応用情報技術者試験を受験するのに、特別な資格は必要ありません。その一方で、合格を目指す人からは「難しすぎる」という声も聞かれます。しかし、具体的にはどれくらいの人が合格していて、難易度はどの程度なのでしょうか。
そこで今回は、過去のデータからわかる応用情報技術者試験の合格率と、他の試験と比較してどの点が難しいといえるのかについて説明します。
合格することで得られるメリットや、勉強方法についても紹介するので参考にしてみてください。
30年以上の講師歴を持ち、資格の大原では応用情報技術者の教材作成の主担当者です。模擬試験の作問や、講義映像の収録まで一通りを担当しています。
応用情報技術者試験は、IPA(情報処理推進機構)により実施される国家試験「情報処理技術者試験」のなかの一区分として位置づけられています。
IPAによると、本試験の対象者は「高度IT人材となるために必要な応用的知識・技能を持ち、高度IT人材としての方向性を確立した者」です。
これだけを読むと難しそうに感じるかもしれませんが、受験に際して年齢や経験、国籍などによる制限はありません。実際は誰でも合格を目指せる試験であり、IT技術者はもちろん、他の職種や学生も含めて多くの人がチャレンジしています。
本試験は、「テクノロジ系」と「マネジメント系」、「ストラテジ系」の3つの分野から出題されるのが特徴です。
ITに限らず、幅広い知識が求められる試験だということがわかるでしょう。コンピュータの基礎理論のほか、データベースやセキュリティなどの技術要素、システム開発技術に関する出題はすべてテクノロジ系に含まれます。
マネジメント系はプロジェクトマネジメントやシステム監査など、ストラテジ系は経営戦略や法務などを含む分野です。
応用情報技術者試験は春期(4月)と秋期(10月)の年2回、所定の会場にて一斉に実施されるペーパー方式の試験です。試験は、それぞれ150分ずつの「午前」と「午後」に分かれています。
午前の試験の出題形式は、マークシートによる四肢択一式です。全部で80問が出題され、試験時間内にすべての解答を記入しなければなりません。
午後の試験は記述式で、全11問のなかから5問に解答する必要があります。このうち1問目は必須です。残りについては、10問から4つを任意で選択して解答します。
午前試験は学習分野が広く、計画的に学習をこなしていく必要があります。まずは全体を網羅するように学習していき、用語や考え方を覚えていきましょう。午後試験は応用力が問われるため、暗記だけでは対応できません。午前試験と午後試験とで学習の仕方が異なりますので、それぞれに適した学習をしましょう。
次は、応用情報技術者試験の難易度について見ていきましょう。合格基準について確認したうえで、IPAが公開しているデータから、過去の試験における合格率などをチェックしていきます。
応用情報技術者試験は、午前と午後の試験に100点ずつが配点されています。合格に必要な基準点は、午前・午後とも60点です。もしも午前の試験で基準点を下回ってしまった場合は、午後の試験については採点されません。つまり、合格するには午前と午後の両方で基準点を満たす必要があります。
午前の試験の配点は、1問あたり1.25点です(1.25点×80問=100点満点)。60点以上とするには、少なくとも48問に正解しなければなりません。
午後の試験については、1問あたり20点です(20点×5問=100点満点)。それぞれの問題には複数の設問があるため単純にはいえませんが、少なくとも3問に正しく解答できなければ合格は難しいと考えてよいでしょう。
IPAから公開されているデータによれば、応用情報技術者試験の合格率は、おおむね22%前後で推移しています。これは、受験者の5人に1人程度しか合格できない計算です。決して簡単に合格できる試験ではないことがわかるでしょう。
応用情報技術者試験の合格率データ(春期・秋期合計)
実施年度 | 応募者数(人) | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) |
---|---|---|---|---|
2023年度(令和5年度) | 10万5,571 | 7万0,103 | 1万7,558 | 25.0 |
2022年度(令和4年度) | 10万3,844 | 6万8,518 | 1万7,343 | 25.3 |
2021年度(令和3年度) | 8万9,685 | 5万9,698 | 1万4,006 | 23.5 |
2020年度(令和2年度) | 4万2,393 | 2万9,024 | 6,807 | 23.5 |
