大原学園で社会福祉士講座を担当しています川村です。皆さんは福祉の相談援助職という仕事を知っていますか?
「福祉」と一言で言ってもいろいろな分野があり、携わっている職種や機関もたくさんあります。その中の一つに相談援助職があり、社会福祉士と言う国家資格は相談職の専門職としての証でもあります。
この記事では、社会福祉士の具体的な業務内容や受験資格、効率的に国家試験合格を目指すための勉強方法などを解説します。資格取得を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
川村 和佳
大学にて社会福祉学を学び、一般企業勤めを経験。その後、社会福祉士として都内の高齢者福祉施設、一般病院、リハビリテーション病院の相談員として11年勤務。相談職として対人援助を行ないながら後輩へのスーパーバイザーとして指導担当した経験を持つ。
社会福祉士として業務を行なうには、専門知識や技術を証明するための国家資格が必要です。
ここでは、社会福祉士という国家資格の概要や、業務内容などについて解説します。試験を受ける際や実践に活かせるよう、担っている役割について理解を深めておきましょう。
社会福祉士とは、1987年「社会福祉士及び介護福祉士法」の制定と同時に誕生した相談援助業務の国家資格です。
国家資格には、業務独占資格・名称独占資格等がありますが、社会福祉士は「名称独占資格」に該当し、資格試験に合格し登録していなければ社会福祉士を名乗れず、紛らわしい名称の使用も禁止されているのが特徴です。
資格を持っていなくても業務は行なえますが、資格を保有していることで専門的な知識や技術の証明につながります。
相談者のみならず、転職する際には採用側からの信頼も得られることから、活躍の場が広がる可能性が高まるでしょう。
また、将来的なキャリアアップにおいても、資格を取得しているほうが多くの機会を得ることができます。
社会福祉士のおもな業務の一つは、生活困窮者や高齢者、児童、障害などのさまざまな福祉問題に関する相談業務です。
相談業務では、利用者が抱えている問題を分析し、利用者それぞれの状況に適した支援内容の検討、援助計画の立案などを行ないます。
また、支援を受けやすい環境を整えるため、各種手続きのサポートやサービス内容を記録するなど、総合的な調整を行なわなければなりません。
他にも、関係先との連携により、サービスの見直しや調整を行なうことで、常に利用者の状況に応じた支援を実現します。
介護施設においては、掃除や入浴など、介護業務を兼任する場面も珍しくありません。
このように、社会福祉士としての仕事は多岐にわたり、福祉支援のプロフェッショナルとしてさまざまな場面に貢献していると言えるでしょう。
社会福祉士は、福祉や介護、医療に関連する施設で業務に携わります。勤務場所によって、サポート内容や職種にも違いがあることを覚えておきましょう。
例えば、高齢者福祉施設では生活相談員、障害者支援施設では生活支援員や就労支援員として配置されます。
高齢者福祉施設や障害者支援を行なう施設、医療機関などでは、支援を受ける側と医師・看護師や介護職など多職種との連携が重要です。
また、児童福祉施設や学校などの業務では、非行や虐待への対応も行なうこともあるでしょう。
刑務所では、受刑者の人権擁護に必要なサポート、服役中の安全確保および出所後に受けられる支援の手続きなどを担当します。
児童福祉施設・刑務所・学校・医療機関など、さまざまな施設で活躍する場面があることから、福祉分野に欠かせない存在といえます。
相談職は介護職や看護職とは異なり、少し業務のイメージが湧きにくい職種かもしれませんね。私の体験からお話しますと相談職は、人と人、人と環境、人と制度などさまざまなことを共に「調整」や「連携」をして『その方らしく生活が送れるように』支援する仕事だと思っています。
利用者の方やご家族の思いを伺いながら、その方々を中心に多職種や他機関とつながりチーム支援を行ない一つ一つの問題に向き合っていくことはとても大変です。しかしながら利用者の方やご家族の方から「ここでよかった」と話していただけた際には何にも代えられないやりがいを感じる業務です。
社会福祉士国家試験の受験資格は、大学での履修科目や実務経験などにより、細分化されています。また、必要に応じて、専門知識を学ぶための養成施設に入学する場合もあるでしょう。
