【大原講師が解説!】
公認会計士試験合格に向けた過去問の活用方法

会計系最高峰の国家資格である公認会計士。医師や弁護士などと並ぶ社会的ステータスを得られる公認会計士試験の合格率は、わずか10%程度(願書提出者数に対する合格者の割合)です。

公認会計士試験の難しさは、なんといっても学習量の多さでしょう。

5つの必須科目(財務会計論・管理会計論・監査論・企業法・租税法)と選択科目(経営学・経済学・統計学・民法)のうち1科目を幅広く、そして深く理解する必要があります。

公認会計士試験の合格に向けて欠かせない準備の一つが、過去問の活用です。ここでは、過去問を活用するメリットと、具体的な過去問の活用方法をお伝えします。

瀧本講師の自己紹介

瀧本祐和(公認会計士)

公認会計士試験の受験指導歴は12年、日商簿記検定や税理士試験などを含めると資格試験の受験指導歴は15年を超えました。担当科目は公認会計士試験の最重要科目である財務会計論です。講義では受験生が苦手にしがちなところをわかりやすく教えることを心がけています。

過去問を活用するメリット:試験特有の「学習量の多さ」をカバーできる

過去問を活用するメリットは、端的にいうと次の3点です。

  • 各科目について、論点ごとの「どのレベルまで実力を上げればよいのか」という到達点がわかる
  • 重点的に克服すべき苦手分野を把握できる
  • 本試験の雰囲気・出題形式に慣れることができる

公認会計士試験は「科目数が多い」「一度の試験で複数科目の受験対策が必要」という特徴があり、学習しなければならない量の多さが「難関資格」といわれる大きな理由となっています。

テキストや問題集、演習(答案練習)に取り組むだけでもかなりの勉強時間を要するため、「過去問は不要」と切り捨てる受験生は多いです。

しかしながら、本試験問題を作成するのは、資格スクールの講師ではなく、試験委員です。問題文の言い回しや、出題傾向など、本試験の雰囲気に慣れないまま受験当日を迎えることには誰しもが不安を覚えることでしょう。

一日・一週間・一ヵ月で試験勉強に取り組める時間は人それぞれです。学習量が多い公認会計士試験では、すべての科目のすべての分野を実務レベルで深く理解することを目指すのは現実的ではありません。

限られた時間のなかで集中して、効率よく学習をすすめるために、「論点ごとに要求される力」や「重点的に克服すべき苦手分野」を過去問から肌感覚としてつかむことは重要です。

瀧本講師ならではのポイント

公認会計士試験の過去問を解く際に意識しておきたいことは,「本試験は満点を取らなければならない試験ではない」ということです。短答式試験であればおよそ60~70%の得点率が合格ラインです。論文式試験であれば、科目毎に異なりますが、換算前の素点でおよそ40~60%得点が合格ラインです。過去問のなかには「本番で解けなくても良い問題」が含まれていますので、その見極めが必要になります。

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解き始める前に過去問の「正しい使い方」を確認しておこう

ここまで読んで「よし、わかった!」と過去問を解き始めようとしている方がいらっしゃったら、少しお待ちください。

やみくもに過去問を解くだけでは、「本試験問題の雰囲気に慣れる」ことしかできません。それも過去問に取り組むメリットの一つではありますが、正しい着眼点をもって取り組まないと、得点の伸びにはつながりません。

過去問の正しい使い方とは、学習習熟度に合わせて段階的に使い方を変えることです。具体的には、一連のテキスト学習を終えたあとに過去問に取り組みます。この段階では、解ける・解けないはあまり問題ではありません。「最終的にこのレベルの問題が解けるようにならいといけない」というゴールを意識することが大切です。

次に取り組むべき段階では、問題集等の基礎的な演習を終えた後に過去問に取り組みます。この段階では、実際に本試験で通用する実力が備わっているのかを確認します。これにより、「重点的に克服すべき苦手分野」の把握につながります。

過去問に取り組んだ結果から、それぞれの科目でどの論点にあとどれくらいの勉強時間を割く必要があるのかの指標が見えてくるでしょう。取り組むべき学習の見通しがつくと、気持ちに余裕が生まれ、集中して勉強に取り組めるようになります。

公認会計士試験の合格に向けた勉強時間は、おおよそ3,500時間が目安といわれています。中だるみすることなく受験当日まで走り抜けるには、メリハリをつけた勉強が欠かせません。過去問を、その一つのツールとして活用してください。