2019年度(令和元年度) | 9万9,244 | 6万3,555 | 1万4,160 | 22.3 |
2018年度(平成30年度) | 10万1,442 | 6万4,367 | 1万4,865 | 23.1 |
2017年度(平成29年度) | 10万302 | 6万5,036 | 1万3,659 | 21.0 |
なお、ここでの「合格率」は、実際に試験を受けた人に対する合格者の割合です。応用情報技術者試験では、応募した人の3割以上が実際には試験を受けていません。応募者全体で考えれば、合格率はさらに低いといえます。
IPAからは、受験者の年齢データも公開されています。これによると、応用情報技術者試験に合格する人の平均年齢は29歳前後です。ある程度の業務経験を積んだ人が、試験に合格していると考えられるでしょう。
応用情報技術者試験の合格者の平均年齢データ
実施年 | 春期(歳) | 秋期(歳) |
---|---|---|
2023年(令和5年) | 29.4 | 28.4 |
2022年(令和4年) | 28.9 | 28.1 |
2021年(令和3年) | 28.9 | 29.0 |
2020年(令和2年) | 未実施 | 28.5 |
2019年(平成31年・令和元年) | 28.2 | 29.0 |
2018年(平成30年) | 29.3 | 29.2 |
2017年(平成29年) | 29.4 | 28.7 |
なお、基本情報技術者試験については、合格者の平均年齢は25歳前後です。基本情報技術者試験に合格した人が、次のステップとして応用情報技術者試験にチャレンジしていると思われます。
以下は、IPAが公開している令和4年度春期試験の得点分布表です。
令和4年度春期試験
得点 | 午前試験 | 午後試験 |
---|---|---|
90点~100点 | 54名 | 8名 |
80点~89点 | 1,047名 | 347名 |
70点~79点 | 5,100名 | 2,299名 |
60点~69点 | 9,267名 | 5,173名 |
50点~59点 | 8,191名 | 4,913名 |
40点~49点 | 5,605名 | 2,177名 |
30点~39点 | 2,460名 | 430名 |
20点~29点 | 449名 | 62名 |
10点~19点 | 14名 | 19名 |
0点~9点 | 2名 | 1名 |
合計 | 32,189名 | 15,429名 |
引用元:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構「応用情報技術者試験 得点分布」
午前試験で合格基準点以上を得点した方は約48%です。午前試験で合格点を取らないと午後試験は採点されないことから、午後試験の合計人数は午前試験の半数になっています。なお、分布表をもとに午後試験で合格基準点以上を得点した方は約50%になっています。つまり、午前試験で約半数の方が合格基準点を上回り、そのうち約半数の方が午後試験でも合格基準点を上回った結果、合格率が22%前後になる計算です。
応用情報技術者試験の難易度は、「レベル3」に相当します。
ここでいうレベルとは、高度IT人材に求められる役割や知識などをIPAが体系的にまとめた、「共通キャリア・スキルフレームワーク」のなかで規定されている分類です。知識・技能の深さを4つの段階で示すものであり、レベル3は上から2番目にあたります。
応用情報技術者試験の難易度を、その他の試験と比較してみましょう。
基本情報技術者試験は、難易度としては「レベル2」に該当します。応用情報技術者試験と比べると、1つ下のレベルです。
「テクノロジ系」「マネジメント系」および「ストラテジ系」の3つの分野から出題される点はどちらの試験も同じですが、応用情報技術者試験ではより深い知識を求められることがわかるでしょう。
また、基本情報技術者試験の出題形式は、すべて多肢選択式です。午後の試験で記述式の問題が出る応用情報技術者試験のほうが、より確実な知識を試される内容だといえます。
情報セキュリティマネジメント試験の難易度は「レベル2」です。難易度だけではなく、多肢選択式の出題のみである点も基本情報技術者試験と同じで、記述式の問題は出されません。
より上位のレベルにあたり、記述式の出題もある応用情報技術者試験のほうが、難易度が高いことがわかるでしょう。