ここでは、受験資格の要件や養成施設を利用する対象者について解説します。該当する項目を確認し、受験資格取得の参考にしてください。
社会福祉士になるには、受験資格を満たしたうえで国家試験に合格しなければなりません。受験資格を取得するルートは12通りに細分化されていますが、大きく分類すれば4つのルートから受験資格を得られます。
1つ目は、福祉系の4年制大学で指定科目を修めて卒業するルートです。実務経験などがなくても受験資格を満たします。
2つ目は、2~3年制の福祉系大学で指定科目を修めたのち、実務経験を積むルートです。2年制の場合は2年、3年制の場合は1年の相談援助の実務経験があれば受験資格を得られます。
3つ目は、社会福祉士の短期養成施設で6ヵ月以上学び卒業するルートです。たとえ福祉系の大学に通っていたとしても、修めた科目が指定科目ではなく基礎科目の場合は、短期養成施設で学ばなければなりません。
4つ目は、社会福祉士の一般養成施設で1年以上学び、卒業するルートです。一般の4年生大学を卒業した人や、短大を卒業してから1~2年の実務経験を積んだ人、4年以上にわたり相談援助を経験した人が対象となります。
ここでは4つの受験資格を取得するルートについて解説しましたが、3つ目と4つ目で紹介した「養成施設」とはどのような施設なのでしょうか。
次項で詳しく解説するので、受験資格取得の参考にしてください。
養成施設とは、福祉系の大学などで指定科目を修めていない人や一般の大学を卒業した人を対象に、社会福祉士国家試験に合格するための知識を身につけ、受験資格を取得する施設です。
前述のように、養成施設には「短期養成施設」と「一般養成施設」があるので、それぞれの違いを見ていきましょう。
以下に該当する方は、短期養成施設で6ヵ月以上学ぶことにより、社会福祉士試験の受験資格を得られます。
以下に該当する方は、一般養成施設で1年以上学ぶことにより、社会福祉士試験の受験資格を得られます。
なお、一般養成施設には、専門学校の通信教育や夜間通学も含まれるため、ライフスタイルに合わせて学ぶ場所を検討するとよいでしょう。
私自身は大学にて社会福祉士の受験資格は取得していたものの資格は未取得でした。その後、やはり福祉の仕事がしたい!と一念発起し、一般企業勤めから高齢者福祉施設に転職。介護の仕事をしながら社会福祉士の国家試験の勉強、そして社会福祉士の資格を取得した経緯があります。
資格を取得後には職場内で生活相談員という相談職へ異動する機会を頂き、利用者の方やご家族、地域の方々と施設や施設職員をつなぐ役割を担うことができました。
試験合格を目指すには、具体的な試験内容や合格率などから難易度を予想し、本番までにやるべきことを明確にするのが効果的です。
また、社会福祉士は国家試験に合格するだけでは名乗ることはできません。正式に名乗るには、社会福祉士登録を行なう必要があります。
ここでは、試験の出題科目や合格率、社会福祉士登録について解説します。試験に必要な準備や資格取得後の手続きを理解し、社会福祉士として業務を行なう際の参考にしてください。
社会福祉士国家試験の出題形式は、5つの選択肢から正解を選ぶ五肢択一を基本とする多肢選択形式で、正解が1つの問題もあれば、複数の問題もあることに注意が必要です。
社会福祉士の試験では、精神保健福祉士の試験と共通の内容が含まれる「共通科目」と、社会福祉士専門の問題である「専門科目」が出題されます。
共通科目と専門科目を合わせると、出題範囲は全部で19科目(6科目群)※におよぶため、幅広い学習を行なう必要があります。
共通科目(12科目)は、以下のとおりです。
医学概論/心理学と心理的支援/社会学と社会システム/社会福祉の原理と政策/社会保障/権利擁護を支える法制度/地域福祉と包括的支援体制/障害者福祉/刑事司法と福祉/ソーシャルワークの基盤と専門職/ソーシャルワークの理論と方法/社会福祉調査の基礎
専門科目(7科目)は、以下のとおりです。
高齢者福祉/児童・家庭福祉/貧困に対する支援/保健医療と福祉/ソーシャルワークの基盤と専門職(専門)/ソーシャルワークの理論と方法(専門)/福祉サービスの組織と経営
※法改正により2025年2月の試験から、科目が変更となります。
社会福祉士国家試験の総得点は129点で、合格基準は総得点の約60%と言われています。つまり、78点前後が合格基準と考えておくとよいでしょう。
2024年実施の「第36回社会福祉士国家試験」では、合格率58.1%でした。
