行政の中枢で国と国民のために働く

国家総合職

わたしたちの生活に欠かせない社会の基盤を担う「公務員」は、景気に左右されることなく安定した仕事であるため、人気の高い仕事のひとつです。なかでも中央省庁で働く「国家総合職」はキャリア、官僚とも呼ばれ、行政の中枢を担う存在です。そんな「国家総合職」の実際の仕事内容をはじめ、ワーク・ライフ・バランス、仕事のやりがいなどについて紹介します。

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国家総合職の仕事内容とは? 国家総合職として働く魅力とやりがい 国家総合職の平均年収はどれくらい? 国家総合職になるための方法 おすすめの勉強法と学習費用 まとめ

国家総合職の仕事とは?平均年収や合格するための勉強方法も併せて解説!

国の機関で働く国家公務員のなかで、「キャリア官僚」といわれるのが国家総合職という区分で採用された方々です。国家総合職は各省庁で国を動かす行政の中枢を担うため、国の政策決定にも関与します。

大きな裁量を持って仕事することができるので、人の役に立つ仕事に就きたかったり、国に貢献したいという人は、国家総合職を目指してもよいかもしれません。

ここでは国家総合職を目指す人のため、仕事内容や国家総合職の魅力とやりがいをはじめ、平均年収や合格するための勉強方法について解説します。

国家総合職の仕事内容とは?

国家総合職にはどのような役割があり、どのような仕事をするのでしょうか。国家一般職との違いについても知っておきましょう。

国家総合職の役割と仕事内容

国家総合職の職員は、中央省庁の幹部候補生として行政の中枢を担う仕事に携わります。いわゆる「キャリア官僚」と呼ばれる立場にあり、各府省で政策の企画立案や法案の作成、それらの大臣や議員への説明・根回し予算編成などの業務に携わります。

そのため、豊富な知識があるだけではなく、文章読解力や発想力、企画力なども必要です。また、法律を読めることや、法案をつくれるなどのリーガルマインドも重要視されます。

国家一般職との違い

国家総合職と国家一般職の違いは「勤務先」「仕事内容」「昇進」の3点にあります。

勤務先

国家一般職の場合、中央省庁のほか税関や労働局などの地方機関も含め、ある程度は勤務先が限定されます。

また、転勤が少なく、仮に転勤するとしても狭い範囲であることがほとんどですが、霞が関本省での勤務以外に地方自治体へ出向することもあります。

一方、国家総合職の場合、霞が関本省での勤務のほか、他府庁への出向や出先機関への異動、都道府県などへの出向も頻繁にあります。

省庁によっては2年ほどで異動するケースもありますが、これには将来どの職場でも、管理職として対応できるように経験を積むという意味があるのです。

また、本人の希望や適性を考慮したうえで、国内外の大学院などへ留学する機会もあります。国家総合職は幹部候補生としての期待から、大きな育成のチャンスを与えられるといえるでしょう。

仕事内容

国家総合職は行政の中枢である霞が関の各府省において、政策の企画立案や法案の作成、予算編成など、いずれも行政の根幹ともいえる重要な業務に携わります。

一方の国家一般職は、地方の出先機関や管区内の本局、あるいは事務局において、国家総合職が企画立案した政策を実際に運用していきます。そのため、勤務先によっては窓口業務を担当する場合もあります。

また、どんなに良い政策を企画立案しても、実際に運用してくれる人がいなければ、国や国民に貢献することはできません。国家総合職と国家一般職は、役割を分担しながら国の行政を担っているといえます。

