基本情報技術者試験を受験するのに、特別な資格は必要ありません。ITエンジニアを目指す人にとって登竜門ともいえる試験です。具体的にはどれくらいの人が合格していて、難易度はどの程度なのでしょうか。そこで今回は、過去のデータからわかる基本情報技術者試験の合格率と、ITパスポートなどの他の試験と比較してどの点が難しいといえるのかについて説明します。合格することで得られるメリットや、勉強方法についても紹介するので参考にしてみてください。
20年以上の講師歴を持ち、資格の大原では基本情報技術者の教材作成の主担当者です。教材作成や、講義を担当しています。
基本情報技術者試験は、情報処理技術者試験の一区分として、IPA(情報処理推進機構)によって実施される国家試験です。この試験は、ITエンジニアを目指す人に向けて、IT分野の基礎知識とスキルを評価するもので、特に技術的な初級レベルの内容が中心です。
この試験は、IPAにより実施される国家試験「情報処理技術者試験」のなかの一区分として位置づけられています。IPAによると、本試験の対象者は「ITを活用したサービス、製品、システム及びソフトウェアを作る人材に必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身に付けた者」としています。これだけを読むと難しそうに感じるかもしれませんが、ITに関心のある学生から現職エンジニアまで、幅広い層が受験しています。年齢や国籍、実務経験に関する制限もないため、誰でも受験可能です。
基本情報技術者試験では、「テクノロジ系」「マネジメント系」「ストラテジ系」の3分野から幅広く出題されます。各分野の理解が求められ、基礎的なITスキルの習得を促します。
テクノロジ系では、コンピュータの基礎理論、アルゴリズム、データベース、セキュリティなどが取り上げられます。特にアルゴリズムやプログラミングに関する理解や、データ構造についての基礎知識が重要視されます。
マネジメント系は、プロジェクト管理や品質管理といったITプロジェクトの運営に必要な知識を問われます。基本的な計画策定や進捗管理の概念が出題されるため、管理職を目指す際にも役立つ内容です。
ストラテジ系では、経営戦略や企業法務に関する基礎知識が問われます。経営全体におけるITの役割や、法的な規制に関する問題が含まれ、業界理解を深める内容となっています。
基本情報技術者試験は、コンピュータによる受験形式(CBT方式)により随時実施されています。受験地と日時を選んで受験申込みをおこない、テストセンター内にあるPCを使って受験することになります。試験は科目Aと科目Bの2科目に分かれており、いずれも解答群が用意された選択問題です。
科目A験は、60問の四肢択一式問題が出題されます。IT基礎知識が幅広く問われ、幅広い分野に対して基礎知識が求められます。
科目B試験では主にプログラミングと情報セキュリティへの理解力が試されます。プログラミングの問題は主に、要件に見合うようにプログラム中の空欄を埋める出題パターンと、空欄のないプログラムに対して実行過程や結果を問うパターンがあります。また、情報セキュリティの問題は、問題文がシナリオ形式で出題され、そのシナリオに沿った設問が組まれるケーススタディのような出題形式で、多くの設問は基礎的な問題解決能力を問うものであり、読解能力と考察力が求められます。制限時間100分で出題数が20問ですから、単純計算すると1問当たり5分程度で解答していくことになります。
なお、一般的には本試験の受験日当日に科目A試験と科目B試験を続けて受験する必要がありますが、後述する科目A試験免除制度を利用すると、本試験当日は科目Bの受験のみになります。
科目A試験は学習分野が広く、計画的に学習をこなしていく必要があります。まずは全体を網羅するように学習していき、用語や考え方を覚えていきましょう。科目B試験は、暗記だけでは対応できません。科目A試験と科目B試験とで学習の仕方が異なりますので、それぞれに適した学習をしましょう。
次は、基本情報技術者試験の難易度について見ていきましょう。合格基準について確認したうえで、IPAが公開しているデータから、過去の試験における合格率などをチェックしていきます。
合格のためには、科目Aと科目Bの試験のいずれでも1,000点満点中600点以上を取得する必要があります。科目A試験は基礎的な問題が中心とはいえ、効率的に学習を進めなければ合格基準に達するのは簡単なことではありません。科目B試験は、出題分野こそ限定されているものの、1問約5分程度で効率よく回答していく必要があり、そこにはITスキルに加えて読解力も求められます。
IPAから公開されているデータによれば、基本情報技術者試験の合格率は、40%台で推移しています。特に2024年度上半期(4月~9月)は42.6%となっており、前年度合計の47.1%よりも下がっています。