瀧本講師ならではのポイント

学習の初期段階で過去問を目にすると、「こんなに難しい問題は解けるようになる気がしない」という不安を抱くかもしれません。これは、山登りを一度もしたことが無いのにいきなり富士山に挑むようなものですので、誰しもが不安になります。ただし、きちんとトレーニングを繰り返していけば必ず解けるようになりますのでご安心ください。

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【分野別】具体的な過去問活用方法

過去問を活用するメリットとして「本試験の雰囲気・出題形式に慣れることができる」とお伝えしました。
当然ながら、マークシート型の短答式試験と筆記型の論文式試験とでは、過去問の活用方法が変わってきます。それぞれの具体的な活用方法を見ていきましょう。

短答式は知識の定着のための反復が重要

短答式試験の合格率は、答案提出者数のわずか10%前後です。その理由の一つは、試験範囲が広いことが挙げられます。短答式試験では、この広い試験範囲から万遍無く出題されますので、すべての科目で苦手な頻出論点をつくらないことが重要です。
過去問を解いて、苦手な論点が確認できたら、その論点を真っ先に復習し、克服していきましょう。

論文式試験と比較すると、知識の定着ができているかどうかが試されるのが短答式試験です。知識の定着のためには反復が一番ですので、過去問を繰り返し解いていきましょう。

短答式試験では「1科目につき、その満点の40%を満たさず、かつ原則として答案提出者の下位から遡って33%の人数に当たる者と同一の得点比率に満たない者は、不合格」とされる場合がありますので、苦手科目を作らないようにすることが肝要です。

また、短答式試験は問題数が多く、時間の制約が厳しいのが特徴となります。特に管理会計論はその傾向が顕著です。本試験問題は手を付けずに敢えて飛ばすべき難度の高い問題が出題されますので、そうした「問題を診る目」を養うために過去問を活用しましょう。

全体を通した具体的なポイントは、次の3点です。

  • 各科目の難度(内容・時間制約)の傾向をつかむこと
  • 各科目の頻出の論点を把握すること
  • 出題形式(問われ方)に慣れること

科目別のポイントも、以下にまとめます。

企業法
覚えるべき事項を表にするなどの工夫をして頻出分野の暗記をする
管理会計論
計算問題は繰り返し解き、理論問題は原価計算分野は原価計算基準を計算と絡めて暗記し、管理会計分野は理解を重視する。また時間的制約に対する対策として、手を付けるべき問題と切り捨てる問題とを取捨選択する
監査論
頻出分野の暗記事項をただ暗記するのではなく、体系的に理解しながら定着を図る
財務会計論
計算問題を繰り返し解き、理論問題はできるだけ計算に絡めて理解する。また覚えるべきことをしっかり暗記する

論文式は理解に裏付けられたアウトプットが重要

論文式試験の合格率は、実際の受験者数の35%ほどで安定しています。論文式試験は換算得点(偏差値)をベースに合否判定される相対試験のためです(例年、換算得点比率52%が合格ライン)。そのため、周りの受験生が解いてくるであろう問題を自分も確実に正答することが重要です。そのための「問題を診る目」を過去問で鍛えていきましょう。

論文式試験では、公認会計士の業務遂行に必要な業務知識と応用能力(実践的な思考や判断力)を問う問題が多く出題されます。そのため、内容は短答式試験よりも総じて難しく、またマークシートではなく数値を答えたり、文章を記述する形式のため、素点ベースでの合格ラインは科目にもよりますが、およそ40~60%の得点とそれほど高くないという特徴があります。

したがって、過去問は反復学習に使うというよりは、問題の分析・出題傾向の把握・論点の理解が中心となります。

論文式問題の過去問活用のポイントは、次の3点です。

  • 各科目の頻出の論点を把握すること
  • 出題形式(問われ方)、特に事例形式の問題に慣れること
  • 模範解答を分析し、解答へのアプローチ、ロジカル・フローをつかむこと

短答式試験に比べて、論文式試験はどの科目も出題範囲は限定的です。頻出論点の絞り込みは難しくないでしょう。

また、出題形式から「業務知識(定義の理解など)を問われる問題」「応用能力(実務に即した具体例の提示など)を問われる問題」といったパターンを見極められるようになれば、どのような文脈の文章で答案を作成すべきか、即座に判断できるようになるはずです。

模範解答を分析すると、模範解答の文脈には、各科目・分野・出題形式でいくつかの傾向があることが見えてきます。頻出論点や苦手な論点の把握ができたら、問題集や演習で答案の精度を高めていくとよいでしょう。

瀧本講師ならではのポイント

論文式試験の模範解答は、文字通り「模範」的な解答例です。実際の受験生の書く答案は、合格者の方であっても模範解答ほどの精度の高い答案は作れませんので、模範解答が合格に必要な要求水準とは思わないようにしましょう。