昇進

昇進スピードについては、国家一般職よりも国家総合職のほうがかなり速いといえます。

例えば国家一般職の場合、最も出世する人でも本府省庁の課長級までで、地方支分部局で管理職になる人が多いといわれています。

しかし、国家総合職の場合は、40代半ばには県庁や大企業の課長級に相当する本府省庁の課長級まで昇進する人がほとんどです。

「大きな権限を持って人の役に立ちたい」「国家公務員として国に貢献したい」という希望があるのなら、国家総合職を目指すとよいでしょう。

国家総合職として働く魅力とやりがい

国家総合職として働く魅力とやりがいはどこにあるのか、近年注目されているワーク・ライフ・バランスや働く環境について解説します。

キャリア官僚として昇進の可能性が広がる

国家総合職は、将来管理職となってどの職場でも活躍できるように、府省内の職場を2年ほどの期間で異動を繰り返しながら経験を積んでいきます。

異動が多くて大変そうだと思うかもしれませんが、さまざまな経験を積むことでキャリア官僚として昇進する可能性が広がります。

国家総合職の役職は事務次官をトップとして、次のようになっています(省庁によって若干異なります)。

事務次官-外局長官-官房長-局長-部長-局次長-課長-課長補佐-室長-企画官・専門官-係長-主任

キャリア官僚と呼ばれる国家総合職と国家一般職では、同じ大卒であってもスタート地点が異なるだけではなく、昇格スピードも異なります。

経済的な安定と充実した福利厚生

国家公務員の労働時間は原則として1日あたり7時間45分、1週間あたり38時間45分と法律で定められています。

休日についても同様で、土曜日・日曜日および祝日等の休日は休みとなるほか、年20日の年次休暇(4月1日採用の場合、採用の年は15日)や病気休暇、特別休暇(夏季、結婚、出産、忌引、ボランティア等)があります。

また、住居手当・通勤手当、扶養手当、超過勤務手当(残業手当)などの各種手当が充実しており、育児休業制度・介護休業制度(ワーク・ライフ・バランス:仕事と家庭生活の両立支援制度)なども、利用しやすい環境にあります。

さらに独自の福利厚生施設として用意されている公務員宿舎やテニスコート、プールや食堂なども利用できる特権があります。

経済的な安定と充実した福利厚生は、国家総合職として働く人にとって大きな魅力であるといえるでしょう。

国や国民に貢献するスケールの大きな仕事ができる

国家総合職は政策の企画立案や法案の作成・予算編成など、行政の中枢を担う仕事に携わります。

そうした仕事の多くは国の未来を左右するため、国や国民に貢献できるスケールの大きな仕事ができることがやりがいにつながります。

また、自分の関わった仕事がテレビや新聞などで紹介されることもあるため、責任は重くなるものの大きな達成感を得られることにやりがいを感じることもあるようです。

国家総合職は転勤や出向により幅広い知識や経験を身につけることで、国や国民に貢献する仕事ができるのです。

国家総合職の平均年収はどれくらい?

国家総合職の基本的な仕事内容を理解したところで、気になる平均年収や給与についてご紹介します。

なお、国家総合職のみの正確な年収や平均年収は公表されていないため、人事院が公表しているデータなどから一例としてお伝えさせていただきます。

公務員の給与体系

民間企業の基本給に相当するのが俸給と呼ばれるもので、勤務期間やその間の評価をもとに俸給表によって決まります。

国家総合職の場合、院卒と大卒では俸給表のスタート地点が異なります。国家総合職と国家一般職を比較した場合も、同じ大卒でもスタート地点が異なるため、勤務年数が長くなるほどそれぞれの給与の差は開くことになります。

なお、この俸給に加えて支給される各種手当も充実しています。住居手当・地域手当・扶養手当・通勤手当・単身赴任手当などがあります。

また、民間企業のボーナスにあたる期末手当と勤勉手当は、民間企業の平均額に合わせて推移しています。

令和3年版「国家公務員の給与」によれば、国家公務員のボーナスは年間4.45ヵ月分で実施すると記載されています。情勢により変化する可能性があるので、目安として念頭に置いておきましょう。

月給をもとに計算するため、役職がついて月給が上がれば、ボーナスの額面も必然的に上がります。

国家総合職の初任給と平均年収

公表されているデータをもとに、本府省の行政職員として採用された国家総合職の初任給、およびモデル年収を紹介します。

大卒の場合:
俸給(行政職2級1号)186,700円+手当(下記参照)
本府省業務調整手当8,800円、地域手当37,340円を加算、合計232,840円

院卒の場合:
俸給(行政職2級11号)213,000円+手当(下記参照)
本府省業務調整手当8,800円、地域手当42,600円を加算、合計264,400円

人事院が公表しているモデル年収:

  • 35歳の本府省課長補佐でおおよそ730万円
  • 50歳の本府省課長ならおおよそ1,260万円

※残業代や扶養手当を加算すればさらに年収が増える。

国家公務員の場合はもともと給与の男女差がないことや、民間企業より育児休暇制度を取得しやすい環境が整っているため、出産後も働き続ける女性が多く、勤務年数も長くなります。

一方で、民間企業の場合は業種によっても平均年収は異なり、男女差が大きいのが特徴です。これは女性が結婚・妊娠・出産などをきっかけに一度離職するケースが多いため、男性よりも勤務年数が短くなることが理由として考えられます。

このような理由から、国家総合職の平均年収は民間企業より高くなると考えられます。

年収をアップさせるには

国家総合職の給与は院卒と大卒の違いでスタートから差が出るため、年収の差も大きくなります。大学院へ進学してから国家総合職を目指すのも、年収をアップさせる方法の一つといえるでしょう。

また、多くの府省では「八掛けルール」といって、優秀な人材を規定の約8割の年数で昇格させる場合があります。通常は採用から10年かかるポストへ8年程度で昇格できるため、採用後に仕事で成果を上げることも必要です。

成果を上げることは、勤務成績に応じて支給される勤勉手当にも影響すると考えられるため、積極的に仕事に携わりましょう。

国家総合職は転勤や出向などでさまざまな職場を経験するため、そのなかで成果を上げるには、円滑な人間関係を築いてスムーズに仕事ができる、高いコミュニケーション力も必要になります。

ほかには海外留学や海外での勤務を見据えて語学力を磨く、ITスキルが高いなど、自己投資をして特別なスキルを身につけるとよいでしょう。

国家総合職になるための方法

国家総合職になるには、国家公務員試験を受けて採用されなければいけません。ここでは試験方法や難易度、倍率や試験の流れについて紹介します。

試験方法

国家総合職試験には「院卒者」と「大卒程度」があります。またいずれにも専門分野に対応した「区分」があります。技術系の区分は採用時の職種と関連のある部署に配属されることが多く、研究に従事するケースもあります。

一次試験は4月下旬、二次試験を5月下旬~6月中旬に行ない、6月下旬頃に最終合格発表となり、官庁訪問は6月下旬以降となります。二次試験を受けられるのは一次試験に合格した者だけと決められており、二次試験に合格すると採用候補者名簿に成績順で名前が記載されます。

なお、国家公務員は、各省庁が必要とする人材を採用候補者名簿のなかから選び、面接をして最終的に採用を決定するとされています。

2021年度 国家総合職採用までの流れ

  1. 4/25
    第1次試験
  2. 5/7
    第1次試験合格発表
  3. 5/23
    第2次試験(筆記)
  4. 5/25~6/11
    第2次試験(人物)
  5. 6/21
    最終合格発表
  6. 6/23~
    官庁訪問
  7. 10/1
    採用内定
  8. 翌年4/1
    採用

(出典:人事院「国家公務員試験 採用情報NAVI」を元に作成)

難易度

国家公務員は安定した職業として人気が高いため、試験の難易度も高いことが予想されます。

国家総合職の場合「院卒者」と「大卒程度」「技術系試験」がありますが、ここでは国家総合職試験「大卒程度」について見ていきます。

※人事院「国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)実施状況」の数字をグラフ化

過去3年間の合格率は6.6%~8.1%となっており、国家総合職試験の難易度は高いといえるでしょう。

おすすめの勉強法と学習費用

国家総合職試験の合格を独学で目指すことも可能ですが、科目の種類が多く内容などもさまざまなので、限られた時間で効率的に勉強するためにはスクールや通信教育を利用するのが効果的です。

勉強方法

最初に、試験日までの日数を逆算して試験勉強のスケジュールを決めます。独学では甘えが出て予定通りに勉強が進まないこともあるため、スケジュールが決まっているスクールや通信教育を利用するのがおすすめです。