基本情報技術者試験の合格率データ
実施年度 | 応募者数(人) | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) |
---|---|---|---|---|
2024年度(令和6年度)※ | 7万1,758 | 6万0,777 | 2万5,883 | 42.6 |
2023年度(令和5年度) | 14万0,774 | 12万1,611 | 5万7,278 | 47.1 |
出典IPA 情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計資料
※2024年度4月~9月の実績
なお、ここでの「合格率」は、実際に試験を受けた人に対する合格者の割合です。応募者全体で考えれば、合格率はさらに低いといえます。
IPAからは、合格者の年齢データも公開されています。これによると、基本情報技術者試験に合格者の平均年齢は25歳前後です(2024年度4月~9月の平均年齢は26.0歳)。
基本情報技術者試験の合格者の平均年齢データ
実施年 | 春期(歳) | 秋期(歳) |
---|---|---|
2023年(令和5年) | 25.9 | |
2022年(令和4年) | 25.9 | 25.3 |
2021年(令和3年) | 25.2 | 25.0 |
2020年(令和2年) | 未実施 | 24.4 |
2019年(平成31年・令和元年) | 25.2 | 24.8 |
2018年(平成30年) | 25.0 | 24.8 |
2017年(平成29年) | 25.1 | 24.7 |
なお、基本情報技術者試験の上位に位置する応用情報技術者試験については、合格者の平均年齢が29歳前後です。基本情報技術者試験に合格した人がキャリアを積んだ後、次のステップとして応用情報技術者試験にチャレンジしていると思われます。
以下は、IPAが公開している令和6年度9月分の得点分布表です。
令和6年度9月分
得点 | 科目A試験 | 科目B試験 |
---|---|---|
900点~1000点 | 4名 | 112名 |
850点~899点 | 30名 | 219名 |
800点~849点 | 151名 | 408名 |
750点~799点 | 562名 | 752名 |
700点~749点 | 1,298名 | 1,104名 |
650点~699点 | 2,100名 | 1,467名 |
600点~649点 | 2,375名 | 1,629名 |
550点~599点 | 1,626名 | 1,449名 |
500点~549点 | 1,110名 | 1,190名 |
450点~499点 | 666名 | 1,050名 |
400点~449点 | 420名 | 818名 |
350点~399点 | 182名 | 590名 |
300点~349点 | 57名 | 392名 |
0点~299点 | 17名 | 390名 |
合計 | 10,598名 | 11,570名 |
引用元:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構「応用情報技術者試験 得点分布」
科目A試験で合格基準点以上を得点した方は約60%です。一方、科目B試験で合格基準点以上を得点した方は約50%です。ともに合格基準点を上回り見事合格を勝ち得た方が全体の約40%です。
科目Aは全体的に中程度の得点に集まり、安定した傾向が見られるのに対し、科目Bでは高得点者と低得点者に偏る傾向が見られます。これは、科目Bの内容が特定の受験者にとって難易度が高く感じられたか、もしくは科目の特徴として得意・不得意が顕著に分かれた可能性を示唆します。
このように、科目Aと科目Bでは得点分布に差があり、試験の難易度や内容の適応性が異なっていることがわかります。
基本情報技術者試験の難易度は、「レベル2」に相当します。ここでいうレベルとは、高度IT人材に求められる役割や知識などをIPAが体系的にまとめた、「共通キャリア・スキルフレームワーク」のなかで規定されている分類です。知識・技能の深さを4つの段階で示すものであり、レベル2は下から2番目にあたります。
基本情報技術者試験の難易度を、その他の試験と比較してみましょう。
