰ類、特別区で採用する職員候補者を決定するために実施される試験が特別区Ⅰ類です。
東京都Ⅰ類と特別区Ⅰ類は、地方上級とは別日程で試験が実施されます。ただし、試験区分も多く、やや複雑なので注意が必要です。
自治体によって受験資格や試験内容が異なるため、試験要項を事前に確認しましょう。
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事務系 | 大卒程度 | 21~28歳程度 |
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---|---|---|---|
高卒程度 | 17~20歳程度 |
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技術系 | 大卒程度 | 21~28歳程度 |
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高卒程度 | 17~20歳程度 |
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警察官 | 大卒程度 | 21~29歳程度 |
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高卒程度 | 17~29歳程度 |
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消防士 | 大卒程度 | 21~28歳程度 |
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高卒程度 | 17~20歳程度 |
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※年齢は試験実施年の4月1日時点の年齢です。なお、この表はあくまでも平均的な年齢、試験内容を示しているもので、実際の受験資格(年齢や学歴等)、試験内容(1次と2次の試験種目の違い、3次試験以降があるかどうか等)は各自治体により異なるため、実際に受験できるかどうか試験要項などを事前に確認する必要があります。
公務員試験は種類が多く、受験資格や試験内容などもさまざまです。独学で合格を目指すことも可能ですが、資格スクールや通信教育を利用すると効果的でしょう。
まずは、どのような仕事に就きたいのかを決めましょう。公務員試験は種類が多く、仕事内容や待遇・受験資格・試験内容もさまざまなので、どの試験を受けるのかを知るためにも必要です。
どの試験を受けるのかが決まったら、試験に関する情報を集めます。インターネットや友人からの情報、学校の就職部などを活用し、正確な情報収集をすることが重要です。
勉強方法には、大きく分けて資格スクールの利用・通信教育・独学の3つがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。各勉強法については後述しますが、いずれも1次試験対策に準備期間を1年半ほど設けるとよいでしょう。
自分に合う勉強法を選ぶ参考になるよう、それぞれの活用方法を紹介します。
資格スクールは、試験要項や試験日程など各公務員試験に関する情報収集の精度が高く、自分で調べる手間を省けます。
また、カリキュラムにしたがって学習を進めるため、「出題範囲が広くて何から手をつければ良いのかわからない」ということがありません。通学するスタイルであれば一緒に学ぶ仲間ができるため、勉強期間中のモチベーションを維持しやすい環境にいられるというメリットもあります。
資格スクールの利用は、何から手をつければ良いのかわからない人や、独学では挫折しそうな人におすすめの勉強法です。
通信教育を利用する場合は、テキストや授業が充実し、試験要項について十分な情報収集をしているものを選ぶことが重要です。事前に何件か資料を取り寄せて、講座の内容やフォロー体制などを確認するとよいでしょう。
通信教育は、資格スクールと比較して自分のペースで学習できる点がメリットといえます。ただし、毎月の達成目標を定めて進めるようにしないと、継続して勉強することが難しくなるため注意しましょう。課題の提出などがある場合、一度期限に遅れるとその後も期限を守れなくなってしまうことが多く、挫折する原因となってしまいます。
地方公務員試験の出題範囲は広いため、独学で合格を目指すには、しっかりと計画を立てることが大切です。まずは学習計画を立て、その計画に沿って勉強を進めましょう。
独学は、無理なく効率的に勉強できる計画を立てられるだけではなく、計画に沿って必ず実行する意志や行動力がある人に向いている勉強法です。
学習費用は職種によって異なるため、それぞれの目安となる費用を紹介します。
資格スクールを利用する場合は、受験する時期により費用が異なることもありますが、約10万円~30万円が平均です。
資格スクールによっては面接対策や論文添削のほか、救命講習などもカリキュラムに組み込まれていることもありますので、複数の資格スクールのなかから自分の状況に適したところを探しましょう。
警察官採用試験は年1回もしくは複数回が行なわれるため、試験日が重複しなければ複数の警察官試験を受けられます。資格スクールを利用する際は、受験する時期によってコースや費用が異なる場合があります。
平均的な費用は約10万円~30万円です。通学・Web通信・DVD通信など、さまざまな学習スタイルが用意されている資格スクールもあります。
資格スクールを利用する場合の費用はスクールやコースによって異なりますが、約20万円~40万円が平均です。また、苦手科目だけを選択できるコースを設けている資格スクールもあり、費用は約2万円~5万円が目安となります。
試験範囲を万遍なく学習したいのか、苦手科目を集中して学習するのかなど、自分のレベルに合わせて選ぶとよいでしょう。
通信教育の費用は、利用するものによって異なりますので、事前に資料を複数取り寄せて検討することをおすすめします。教材やカリキュラム、フォロー体制などを比較して、納得の行くところの通信教育を利用してください。
なお、通信教育を利用した場合の平均的な費用は、約5万円~10万円とされています。
独学で公務員試験の合格を目指す場合は、使用したテキストの代金を費用と考えます。しかし、テキスト1冊が約2,000円だとしても、実際には複数のテキストを購入する必要があるため費用は個人差があるでしょう。
また、独学の場合は、試験に関する情報収集も自分で行なう必要があります。他の勉強方法より費用が安く抑えられたとしても、情報収集などの手間と時間が必要になることを覚えておきましょう。
各地方公共団体で働く地方公務員には、さまざまな種類がありますが、給与や勤務時間・休日などは法律で決められているため、民間企業に就職するよりも安定した生活ができることで人気の高い職業です。
また、地方公務員は転勤する範囲が狭いため、将来設計がしやすいことも大きなメリットといえます。
地域に貢献できる仕事としてやりがいも実感できますが、公務員試験は範囲が広く、希望する仕事により受験資格や試験内容などが異なります。そのため、資格スクールや通信教育を利用して合格を目指すのがおすすめです。
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