特に、国家総合職の試験では企画立案能力の検証に重点がおかれるなど、独学では対応しにくい面があります。

ほかにも、二次試験の政策論文試験に対応するには知識を詰め込むだけの勉強法では難しいこと、二次試験の人物試験(個別面接)の対策も必要になることなど、スクールや通信教育を利用したほうが良い理由は多数あります。

まずは、試験に関する最新情報や正しい情報を確認することが、最初の一歩といえるでしょう。

学習費用

国家総合職試験のために必要な学習費用として最も安いのは、市販の参考書で独学することです。

しかし、合格を目指すには複数のテキストを購入する必要があるため、実際には購入するテキストの冊数は多数にのぼります。

資格スクールに通う際の費用は平均すると約20~40万円といわれていますが、スクールやコースによって費用が異なります。

まずは通いやすい場所にあるスクールの資料を取り寄せて、カリキュラムや費用を確認するとよいでしょう。

金銭的にスクールへ通うのが難しい、あるいは1人で集中して勉強したいという場合は、通信教育の利用を検討してみましょう。

平均的な費用は約8~10万円ですが、どこの通信教育を利用するかによって内容や費用が異なるため、事前に資料を取り寄せてカリキュラムや費用を確認することをおすすめします。

まとめ

国家総合職は政策の企画立案や法案の作成・予算編成など、行政の中枢を担う仕事に携わるため、国や国民に貢献するスケールの大きな仕事にやりがいや達成感を得られます。

その一方で、幹部候補生としての期待から転勤や出向・異動が多くなりますが、昇格の可能性も広がります。

ただ、国家総合職の試験は年1回であり、2019年の大卒合格率が7.4%だったことを考えると、スケジュールに沿って受験準備をする必要があるため、効率よく勉強できるスクールを利用するのがおすすめです。

資格の大原が用意している国家総合職の合格を目指すコースには、以下に示す3つの特長があります。

  • 最新の試験傾向に対応したプロ講師の授業
  • 筆記試験と面接試験それぞれの対策を徹底指導
  • 親身な学習指導で最終合格まで徹底サポート

公務員採用試験で高い合格実績のある資格の大原が、国家総合職合格に向けてサポートします。国家総合職に興味を持った人は、一度大原のセミナーや説明会に参加してみてはいかがでしょうか。

【おすすめの学習プラン】

独学でも可能だが
スクール・通信教育の活用が有効

公務員試験は種類が多く、採用後の仕事内容や待遇、受験資格、試験内容などもさまざまです。そのため、まずは自分がどんな仕事に就きたいか、そのためにはどの試験を受験するべきかを知る必要があり、情報収集が重要になります。インターネットを利用したり友人や学校のキャリアセンターに相談したりするなどして、正確な情報を集めましょう。受験に関する書籍や雑誌を購入するときは、最新の正しい情報を得るために、新しいものを購入するようにしましょう。また、公務員試験の多くは1年に1度しか実施されないため、併願することで合格への可能性を広げるのがおすすめです。

勉強方法は、予備校や資格スクールの利用、通信教育、独学などがありますが、どの勉強法を選ぶとしても、1次試験対策は1年半ほどの準備期間を設けるといいでしょう。

国家総合職は行政の企画立案を行うこととなるため、試験では企画立案能力の検証に重点がおかれています。とくに、2次試験の政策論文試験では、企画立案能力や総合的な判断力、思考力などを多角的に判断されるため、単に知識を詰め込むだけの勉強法では突破は難しくなります。また、2次試験の人物試験は、人事院による個別面接が行われます。これは公務員試験の最大の難関ともいえ、公務員試験も人物重視採用となります。教養試験や専門試験だけに注力せず、こちらもしっかりと対策を練るようにしましょう。

【学費はどれくらいかかるの?】
独学-約2,000円(テキスト1冊分ごと:複数購入する必要あり)
資格スクール-約20~40万円(平均)
通信教育-約8~10万円(平均)

※試験合格までにかかる一般的な費用ケースを記載しておりますので、金額に関しては個人差が生じ、異なる場合がございます。ご了承ください。

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