ITパスポート試験は、ITに関する基本的な知識を持ち、ビジネスにおけるIT活用を理解するための入門的な試験です。対象者はIT初心者や、ITを業務で利用する非エンジニア層も含めて、ITの基礎知識を学びたいと考える幅広い層を想定しています。試験範囲は「ストラテジ系」「マネジメント系」「テクノロジ系」にわたり、ITそのものの技術とともに、ビジネスやマネジメント、経営戦略におけるITの役割についての理解が問われます。そのため、ITエンジニアを目指すためというよりは、ITを理解して業務に役立てるための試験と言えます。 一方で、基本情報技術者試験は、ITエンジニアとしての基礎力を問う試験で、IT業界に関わる技術的な基礎知識や技能を評価する内容です。出題範囲は「テクノロジ系」「マネジメント系」「ストラテジ系」とITパスポートと同じですが、プログラミングやアルゴリズム、ネットワーク、データベースといったIT技術の基本スキルが中心となります。技術的な知識が多く含まれているため、特にエンジニア職を目指す人やIT分野に進むための基礎固めをしたい人にとっての入門試験です。
まとめると、ITパスポート試験はITの基礎知識を幅広くカバーし、特にITを業務で活用するための内容に重点を置いているのに対し、基本情報技術者試験はITの技術的な基礎力を問う試験で、エンジニアとしての知識とスキルが中心となっている点が大きな違いです。
基本情報技術者試験と情報セキュリティマネジメント試験は、どちらもIPA(情報処理推進機構)による国家試験ですが、対象者や試験内容には明確な違いがあります。
基本情報技術者試験は、ITエンジニアとしての基礎知識や技能を問う試験で、主にIT業界でのキャリアを考える初級エンジニアが対象です。試験範囲は「テクノロジ系」「マネジメント系」「ストラテジ系」の3分野にわたり、プログラミングやアルゴリズムの基礎、データベース、ネットワークといった広範な知識が問われます。そのため、ITに関する幅広い知識を習得し、体系的に理解しているかどうかが試されます。
一方、情報セキュリティマネジメント試験は、情報システムを利用するすべての職種の人が対象です。特に、情報セキュリティの重要性が高まる現代において、管理部門や利用部門の担当者がセキュリティの基礎知識を習得し、安全にITを活用するための試験です。範囲もセキュリティに特化しており、アクセス制御やリスク管理、個人情報保護に関する理解が問われる内容です。
情報セキュリティマネジメント試験は、情報システムの利用部門(非ITエンジニア)の方を対象にしているため、基本情報とはやや路線が異なります。基本情報技術者試験はITエンジニアを対象とし、幅広い技術的基礎をカバーしています。一方で、情報セキュリティマネジメント試験は、セキュリティに特化した知識を求められる点で異なる試験です。
基本情報技術者は国家試験であるにも関わらず、独占業務(試験に合格した人でなければできない仕事)がありません。
そのため、「受験しても意味がない」などといわれることもあるようです。それでも毎回多くの人が受験しているのは、合格を目指すメリットがあるからでしょう。
ここからは、基本情報技術者試験にチャレンジすることで得られるメリットを3つ紹介していきます。
基本情報技術者試験の合格は、技術的な基礎力を示す指標として、企業から評価されることがあります。特に、新卒者や若手エンジニアの採用選考においてアドバンテージとなるでしょう。
基本情報技術者試験へのチャレンジは、エンジニアとしてのスキルアップにもつながります。
高度IT人材として備えるべき能力を、幅広く総合的に評価できるのが基本情報技術者試験です。その対象となる知識や技能については、シラバスとして体系的にまとめられています。
たとえ一発合格できなかったとしても、合格を目指して勉強すること自体が、エンジニアとしてスキルアップしていくための刺激となるでしょう。
また、基本情報技術者試験のシラバスは、現時点での知識・技能の水準を自己評価する目的にも利用できます。IT業界で活躍を続けられる人材となるためにも、特定の技術に偏ることなく、シラバスが示す幅広い知識を身につけることが大事です。
ITに関わる横断的な知識を習得できるのは大きなメリットです。また、プログラミングに関する理解はエンジニアとして活躍していくうえでも大事なスキルと言えます。経済産業省が認めるエンジニアとしての「基本」を、この試験の学習を通じて身につけておくことはとても有効だと思います。
基本情報技術者試験の合格を目指すには、どのように試験対策を進めるのがよいのでしょうか。ここからは、試験に向けた勉強法を大きく2つに分けて紹介します。
1つ目は、書籍や過去問などから独学で試験対策を進める方法です。自分のペースでコツコツと勉強したい人に向いています。
ただし、広い出題範囲をカバーできるよう網羅的に学習を進めるには計画性が必要です。また、科目B試験は得意・不得意によって学習進度に影響が表れやすい試験なので、得意な方は自分でサクサク進めることができますが、そうでない方は学習進度が著しく停滞する可能性もあります。
これら2科目の試験対策を同時並行的に進めるための継続力が合格のカギとなりそうです。
2つ目は、資格講座を利用して通学や通信で試験対策する方法です。
