【大原講師陣が解説】応用情報技術者試験の過去問を使った勉強法

応用情報技術者試験の対策において、過去問の活用は有効な学習方法の一つです。

過去問を使えば、本番さながらに問題を解くことで、模試(模擬試験)に近い練習もできるでしょう。しかし、過去問を有効活用するには、いくつかのコツも必要です。

この記事では、応用情報技術者試験の概要と特徴に触れたうえで、それらを踏まえた過去問の活用方法について詳しく説明していきます。試験対策の一環として、ぜひ参考にしてください。

【知見講師の自己紹介】

30年以上の講師歴を持ち、資格の大原では応用情報技術者の教材作成の主担当者です。模擬試験の作問や、講義映像の収録まで一通りを担当しています。

応用情報技術者試験の概要と特徴

30年以上の講師歴を持ち、資格の大原では応用情報技術者の教材作成の主担当者です。模擬試験の作問や、講義映像の収録まで一通りを担当しています。

試験概要

応用情報技術者試験は、IPA(情報処理推進機構)が実施する国家試験です。情報処理技術者試験の一つに区分され、基本情報技術者試験の上位に位置付けられています。応用情報技術者試験・基本情報技術者試験の2つは、問題の出題範囲として指定されている分野に違いはありません。

ただし、基本情報技術者試験が基本的な知識・技能を問うものであるのに対し、応用情報技術者試験ではより応用的な知識・技能が試されます。扱う分野が同じでも、より深い理解がなければ合格できない試験だといえるでしょう。

応用情報技術者試験は、出題形式の異なる午前と午後の試験に分かれています。どちらも100点満点で、合格基準点は60点です。合格するには、午前と午後の両方で基準点以上を獲得しなければなりません。

午前試験の特徴

午前の試験はマークシート方式で、四肢択一の文章問題が80問出題されます。試験時間は150分なので、単純に計算すると1問に対して2分もかけられません。

それぞれの問題文は午後の試験に比べれば長くはありませんが、素早く読んで解答を記入していく必要があります。「時間をかけさえすれば全問解答できる」という状態であれば、スピーディーに解き進める練習が必要です。

午後試験の特徴

午後の試験は記述式で、全11問の長文問題が出題されます。このうち最初の1問は、情報セキュリティに関する必須問題です。残りの10問はそれぞれ異なるテーマからの出題となっており、4問を選択して解答しなければなりません。

試験時間は、午前と同じ150分です。

午前の試験と比べると、午後の試験の問題文は長くて複雑な内容といえます。また、問題ごとに複数の設問があり、それぞれに解答が必要です。時間内に問題を解き終えるには、自分が得意なテーマの問題を素早く選び、解答する練習が必要でしょう。

なお、先にすべての問題文をじっくり読んで内容を把握しようとすると、時間切れになってしまう恐れがあるので注意してください。

【知見講師ならではのポイント】

以下は、IPAが公開している令和4年度春期試験の得点分布表です。

令和4年度春期試験

得点 午前試験 午後試験
90点~100点 54名 8名
80点~89点 1,047名 347名
70点~79点 5,100名 2,299名
60点~69点 9,267名 5,173名
50点~59点 8,191名 4,913名
40点~49点 5,605名 2,177名
30点~39点 2,460名 430名
20点~29点 449名 62名
10点~19点 14名 19名
0点~9点 2名 1名
合計 32,189名 15,429名

引用元:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構「応用情報技術者試験 得点分布」

午前試験で合格基準点以上を得点した方は約48%です。午前試験で合格点を取らないと午後試験は採点されないことから、午後試験の合計人数は午前試験の半数になっています。なお、分布表をもとに午後試験で合格基準点以上を得点した方は約50%になっています。つまり、午前試験で約半数の方が合格基準点を上回り、そのうち約半数の方が午後試験でも合格基準点を上回った結果、合格率が22%前後になる計算です。

応用情報技術者試験の過去問は入手できる?

応用情報技術者試験の過去問は、IPAのホームページで正式に公開されています。2009年(平成21年)以降の試験が、問題・解答例セットで公開されているため、試験問題を解く練習だけでなく、自己採点にも役立てられます。

情報処理技術者試験には、これまで3度の制度改定がありました。現在の応用情報技術者試験は、もともと第一種情報処理技術者試験と呼ばれていた試験がベースになっています。現行の試験制度が始まったのが2009年なので、それ以降の過去問をすべて自己学習に利用できるということです。

なお、基本情報技術者試験については、2020年(令和2年)以降の過去問が非公開となっています。応用情報技術者試験のほうがより高度なレベルではあるものの、最新の過去問を利用できるという面では勉強しやすいといえるでしょう。

過去問を使った効率的な勉強法とは?

