介護職でキャリアアップを目指すなら、実務者研修が欠かせません。実務者研修を修了すれば、実務経験だけでは得られない介護の基本的な技術と知識が身に付くうえ、一部の医療行為に関する基礎知識が身に付きます。
さらに、実務者研修は介護福祉士国家試験の受験資格の一つとなっているため、介護職でキャリアアップする際の足がかりにもなるのです。
この記事では、実務者研修の内容から、研修を受ける際の注意点やスクール選びのコツまで、丁寧に解説していきます。ぜひ、実務者研修を始める際の参考にしてみてください。
萩原身和(介護福祉士養成校講師:看護師)
介護福祉士養成校で、国家試験受験指導を担当し、毎年、多くの合格者を輩出しています。
講義では受験生が苦手にしがちなところを分かりやすく教えることを心がけています。
実務者研修は、介護職でキャリアアップしたい方におすすめの研修です。実務者研修を受ける前に、どういった研修が行なわれるのかを紹介します。
また、初任者研修との違いも説明するので、押さえておきましょう。
実務者研修は実務経験のある方にとって、それほど難しいものではありません。研修の受講資格は特になく、実務経験がない方でも参加できますが、実務経験があったほうがよりスムーズに研修を進められるでしょう。
実務者研修のカリキュラムは、介護福祉士国家試験の出題される科目群を学習します。さらに医療的ケアでは、これまで医療行為とされてきた「喀痰吸引」「経管栄養」に関する基礎知識が学べます。
なお、実務者研修は全国各地にある実務者研修に対応したスクールで受けられます。どのスクールでも学習内容自体は同じですが、スクールによって学習の進め方や研修費用が変わる点に注意が必要です。
介護福祉士の受験資格を得るには複数のルートがありますが、多くの方が選択する実務経験ルートでは、3年以上の実務経験と併せて実務者研修の修了が必須です。
実務者研修修了者は介護福祉士国家試験の実技試験が免除になり、筆記試験のみで資格取得を目指せます。
また、実務者研修で得た知識は介護福祉士国家試験にも活かせるため、介護福祉士を目指している方は、筆記試験対策にもなると考えて実務者研修を受けるとよいでしょう。
介護職の研修には実務者研修以外にも介護職員初任者研修(以下、初任者研修)があります。初任者研修とはその名のとおり、介護や福祉に関して初めて学ぶ方、介護の仕事を始めてすぐの方向けの基礎的な研修です。
まず両者の違いとして挙げられるのは研修制度で、初任者研修は修了試験が必須ですが、実務者研修の場合は修了試験の有無がスクールによって異なります。
また、実務者研修は初任者研修にはない医療的ケアのカリキュラムがあり、実務者研修修了者は医療的ケアで、「喀痰吸引」「経管栄養」の基礎知識が習得できる点も違いとして挙げられます。
実務者研修には受講要件がなく、初学者からでも受講できますが、より基本的なところから学びたい方は、まずは初任者研修を受講するとよいでしょう。
介護に関する学習をお考えの場合、どのように学べばよいかが分からないというお問い合わせをいただくケースがあります。そこで、最終的に介護福祉士になりたい場合には実務者研修をおすすめしております。また、家族介護などという目的の場合には、介護職員初任者研修をおすすめしております。大原の講座では、フォロー体制がしっかりしているので、初めて介護の分野を学習する方でも、安心して受講できます。
実務者研修を受けると、介護の専門的な知識と技術が身に付く以外にも多くのメリットがあります。
ここでは、実務者研修を修了すると得られる3つのメリットを解説します。
実務者研修は専門性の高い知識を得られるため、その後のキャリアアップにつながり、職場によっては給与が上がる可能性もあります。
また、実務者研修を終えるとサービス提供責任者(通称、サ責)になれます。サービス提供責任者は、訪問介護の具体的なプランを立てたり、ケアマネジャーとの連携をとったりする立場で、訪問介護業務のなかでもなくてはならない存在です。
指定訪問介護事業所では、サービス提供責任者を一定数配置する義務があるため、転職や就職にも有利になるでしょう。
実務者研修では、座学以外に演習(スクーリング)も行なわれ、グループワークや医療的ケアの演習を通して現場でも役立つ技術が身に付きます。
実務者研修を修了すると、演習で習得した「喀痰吸引」「経管栄養」といった医療行為の基礎が学べます。
介護福祉士が職場で喀痰吸引等の医療行為を行なうためには、実務者研修修了後、実際の患者さんなどに対して行なう、実地研修を修了することで可能となります。
これらの医療行為は、本来は医師や看護師にしかできないものなので、職場によっては重宝されるでしょう。