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大原の教材は「過去問+α」で効率的な学習を目指す

過去問はあくまで、その名のとおり「過去に出題された試験問題」です。当然ながら、次の公認会計士試験で出題される問題ではありません。短答式試験では同じ問題が出題されることもありますが、それだけで合格点にはならないでしょう。

また、本試験問題の中には、非常に難解で手を付けるべきではない問題、復習にはそぐわない問題があります。こうした問題まで解けるようにする勉強は非常に効率が悪くなります。

今後の公認会計士試験でどのような問題が出題されるかを、受験生の立場で分析・推測し、そのためにどんな問題を繰り返し解いていくかを判断するのは容易ではないでしょう。ここは受験指導のプロ集団である受験予備校を最大限に活用することをおすすめします。

資格の大原では、公認会計士講座の教壇に立つプロフェッショナル講師陣がオリジナル教材を毎年開発しています。公認会計士に求められる普遍的な知識や思考力と、分析から見出した最新の本試験問題の出題傾向とを組み合わせた教材は、信頼の高い出題的中率を誇っています。

具体的なオリジナル教材として、次の3種類をご紹介しましょう。

COMPASS
(テキスト、問題集、解答・解説)
常勤講師陣が公認会計士試験に必要な知識を厳選し、最新の出題傾向を踏まえて演習問題を毎年アップデートしています。問題集の中には「解いておくべき過去問」が盛り込んであり、ご自身で取捨選択をする必要がありません。COMPASSと受験のプロである常勤講師が行なう講義で、質・量ともに適正なボリュームで知識の習得も演習も進めていけます。
短答合格ツール「肢別チェック」/
論文合格ツール「ポケットコンパス」
大原合格コース生に限定配布している「肢別チェック」は、短答式試験で必要とされる知識を網羅的に整理されており、正誤判断力を向上できます。必要な過去問も多く盛り込んであるので、やはりご自身で取捨選択をする必要がありません。論文対策の「ポケットコンパス」はポケットサイズ(B6版)の用語・定義集で、通学・通勤時間などのすきま時間の有効活用にぴったりです。
模試・答案演習
常勤講師が最新の出題傾向を分析して、毎年新作をご提供しています。答案演習の抜群の的中率は、大原の目玉の一つです。また、大原の模擬試験は全国最大規模で開催されるため、全国のライバルがいるなかで自分がどの位置にいるかが明確にわかります。

これらのオリジナル教材に加えて、以下の内容も、大原の公認会計士講座の特徴です。

  • 全国115名規模の常勤講師体制による受講生のバックアップ
  • 短答式試験・論文式試験の受験日に照準を合わせたカリキュラムと進度チェック

瀧本講師ならではのポイント

過去問は学習ツールとして有用ですが、使い方を誤るといたずらに不安をあおられたり、不効率な勉強へ誘導されることがあります。資格の大原 公認会計士講座では、段階ごとに必要な過去問に触れるためのカリキュラムと教材が準備されています。また、疑問点はすぐに講師に相談して解消することができます。

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まとめ

会計・監査のプロフェッショナルである公認会計士になるには、合格率わずか10%程度の難関試験を突破する必要があります。

公認会計士試験特有の「学習量の多さ」をカバーするにあたっては、過去問を活用しない手はありません。

本試験問題の雰囲気に慣れるだけでなく、どのレベルまで実力を上げる必要があるのかという到達点を把握するのに、また、苦手論点を認識するのに、過去問は最適なツールなのです。

短答式対策としては、知識の定着のために過去問を繰り返し解くとともに、各科目で分野ごとの苦手論点の把握に努めましょう。

論文式対策では、反復学習よりも、模範解答を分析し、解答へのアプローチ、ロジカルフローをつかむために過去問を活用することをおすすめします。

もちろん、過去問だけで試験対策はできません。また、過去問の中には復習用教材としてはそぐわない問題が多く存在します。大原の教材は「過去問+α」で効率的な学習を目指すものとして毎年アップデートしています。

集中力を維持しながら効率的に学習していくために、ぜひ大原の公認会計士コースをご活用ください

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瀧本講師のプロフィール

名前
瀧本祐和
担当科目
財務会計論
指導理念
短期合格していただくための効率的な学習を指導
紹介文
公認会計士試験は易しい試験ではありませんが、正しい努力を積み上げれば合格が勝ち取れる試験です。公認会計士に興味を持たれた方はぜひ資格の大原に足を運んでみてください。

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