応用情報技術者試験は、広い出題範囲における深い知識が試される試験です。合格できる実力があるかどうかを知るためには、本番を想定した練習が欠かせません。

そのために便利なのが過去問ですが、効率良く勉強を進めるにはコツも必要です。ここからは、応用情報技術者試験の勉強に過去問を活用するための、おすすめの方法について紹介します。

最新の過去問を優先的に解く

情報処理技術者試験の試験制度そのものは、頻繁に改定されるものではありません。しかし、試験内容については急速に進む情報技術に対応できるよう、最新の動向を踏まえたものとなっています。

試験要綱の改訂履歴を確認すれば、実際に出題範囲などの細かい部分がたびたび変更されている様子がわかるでしょう。例えば、2015年(平成27年)には午後の試験で解答が必要な問題数が変更され、2019年(令和元年)には、セキュリティが重点分野に指定されています。

このように年によって出題傾向が変わるため、過去問による勉強では「何年分解いたか」が重要とは限りません。試験対策としては、比較的新しい過去問を活用するほうが効率的です。

午後の試験については、解答例とともに出題の趣旨や講評も掲載されているので、最新のものから数年分は目を通しておくとよいでしょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構「情報処理技術者試験 情報処理安全確保支援士試験」

かかった時間を計測しておく

過去問は、試験本番のつもりで解いてみるのがおすすめです。あくまで自己学習のため、本番を想定するという意味では模試にはかないませんが、現時点でどの程度の点数をとれる実力があるのかを確認できます。

このとき大事なのが、かかった時間を計っておくことです。全問必須となる午前の試験については、最後の問題まで解くために必要なペース配分を把握できるでしょう。

午後の試験については、選択問題のなかから解きやすいものを素早く選んだり、時間のロスを避けながら出題内容を把握したりする練習になります。

解けなかった問題をチェックして復習する

過去問を解いたあとは、採点しただけで終わりにしないことも大切です。解けなかった問題は必ずチェックして、次に同じ問題に出会ったときには解けるようにしておきましょう。

もちろん、試験本番で過去問とまったく同じ問題が出るわけではありませんが、似たような問題が出題される可能性はあります。

なお、IPAが公開している過去問には、詳しい解説がついていません。より確実に知識を定着させるには、別途テキストや演習問題などを用意して、しっかりと理解しながら学習を進める必要があるでしょう。

また、午後の試験では、擬似言語によるアルゴリズムを問うような出題もあります。この擬似言語を本物のプログラミング言語に置き換えて、実際に動かしてみるというのも理解を深める方法の一つです。

【知見講師ならではのポイント】

午後試験はケーススタディによる出題です。各分野において、様々なバリエーションの問題を解くことでスキルが広がっていきます。そのためには、学習するための過去問題や教育材料を効率よく適切に集めることが重要ですが、自力で集めていくのは大変です。
対策講座を受講する場合は、過去問題の分析結果を基に精査された教育題材の提供を受けることができます。

大原講師陣が実際の過去問を解説!

ここでは社労士試験の実際の問題を大原講師陣が解説します。

令和元年度 秋期 応用情報技術者試験 午後 問9より

問題

複数拠点での開発プロジェクトに関する次の記述を読んで、設問1・ 2 に答えよ。

SI企業のS社は、住宅設備機器の販売を行うN社から、N社で現在稼働中の販売管理システム(以下、現行システムという)の機能を拡張する開発案件を受注した。現行システムは、S社の第一事業部が数年前に開発したものである。
今回の機能拡張では、新たにモバイル端末を利用可能にするとともに、需要予測、及び仕入管理における自動発注機能を追加開発する。自動発注機能は、現行システムの発注処理の考え方に基づき開発する必要がある。
東京に拠点がある第一事業部には、現行システムを開発した部門と、モバイル端末で稼働するアプリケーションソフトウェア(以下、モバイルアプリという)の開発に多数の実績をもつ部門がある。一方、大阪に拠点がある第二事業部には、需要予測などに関する数理工学の技術をもつ部門がある。
この開発案件に対応するプロジェクト(以下、本プロジェクトという)には、S社の各部門が保有する技術を統合した開発体制が必要なので、事業部横断のプロジェクトチームを編成することが決定した。プロジェクトマネージャには、第一事業部のT主任が任命された。
なお、本プロジェクトは1月に開始し、9月のシステム稼働開始が求められている。