試験の合否はインターネットで確認できますが、同日に発送される結果通知も必ず受け取りましょう。
社会福祉士になるには、試験に合格した後「社会福祉士登録申請」という手続きを行なう必要があります。登録申請を行なわないと社会福祉士を名乗れません。資格を取得してすぐ働く予定の方、名刺や履歴書に社会福祉士と記載したい方は、結果通知に同封されている登録手順に従い手続きを済ませてください。
登録手続きには、登録申請書などの必要書類に加え、登録免許税(1万5,000円)や登録手数料(4,050円)も必要です。
必要書類などの不備で手続きが延びないよう、事前に準備し滞りなく手続きを済ませましょう。
試験センターによる審査や登録手続きの完了後、約1ヵ月で登録証が郵送されます。
高齢者施設の後には病院関係でも相談職として仕事をしてきましたが、このやりがいはどの職場でも変わることはありませんでした。
社会福祉士の資格は相談業務に必須の資格ではないのですが、私はこの資格を取得して相談職として業務を担ったことで専門職としての自覚や責任をしっかりと認識することにもつながりました。
また、多職種と協働する際には自分の専門性を軸にして支援する必要もあり、その際に社会福祉士としての知識や価値はとても重要なものであったと感じています。資格は信頼の証にもなります。
社会福祉士国家試験に合格するには、専門性の高さや出題範囲の広さを考慮し、計画的に勉強を進めるとよいでしょう。
ここでは、効果的な勉強法や対策を具体的に解説します。試験までの時間を有効活用するために、ぜひ参考にしてください。
試験合格に必要な勉強時間は約300時間と言われていますが、現実的に考えた場合、一日に確保できる勉強時間はどの程度なのでしょうか。
すでに社会人として働いている人や、他の勉強と並行しながら社会福祉士試験の合格を目指す人など、ライフスタイルはさまざまです。あらゆる状況を考慮すれば、一日に確保できる勉強時間には限界があることがわかります。
例えば、一日に確保できる勉強時間を2時間と考えてみましょう。
毎日勉強できたとしても約5ヵ月、状況によっては勉強できない日もあることが想定されるため、余裕を持った学習計画を立てなければなりません。
また、一日に確保できる勉強時間がある程度確定したら、基本的な暗記や実践的な問題演習に割く時間を決め、バランスよく学習するとよいでしょう。
過去問を活用すれば出題傾向が理解できるため、幅広い範囲の学習を要する社会福祉士試験対策に効果的です。
また、得意分野と苦手分野が明確になることから、苦手分野の克服にも有効な勉強法と言えるでしょう。
過去問を活用するポイントの一つは、解説内容のわかりやすさです。問題集で出題されている設問に大きな違いはありません。
しかし、問題に関する解説内容は問題集によって異なり、自分が理解しやすい解説内容でなければ混乱してしまう可能性も考えられます。
さまざまな種類の問題集を買いそろえるよりも、自分が理解しやすいと思える問題集を繰り返し使用するのが効果的です。
福祉の分野では、社会情勢の変化により法改正が行なわれるのも珍しくありません。そのため、試験に関連する統計データや制度などは、毎年変化するものと認識しておく必要があります。
また、データや制度の変化により、出題傾向にも変化が見受けられることから、過去問だけで試験対策を行なうのは有効な方法ではないでしょう。
試験対策には、最新情報に対応している教材や問題集、過去問の併用が効果的です。
なお、現在販売されている教材や問題集すべてが最新のものとは限りません。
最新の傾向を反映させた教材は、例年4月~6月に販売される傾向にあります。購入する際は、最新の情報に対応しているかを確認してから購入しましょう。
範囲の広い試験勉強では、計画性のある勉強法でインプットしなければ、初期の学習内容を忘れてしまう可能性も考えられます。
知識をしっかり定着させるには、インプットとアウトプットの時間を空けずに問題を解くのが効果的です。学習後の時間を空けずに問題を解くことで、記憶が整理されやすく、学習漏れなどの防止にもつながります。
正解した問題についても、インプットとアウトプットを繰り返し、知識が定着したかどうかを確認するとよいでしょう。
また、知識レベルの確認には、先に問題を解くアウトプットから始め、足りない知識を補うインプットで記憶するのも効果的です。
試験合格を目指すにあたり、どのような学習スタイルがあるのでしょうか。