また、情報セキュリティマネジメント試験は「ITを利活用する者」を対象としており、出題される分野も限られています。「高度IT人材」をおもな対象者とし、出題範囲も広い応用情報技術者試験と比較すると、難易度だけでなく内容も異なる試験だと考えてよいでしょう。
なお、応用情報技術者試験において、セキュリティはテクノロジ系の「重点分野」に位置づけられています。午後の試験で解答が必須とされている1問目は、情報セキュリティに関する出題です。
情報セキュリティマネジメント試験は、情報システムの利用部門(非ITエンジニア)の方を対象にしているため、応用情報とはやや路線が異なります。一方、基本情報技術者試験は、名称からも容易に推測できるように同じ路線に位置していますが、対象とする立場が少々異なります。
基本情報技術者は、上司や先輩、プロジェクトリーダなどの上位者の指導の下に業務を行なう方を対象としているのに対し、応用情報技術者はITを使って課題解決の戦略を立てたり、既存のITサービスや製品を組み合わせてサービスを実現する役割を担う方を対象としています。
応用情報技術者は国家試験であるにも関わらず、独占業務(試験に合格した人でなければできない仕事)がありません。
そのため、「受験しても意味がない」などといわれることもあるようです。それでも毎回多くの人が受験しているのは、合格を目指すメリットがあるからでしょう。
ここからは、応用情報技術者試験にチャレンジすることで得られるメリットを3つ紹介していきます。
転職や就職の際には、応用情報技術者試験が有利に働く場面があります。
応用情報技術者試験の試験問題は、各種教育機関やIT業界の第一線で活躍する専門家が、情報技術の急速な発展に合わせて作成している質の高いものです。合格すれば、技術者として水準以上の知識・技能を備え、実務でも通用するだけの力があることを国に認定されたといえます。
また、基本情報技術者試験と比べても、実力がより高いレベルに到達していると客観的に示すことが可能です。応用情報技術者試験への合格は、エンジニアとしての転職や就職を希望する人にとって大きなアピールポイントとなるでしょう。
応用情報技術者試験へのチャレンジは、エンジニアとしてのスキルアップにもつながります。
高度IT人材として備えるべき能力を、幅広く総合的に評価できるのが応用情報技術者試験です。その対象となる知識や技能については、シラバスとして体系的にまとめられています。
たとえ一発合格できなかったとしても、合格を目指して勉強すること自体が、エンジニアとしてスキルアップしていくための刺激となるでしょう。
また、応用情報技術者試験のシラバスは、現時点での知識・技能の水準を自己評価する目的にも利用できます。IT業界で活躍を続けられる人材となるためにも、特定の技術に偏ることなく、シラバスが示す幅広い知識を身につけることが大事です。
応用情報技術者試験の次は、さらに上位の「レベル4」にあたる試験にも挑戦したいと考えている人は少なくないでしょう。その際には、試験の一部免除制度を利用できます。
応用情報技術者試験に合格してから2年間は、上位の試験に申し込む際に「午前Ⅰ試験」の免除申請が可能です。
免除されれば、試験対策の学習コストを減らせます。ITストラテジスト試験やプロジェクトマネージャ試験などの高度試験や、情報処理安全確保支援士試験にチャレンジする予定がある人は、制度の利用を検討してみてください。
また、情報処理技術者試験以外にも、受験科目が一部免除される国家試験があります。応用情報技術者試験の合格者が、免除を申請できる試験と科目は以下のとおりです。
ケーススタディによる出題を通じて、課題を発見して解決したり、そのような業務をマネジメントするスキルが身につきます。中小企業診断士試験の科目免除に認定されているのも納得ですね。
応用情報技術者試験の合格を目指すには、どのように試験対策を進めるのがよいのでしょうか。ここからは、試験に向けた勉強法を大きく2つに分けて紹介します。
1つ目は、書籍や過去問などから独学で試験対策を進める方法です。自分のペースでコツコツと勉強したい人に向いています。
ただし、広い出題範囲をカバーできるよう網羅的に学習を進めるには、計画性が必要です。応用情報技術者試験は年に2回しか実施されないため、試験のタイミングに間に合うように学習ペースを自分で調整しなければなりません。
情報処理技術者試験に初めてチャレンジする場合や、基本情報技術者試験の合格からブランクがあるという人は、基本情報技術者試験の勉強から始めるのもよいでしょう。
2つ目は、資格講座を利用して通学や通信で試験対策する方法です。