開発対象システムと開発体制案〕
本プロジェクトの開発対象システムを図1に示す。本プロジェクトでは、在庫管理と売上管理の改修はない。

T主任は、本プロジェクトの開発体制を、全てS社の社員で構成される二つの開発チームで綱成する方針とした。モバイルアプリの開発、モバイルアプリ接続機能の開発及び自動発注機能を組み込むための仕入管理の機能拡張を、第一事業部の東京チームが担当する。また、需要予測と自動発注機能を、第二事業部の大阪チームが開発する。
T主任の方針を受けて、各事業部は、本プロジェクトに割当て可能な開発要員案を提示した。T主任は、提示された案でプロジェクトの遂行に支障がないかを検証するために、各要員の開発経験などを確認するためのヒアリングを行った。提示された開発要員案とT主任が行ったヒアリングの結果は、表1のとおリである。

〔プロジェクトマネジメントの方針〕
T主任は、開発要員案でプロジェクトの遂行に支障があれば、事業部間で必要な要員の異動を行う考えであった。
T主任は、ヒアリングの結果を踏まえて、①不足するスキルを補うため、本プロジェクトの開発要員案の範囲内で、最小限の要員異動をして適切な開発チームを編成することにした。その上で、両開発チームが作成する成果物に対する品質保証の活動を徹底することにした。そこで、T主任は、次のプロジェクトマネジメントの方針を策定した。

  • 両拠点からアクセス可能なファイルサーバを導入し、成果物を格納する。
  • 各開発作業の成果物の【 A 】が明確になるように、成果物のサンプルを提示し、記述の詳細度、レビュー実施要領などについて、プロジェクト全体で認識を合わせる。
  • モバイルアプリ開発ではプロトタイピングで、ソフトウェア要件を早期に確定する。ソフトウェア方式設計で作成した設計書に要件が反映されていることを確認するために、ソフトウェア詳細設計では、ソフトウェア結合のテスト設計に利用する【 B 】を作成する。
  • 両開発チームでソフトウェア要件定義の作業の進め方が異なるので、N社とのやリとリでは、ソフトウェア開発とその取引の明確化を可能とする【 C 】の用語を用い、開発作業の解釈について誤解が生じないようにする。

T主任は、このプロジェクトマネジメントの方針を上司に説明した。その際、上司から、“複数拠点での開発であることを考慮し、拠点間でコミュニケーションエラーが発生するリスクヘの対応を追加すること。”との指示を受けた。T主任は、上司の指示を受けて、次の開発方針及びプロジェクトマネジメントルールを作成して、本プロジェクトを開始した。

  • ②各機能モジュール間のインタフェースが疎結合となる設計とする。
  • 両開発チーム間の質問や回答は、文書や霞子メールで行い、認識相違を避ける。
  • ③東京チーム内の取組を、プロジェクト全体に適用する。
  • スケジュールとコストの進捗は、成果物の出来高を尺度とするEVM(Earned Value Management)で管理する。

~中略~

設問1

(プロジェクトマネジメントの方針〕について、(1)~(4)に答えよ。
(1)本文中の下線①について、どのように要員を異動させたか。40字以内で述べよ。

~中略~

解答

現行システムの開発経験者を東京チームから大阪チームへ異動させた。(32字)

解説

問題文より、大阪チームは需要予測と自動発注機能の開発を担当することが分かります。問題文冒頭に、「自動発注機能は、現行システムの発注処理の考え方に基づき開発する必要がある。」とありますが、表1のヒアリングの結果を確認すると、大阪チームには現行システムの開発にかかわった要員がいないことが分かります。東京チームのモバイルアプリ接続機能を担当する要員には、現行システムの開発経験者を、余裕をもたせて割り当てているため、この要員を大阪チームに異動させることが考えられます。

ポイント

この問題のように、“問題文に記載されている内容を読み取って解答する”問題も多く出題されています。特に、ストラテジ系やマネジメント系に多く見られる傾向です。テクノロジ系と比べてそれほど事前知識を必要としない反面、その場で状況を理解し、問題解決のための判断力や解答を制限文字数にまとめるためのスキルを必要とすることが多いです。
一般的に、文系の方がこのようなストラテジ系・マネジメント系の問題を選択する傾向にあります。

【知見講師ならではのポイント】

解答力を身につけるためには問題演習が必須です。特に午後試験は一部記述式になるため、問題文を理解し、自身の解答を指定された文字数以内にまとめるスキルも求められます。
大原では、過去の出題実績を分析し、主な出題パターンを広く網羅していくカリキュラムと教材をご用意しております。
「理解できる」だけではなく「解ける」スキルを身につけましょう。