実務者研修は、介護福祉士国家試験の受験資格の要件の一つで、受験者のうち実務経験ルートでの受験者に義務付けられています。
介護福祉士は介護系唯一の国家資格であり、介護職としてキャリアアップしていきたいならぜひ取っておきたい資格です。
実務者研修で得られる知識は介護福祉士国家試験でも問われるため、将来的に介護福祉士を目指している方は、試験の準備段階と思って研修に参加するとよいでしょう。
ここからは、実務者研修の具体的な内容を紹介していきます。カリキュラムや実施期間、平均的な費用を知って、研修先選びに活かしましょう。
実務者研修は、実務者研修講座のあるスクールで受けられます。スクールは全国各地にあるため、まずは自分の地域にあるスクールをインターネットで検索してみましょう。
どのスクールも学習内容は同じですが、スクールによって学習のスケジュールや受講者へのサポート体制が異なります。
後述する実務者研修の注意点とスクール選びのポイントを参考に、自分に合ったスクールをじっくりと検討してみてください。
研修は最大20科目450時間の座学と演習からなり、保有資格によって科目の一部が免除される仕組みになっています。
例えば、介護職の多くが受ける初任者研修を修了している場合、450時間のうち130時間が免除になり、320時間の座学と演習(スクーリング)だけで研修が終わります。
研修期間は各スクールで異なり、保有資格と学習のスケジュールによっては、3ヵ月程度で研修を終えることもあります。自分の持っている資格を確認し、研修時間がどれくらい免除されるかを把握しておきましょう。
なお、科目免除の対象資格であるホームヘルパー1級~3級および介護職員基礎研修は、2013年3月にすでに廃止されています。これから新しく介護職になる方は、無資格で実務者研修を受けるか、実務者研修より先に初任者研修の受講を検討してみるとよいでしょう。
実務者研修は、全20科目の座学と演習(スクーリング)で構成され、学習時間は450時間+医療的ケア演習となっています。
座学では、介護の対象である人やそれをとりまく社会、介護の原則や技術などについて学び、専門性の高い介護の知識を身に付けます。
介護過程Ⅲと医療的ケアについては演習(スクーリング)が行なわれ、介護実技・グループワークや喀痰吸引などの演習があります。
実務者研修の科目と学習時間数(時間)※免除される科目は-と表示しています
科目 | 無資格 | 初任者研修 | ホームヘルパー | 介護職員基礎研修 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
1級 | 2級 | 3級 | ||||
人間の尊厳と自立 | 5 | - | - | - | - | - |
社会の理解Ⅰ | 5 | - | - | - | - | - |
社会の理解Ⅱ | 30 | 30 | - | 30 | 30 | - |
介護の基本Ⅰ | 10 | - | - | - | 10 | - |
介護の基本Ⅱ | 20 | 20 | - | - | 20 | - |
コミュニケーション技術 | 20 | 20 | - | 20 | 20 | - |
生活支援技術Ⅰ | 20 | - | - | - | - | - |
生活支援技術Ⅱ | 30 | - | - | - | 30 | - |
発達と老化の理解Ⅰ | 10 | 10 | - | 10 | 10 | - |
発達と老化の理解Ⅱ | 20 | 20 | - | 20 | 20 | - |
認知症の理解Ⅰ | 10 | - | - | 10 | 10 | - |
認知症の理解Ⅱ | 20 | 20 | - | 20 | 20 | - |
障害の理解Ⅰ | 10 | - | - | 10 | 10 | - |
障害の理解Ⅱ | 20 | 20 | - | 20 | 20 | - |
こころとからだのしくみⅠ | 20 | - | - | - | 20 | - |
こころとからだのしくみⅡ | 60 | 60 | - | 60 | 60 | - |
介護過程Ⅰ | 20 | - | - | - | 20 | - |
介護過程Ⅱ | 25 | 25 | - | 25 | 25 | - |
介護過程Ⅲ | 45 | 45 | 45 | 45 | 45 | - |
医療的ケア※ | 50※ | 50※ | 50※ | 50※ | 50※ | 50※ |
合計 | 450 | 320 | 95 | 320 | 420 | 50 |
※厚生労働省 実務者研修認定ガイドラインより一部改変
※上記の学習時間に加え、医療的ケアの演習(スクーリング)を修了する必要があります