場所や時間に左右されず、自分のペースを最優先したい場合は独学で勉強するのがよいでしょう。
しかし、法改正や最新情報への対応が不可欠なことや、限られた時間の中で無駄のないスケジューリングを行なう必要があることに、注意しなければなりません。
スケジュール管理や効果的な勉強方法に自信がない場合は、資格スクールへの通学や通信講座による学習スタイルがおすすめです。資格スクールでは、合格にフォーカスした教材や問題集が用意されているため、効率的な学習を実現します。
また、資格スクールや通信講座ではサポート体制が整っており、わからないことや不安なことを放置せず勉強を進められるもの魅力の一つです。
社会福祉士国家試験に臨むには、受験資格を取得し、19科目(6科目群)にもおよぶ広い出題科目を網羅的に学習しなければなりません。
試験までの効率的な勉強を実現するには、受験資格の取得と国家試験の勉強を両立できる大原の講座がおすすめです。
大原には、以下のような強みがあります。
大原の一般養成施設では、重要項目の知識を身につけられるオリジナル問題演習ドリルを活用し、国家試験合格に効果的な学習を実現します。
テキストだけではポイントの理解が困難ですが、ドリルを活用することで重要ポイントを効率よく学習することができます。
また、国家試験の出題傾向なども確認できるため、要点を的確に把握し、効率的な試験準備が可能です。すでに社会人として働いている人でも、勉強と仕事を両立し、資格取得に注力できます。
スクーリングおよび実習巡回指導なども、経験豊富な講師による指導を受けられるため、福祉に携わるのが初めての方でも安心して学べる環境が整っています。
一般養成施設の受験資格を得るだけでなく、試験合格による国家資格の取得も目指せることから、非常に効率的なシステムと言えるでしょう。
第34回、35回、36回社会福祉士国家試験において、通信課程(新卒)合格率3年連続70%前後、夜間通学課程(新卒)は2年連続で、合格率100%を達成しました。
このように、試験合格にフォーカスした講座と、経験豊富な講師の指導により、高い合格率を実現しています。
また大原では、通信課程でも専任教員によるサポートを受けられるため、疑問点を放置することなく解消できます。試験直前まで手厚いサポートを受け、不安を感じずに試験に臨めるでしょう。
夜間通学課程は主要駅からのアクセスが良好な場所にあり、仕事終わりからすぐ学習に取り組むことができます。
1年間で受験資格の取得を目指せるほか、卒業見込みでの受験が可能なことから、試験に合格し卒業後すぐに社会福祉士として働ける可能性も考えられるでしょう。
大原では、実習の日程調整も行なえるため、受講生の負担が大幅に軽減されるでしょう。
また、実習先の手配、実習先とのあらゆる調整は大原が行ないます。実習協力施設と自宅の場所を考慮し、通いやすい施設を優先した調整が可能です。
初めての実習では、わからないことも多く、不安や悩みを抱えることもあるかもしれません。大原は、実習中でも万全のサポート体制で受講生を支えます。講師による実習先への訪問機会もあるため、安心して取り組めるでしょう。
また、夜間通学課程においては、実習中の夜間講義がありません。そのため、無理なく実習に専念して資格取得を目指せます。
社会福祉士国家試験は、受験資格を満たすだけでなく、広範囲にわたる出題科目を網羅的に学習しなければなりません。そのためには、試験までの明確な学習計画を立て、知識を定着させる勉強法で試験に臨む必要があります。
慣れない環境での実習から、試験に対する不安や悩みを抱き、勉強に集中できない可能性もあるでしょう。
社会福祉の支援はこれからの日本が多様性のある社会となっていくために欠かせない分野です。その一役を担う社会福祉士を目指す方がたくさん増えていくことを期待しています。
大原では、合格者を多く輩出しており、社会福祉士に必要な知識や能力を身につける環境を確保しています。
講座に関する情報をパンフレットにて確認いただけるので、資格取得を検討されている方はお気軽に資料請求をご利用ください。
また、大原では、講座の説明会や体験入学などを定期的に行なっています。
受験に関する疑問点を解消するためにも、ぜひご参加ください。
大原の講師が徹底解説!
資格の講座以外の学習スタイル
大原学園グループでは、この他にも資格を取得できる学習スタイルをご用意しています。