応用情報技術者試験の合格を目指す人のためのコースを選べば、出題範囲を網羅した教材に沿って計画的に勉強を進められます。スケジュールの自己管理が苦手な人や、短期間で知識を身につけたい人に向いているでしょう。
また、比較的挫折が少ないのも資格講座の特徴です。わからないところを講師に質問できるので、モチベーションを維持しやすいでしょう。
模試の添削がある講座では、自分の実力を把握したうえで、弱点を効率良く克服していくための対策も可能です。
午後試験はケーススタディによる出題です。各分野において、様々なバリエーションの問題を解くことでスキルが広がっていきます。そのためには、学習するための過去問題や教育材料を効率良く適切に集めることが重要です。対策講座を受講する場合は、過去問題の分析結果をもとに精査された教育題材の提供を受けることができます。
難易度の高い応用情報技術者試験に合格することを目指すなら、大原の資格講座がおすすめです。ニーズに合わせて選べるコースと学習スタイルで、無理のない合格をサポートします。
大原の講座では、応用情報技術者試験を受験する予定の年度・月からコースを選べます。年に2回しかない試験日に合わせて、計画的に勉強を進めることが可能です。
途中入学にも対応しているので、開講時期を過ぎてしまっても問題ありません。入学前の講義内容は音声や映像でフォローできるので、始めたいと思ったときにスタートしてください。
合格のためのカリキュラムは、大原オリジナルです。インプットとアウトプットを適切に繰り返すことで、必要な知識が定着していきます。永年の教育ノウハウと独自のデータベースに支えられた、「最小の努力で最⼤の効果」を発揮するための構成です。
応用情報技術者試験では、記述式となる午後の試験にどのように対策するかもポイントでしょう。10問の選択問題から解けるものを素早く選び、適切なキーワードを用いて解答できるようになる必要があるためです。
大原の講座なら、自分の適性に合った分野を見極めるとともに、問題文の読み方やキーワードの見つけ方のコツも学べます。さらに「直前模試」による講義の総復習と、本番直前の「公開模試」で最終確認をして試験本番に備えましょう。
応用情報技術者試験の対策ができる大原の「合格コース」には、映像通学とWeb通信の2つの学習スタイルがあります。ライフスタイルに合わせて選べるので、無理なく学習を続けやすいでしょう。
映像通学は、校内の個別視聴ブースで講義映像を視聴するスタイルです。スケジュールは予約できるので、自分のペースで集中して学習を進められます。
Web通信は、インターネットに接続して学習するスタイルです。講義映像は24時間好きな時間に視聴できるストリーミング配信で、事前にデータを保存する手間はかかりません。スマートフォンやタブレット端末にも対応しているので、いつでもどこでも学習を進めることが可能です。
初めて情報処理技術者試験にチャレンジする場合や、基本情報技術者試験に合格してから時間が経ってしまったという人には、「基本情報復習つき合格コース」がおすすめです。
応用情報技術者試験の午前の試験は、問題のレベルには差があるものの、出題範囲も出題形式も基本情報技術者試験と変わりません。
このコースでは、午前の試験対策を基本からしっかり行なったうえで、応用レベルの学習へとステップアップしていきます。早い段階で基礎固めと弱点の克服ができるため、着実に合格へと近づけるでしょう。
解答力を身につけるためには問題演習が必須です。特に午後試験は一部記述式になるため、問題文を理解し、自身の解答を指定された文字数以内にまとめるスキルも求められます。
大原では、過去の出題実績を分析し、おもな出題パターンを広く網羅していくカリキュラムと教材をご用意しております。
「理解できる」だけではなく「解ける」スキルを身につけましょう。
応用情報技術者試験は、情報処理技術者試験のなかでも上から2番目のレベルにあたる難易度の高い試験です。合格を目指せば、エンジニアとしてのスキルアップはもちろん、転職や就職の際にもメリットが期待できます。
しかし、モチベーションを維持しながら独学で試験対策を進めるのは、決して簡単なことではありません。資格講座を活用して、計画的に学習を進めてみてはいかがでしょうか。
大原の資格講座なら、記述式となる午後の試験も含め、応用情報技術者試験に向けた効率的な対策が可能です。また、コースや学習スタイルもニーズに合わせて選べます。詳しくは、資料請求や説明会などでご確認ください。
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