どのスクールも研修の内容自体は同じですが、研修費用は無資格者の場合で約10万円から20万円まで大きく幅があります。費用が異なるのは、スクールによってカリキュラムやサポート体制が違うためです。
費用が高いスクールは、受講日程の自由度が高い、欠席時の無料振替や何度も質問できるなどのサポート体制が充実しています。
安いとサポート体制がまったくないわけではありませんが、費用の安さだけでスクールを選ぶと、学習スタイルが合わずに後悔するかもしれません。
スクールの立地やカリキュラム、各種サポート体制をじっくりと比較してから、スクールを選択するようにしましょう。
大原の実務者研修は、全国で展開しております。駅から近い研修会場も多く、スクーリング(対面授業)に通いやすい環境です。また、スクーリングの振替出席や自宅学習で分からないことは、質問フォームから何度でも質問が可能など、サポート体制も充実しています。実務者研修をご検討の方は、ぜひ、大原の実務者研修をご検討ください。
実務者研修を受ける際には、注意点が4つあります。しっかりとポイントを押さえてから研修にのぞみましょう。
実務者研修は、保有する資格によってカリキュラムの一部が免除になります。対象となる資格は、初任者研修、ホームヘルパー1級・2級・3級、介護職員基礎研修です。
カリキュラムの一部が免除となることで、研修時間が大幅に短縮されるだけでなく、研修にかかる費用も少なくなります。
無資格でも実務者研修を受けられますが、実務者研修よりも基本的な介護の知識と技術を学べる初任者研修を先に受講するのも良いかと思います。
実務者研修は、介護福祉士国家試験の受験資格の一つです。介護福祉士の試験申し込みは例年8月から9月にかけて行なわれ、申し込みの際に「実務者研修修了見込証明書」または「実務者研修修了証明書」の提出が必要になります。
つまり、介護福祉士国家試験を受ける場合には、少なくとも受験申し込みの時点で実務者研修を受けていなければならないということです。申し込み直前になって焦らないためにも、実務者研修はなるべく早く受けたほうがよいでしょう。
実務者研修は国による教育訓練給付制度の対象のため、受給要件を満たしていれば、研修費用に対して国から補助を受けられます。
ただし、補助金の受給には雇用保険の加入期間など一定の条件があり、それを満たさなければなりません。実務者研修を受ける前に、最寄りのハローワークに相談してみましょう。
実務者研修は、実務者研修講座のある全国各地のスクールで受けられます。どのスクールも学習内容自体は同じですが、研修にかかる費用やカリキュラム、サポート体制は異なります。
スクール選びの際には必ず複数のスクールを比較し、自分の生活スタイルに合っているか、サポート体制は十分か、研修費用はどれくらいかを確認しましょう。
実務者研修には、スクールに通学する演習(スクーリング)が必ずあります。距離が遠かったり、演習の時間帯が合わなかったりすると、研修を続けるのが負担になるので注意が必要です。
研修を挫折しないためにも、スクール選びは慎重に行なってください。
大原の実務者研修は、「無資格の方」、「ホームヘルパー2級修了者」、「初任者研修取得者」については専門実践教育訓練給付制度の対象講座となっております。一定の要件を満たす方であれば学習期間内に実務者研修修了後、ご本人が支払った入学金および受講料の50%相当額について国からの補助を受けることができますので、経済的な負担が軽減できます。
実務者研修は、各都道府県が認可された施設で受けられます。研修内容はどのスクールも変わらないため、どのようなサポートを受けられるか、自分に合っているかをじっくり確認してから選びましょう。
ここでは、研修先選びのポイントを解説するので、スクール選びの際の参考にしてください。
実務者研修費用はスクールによって異なり、その額は無資格の場合およそ10~20万円です。研修内容は同じなので、できるだけ費用の安いスクールを選びたくなりますが、金額だけでスクールを選ぶと後悔するかもしれません。
費用の安いスクールはお金がかからない反面、サポート体制が不十分で、満足のいく研修を受けられない可能性もあります。スクール選びで大切なのは、受講できる時間帯に講座があるか、土日も開講しているかなど、自分の生活スタイルにあった場所を選ぶことです。
リーズナブルな価格も大切ですが、仕事で役立つ知識と技術がしっかり身に付くように、スクールのカリキュラムやサポート体制も確認しておきましょう。
実務者研修は座学だけでなく、介護過程Ⅲと医療的ケアでは演習(スクーリング)も行なわれます。座学は自宅でもできますが、演習はスクールに通う必要があるため、住んでいる場所によっては通学が負担になる可能性があります。