基本情報技術者試験の合格を目指す人のためのコースを選べば、出題範囲を網羅した教材に沿って計画的に勉強を進められます。スケジュールの自己管理が苦手な人や、短期間で知識を身につけたい人に向いているでしょう。
特に、「科目A試験免除制度」が利用できるもの大きなメリットの一つです。
また、比較的挫折が少ないのも資格講座の特徴です。わからないところを講師に質問できるので、モチベーションを維持しやすいでしょう。
科目A試験はとても幅広い分野について暗記を中心として学習する科目で、計画性やモチベーションの維持が重要となります。
また、科目B試験は「わからないこと」があった場合に、その「わからないこと」が人それぞれ異なるケースが多いため、どのように解決するかがポイントです。
科目ごとに求められるスキルや知識が異なる情報技術者試験に合格することを目指すなら、大原の資格講座がおすすめです。ニーズに合わせて選べるコースと学習スタイルで、無理のない合格をサポートします。
対象コースを受講し、修了試験の合格など認定要件を満たすことで本試験当日の科目A試験が免除される制度です。科目A試験(旧午前試験)免除制度を使うとこんなメリットがあります。
免除になるための条件など、詳細はこちらをご覧ください。
大原には、対象とする皆様のご希望に合わせて科目A免除制度が利用できるコースを3つご用意しております。科目B対策もセットになった「合格コース(科目A免除制度対象)」には、教室通学と映像通学とWeb通信の3つの学習スタイルがあります。ライフスタイルに合わせて選べるので、無理なく学習を続けやすいでしょう。
大きく2つの学習スタイルがあります。
ご自宅等に学習環境がない方は通学講座がオススメです。教室通学講座は、教室で実施する講義に通っていただくスタイルです。予め定められた講義実施スケジュールに沿って学習をしていくため、学習ペースを守りやすく、また講義の前後に講師に直接ご質問いただくことができます。映像通学講座は、大原の校舎内にある映像視聴ブースで講義動画を視聴いただくスタイルです。事前にお席をご予約いただき、当日はスムーズに利用することができます。対象校であればどこの大原校舎でも利用可能です。
Web通信は、インターネットに接続して学習するスタイルです。講義映像は24時間好きな時間に視聴できるオンデマンド配信で、事前にデータを保存する手間はかかりません。スマートフォンやタブレット端末にも対応しているので、いつでもどこでも学習を進めることが可能です。
受講生の疑問や不明な点などの質問に講師が対応します。無料・回数制限なし(一部のコースを除く)・追加料金不要なので、気軽に質問でき、安心して学習をすることができます。通学講座受講生は授業の前後や電話で、通信講座受講生は電話や質問フォームによる質問対応になります。
受講生の皆様が安心して学習できるよう万全のフォロー制度でサポートします。
質問方法
質問サービスに関するご注意事項
初学者の皆様には講義動画が付いているコースがオススメです。スライドを使って進行していく動画で視覚的に理解しやすいよう努めています。
また、私たちはご質問対応サービスに力を入れています。特に科目B試験のプログラミングの問題は、皆様によって疑問に思うことがマチマチだったりします。インターネットで調べても自分が抱いている疑問にぴったり合う解説が見つかるとは限りません。
さらに、文字ベースで質問/回答のやり取りをするのが難しい分野や問題があります。そんなときにZoomを活用したご質問対応はとても便利です。Zoomなら画面共有したり、講師がその場で書き込みながら説明できたりするので、その方の疑問にぴったり合うご対応が効率よくできます。ぜひご利用いただきたいです。
基本情報技術者試験は、ITエンジニアを目指す方にとって基礎的な知識とスキルを確認する重要な登竜門です。試験の出題範囲は幅広く、「テクノロジ系」「マネジメント系」「ストラテジ系」の3分野に分かれており、科目A試験と科目B試験の2段階で評価が行われます。合格基準は高く、特に科目BではITの実践的な知識が求められるため、計画的で効果的な学習が不可欠です。また、試験合格を通じて得られるITスキルは、就職やキャリアアップにも有利に働くでしょう。
独学ではカバーしきれない部分や学習のポイントを効率的に押さえたい方は、ぜひ講座の活用をご検討ください。豊富な教材や講師のサポートを活用することで、基礎力を着実に身につけ、試験対策を万全にして試験本番に臨みましょう。資格の大原では、各試験内容に対応した講座を通じて皆様の学習を支援していますので、試験合格を目指す方はぜひご利用ください。
大原の講師が徹底解説!
資格の講座以外の学習スタイル
大原学園グループでは、この他にも資格を取得できる学習スタイルをご用意しています。