応用情報技術者試験の対策をするなら大原

ここまで、応用情報技術者試験に向けた勉強に過去問を活用する方法について、説明してきました。しかし、試験対策を独学のみで進めていると、不安や限界を感じる部分も出てくるかもしれません。

そのような場合には、ぜひ大原の講座も検討してみてください。合格のためのノウハウが詰まったカリキュラムと、ニーズに合わせて選べるさまざまなコースで、応用情報技術者試験の合格をサポートします。

自分に合った受講スタイルが選べる「総合本コース」

応用情報技術者試験の「総合本コース」は、すでに基本情報技術者試験に合格している人や、受験経験がある人に適しています。

試験の出題範囲を網羅したテキストによる学習と演習ドリル、ミニテストを繰り返すことで、しっかりとした知識の定着を促す講座です。基本情報技術者試験では出題されないテーマに絞って、効率的に学習を進められます。

このような講座では、学習スタイルが自分に合っているかどうかが気になるという人も多いのではないでしょうか。大原では、ニーズに合わせて「Web通信」と「映像通学」の2つのスタイルを選べます。

Web通信は、インターネットに接続して講義映像を視聴できる学習スタイルです。映像通学では、校内の個別視聴ブースで講義映像を視聴できます。どちらも自分のペースに合わせてスケジュールを決められるので、無理なく受講しやすいでしょう。

もちろん、講義映像は繰り返し視聴することが可能です。また、いつでも講師に質問できるので、疑問点が出てきたときもすぐに解消しながら学習を進められます。

基本情報技術者試験の復習から始めるなら「基本情報復習つき」コース

「総合本コース」では、出題範囲をくまなく学べる「基本情報復習つき」も選択可能です。午前の試験に必要な基礎知識を押さえるための、全16回の講義からスタートして、応用情報技術者試験でのみ問われる内容へとステップアップしていきます。初学者や、基本情報技術者試験の復習から始めたいという人に適したコースです。

受験経験がある人にとっては、「基本情報復習つき」を選ぶかどうかは悩みどころかもしれません。目安として、基本情報技術者試験に合格してから2年以上のブランクがある人には、「基本情報復習つき」をおすすめします。

今でも基本情報技術者試験の午前の試験に合格できる自信があるという場合は、「総合本コース」のほうが効率的に学べるでしょう。

試験直前の総仕上げに最適な「模擬試験パック」

独学で応用情報技術者試験にチャレンジする人には、「模擬試験パック」をおすすめします。こちらは大原オリジナルの「直前模試」が2回分と、「公開模試」のセットです。入学金が不要なので、試験本番に挑む前の腕試しとしてぜひ活用してください。

直前模試は、これまでの学習の仕上げに最適です。解答後は解説中心の講義も受講できるので、弱点を補強して試験への自信をつけましょう。公開模試は、本番と同じ形式の問題による予行演習です。コンピュータによる実力判定と、成績表がついています。

なお、「総合本コース」および「基本情報復習つき」コースは、直前模試と公開模試が含まれた講座です。どちらを選んだ場合でも、「模擬試験パック」に別途申し込む必要はありません。

【知見講師ならではのポイント】

基本情報技術者試験の復習が必要な方は「基本情報復習つき」がおすすめです。基本情報技術者試験対策の教材と映像を使って応用情報技術者の学習に必要な内容を復習します。
基本情報技術者試験と応用情報技術者試験とでは、学習項目・出題範囲は同じなので、基本情報技術者の復習はとても大事です。
また、模擬試験が直前模試+公開模試で3回分あるのもポイントです。
本番前に時間を計測しながら初見の問題で実力を試したり、解く順番や時間配分の練習をしておきましょう

まとめ

高い実力を備えた人でも、準備なしで応用情報技術者試験に合格するのは簡単なことではありません。過去問を活用するなどして、出題形式に慣れておくことが大事です。

しかし、過去問を使った効率的な学習にはポイントがあります。また、独学のみで対策を進めていると、不安や限界を感じることもあるでしょう。

より確実に応用情報技術者試験の合格を目指すなら、ニーズに合わせてコースや学習スタイルを選べる大原の講座がおすすめです。

効率的な学習と弱点の克服により、試験合格をサポートする独自のカリキュラムとなっています。詳しい内容については、資料請求や説明会などでご確認ください。

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講師プロフィール

名前
知見光泰
担当科目
情報処理技術者試験全般
指導理念
高度な専門知識と分析力で、最短ルートで合格することをサポートします
紹介文
情報処理知識だけではなく、受験対策として問題を解くスキルが必要です。情報処理技術者試験の受験対策に30年以上にわたって携わり、合格するために必要なことは熟知しています。一緒に合格を目指して頑張りましょう。

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