もし、家の近くにスクールがない場合は、できるだけ演習の期間が短いスクールを選んで、通学日数を減らすようにしましょう。
講座のスケジュールはスクールによって異なり、それによって研修修了までの期間も変わります。講座の日程だけではなく時間帯もそれぞれ異なり、仕事をしている方向けに夜間や土日に開講しているスクールを選ぶことも可能です。
自分のスケジュールと講座のスケジュールを確認して、無理なく学習を進められるスクールを選びましょう。
大手スクールの場合、複数ある講座スケジュールから自分に合ったものを選べることが多く、欠席時の授業振替サポートも受けられる場合があります。
受講生向けのサービスも、スクールによってさまざまです。特に、大手のスクールはサポート体制やフォロー体制が整っているため、安心して研修をしたい方は大手スクールがよいでしょう。
よくある受講生へのサポートとしては、欠席時の振替授業や電話・メールでの質問対応、受講料の分割払いなどがあります。
また、実務者研修と介護福祉士受験対策の講座をお得なセットで用意しているスクールもあるため、介護福祉士を目指している方は検討してみてはいかがでしょうか。
大原では、受講生へのサポートとフォローが充実した、実務者研修講座を用意しています。オリジナルの教材とカリキュラムで、しっかりと知識と技術を身に付けられるでしょう。
大原の実務者研修では、オリジナルの教材をもとに、受講生に適したカリキュラムで学習を進めていきます。
受講生の平均的な学習期間は6ヵ月間ほどです。これに6日間のスクーリング(演習)を合わせて、確実に知識と技術を身に付けます。
働きながら研修を受ける方にとって一番大変なのは、スクーリング(演習)の時間を確保することでしょう。演習はスクールで受講する必要があるため、時間のない社会人にとって大きな負担ですが、大原の演習は忙しい方でも参加できるように最短6日間で終わります。
また、大原は自宅学習が苦手な方のために教室の一部を自習室として開放するなど、受講生へのサポートも充実しています。このように、大原では受講生が学びやすい環境が整っているといえるでしょう。
実務者研修は無資格の場合だと、修了までに平均6ヵ月間ほどかかります。長期間の研修を最後まで無理なく続けられるように、大原では受講生に対する各種サポートを用意しています。
都合により受講できない場合でも、別の日に振替ができるサービスや、質問フォームから何回でも質問できるサービスは、受講生にとって大きな助けとなるでしょう。
大原では、実務者研修と介護福祉士受験対策をセットにしたコースを、お得な価格で用意しています。
介護福祉士受験対策講座は、基礎力養成(6回)と実力アップ(3回)のコンパクトなカリキュラムのため、仕事をしながらでも試験合格を目指せるでしょう。
大原では、仕事をしながらでも無理なく修了できるよう、自宅で大原のテキストを使って学習する通信講座が開講しています。
近くにスクールがある方や自宅学習が苦手な方には通学講座が、スクールに通う時間がない方やスキマ時間・休日にまとめて学習したい方には通信講座がおすすめです。
同じスクールで学べば一貫した指導を受けられるため、介護福祉士を目指すなら、セットで受講してみてはいかがでしょうか。
大原の実務者研修は、国家試験対策につながる学習ができるように、自宅学習にて介護福祉士国家試験出題範囲の基礎知識を身に付けられる講座となっています。また、スクーリング(対面授業)にて演習を通じて介護技術のポイントを修得していただきます。
質問も何度でもできるので、安心して働きながらでも、実務者研修を修了することが可能です。また、介護福祉士国家試験の受験対策がセットになったコースも設定しております。
実務者研修を修了すると介護の知識や技術が身に付くだけでなく、サービス提供責任者になれたり、一部の医療行為の基礎知識が身に付いたりと、さまざまなメリットがあります。
また、実務者研修は介護福祉士国家試験の受験資格の一つにもなっており、介護福祉士を目指すなら、早めの受講がおすすめです。実務者研修は全国各地のスクールで受けられます。学習内容自体はどのスクールも同じなので、自分の生活スタイルに合わせて無理なく学べる場所を選びましょう。
大原では、受講生へのサポートが充実した実務者研修を用意しており、介護福祉士受験対策講座とセットで受講することも可能です。
また、講座の内容やサポートについて、より深く質問できるセミナー・説明会・体験入学(受験対策のみ)も随時開催しています。ぜひ参加してみてください。
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