国家公務員試験の一つである国家一般職試験について紹介します。この試験に合格し採用されると、法律や政令に基づいて施策を推進する事務的な仕事を担当し、政策の企画立案をサポートすることになります。
国家一般職試験では、職員として必要な基礎的な能力や、希望進路に応じた専門的な知識が試されます。
試験での出題範囲が広く難易度も高いため、合格するためには的を絞った効率的な学習が必要であり、国家一般職試験の対策には、過去問を使用した学習がおすすめです。
過去問を解くと、問われる内容から試験の傾向をつかめるほか、求められているレベルに対して今自分がどの段階にいるのかわかります。
この記事では、国家一般職試験の概要と試験攻略のポイントを解説し、過去問を使った効果的な学習法を紹介します。ぜひ、記事を参考にして合格へのヒントをつかんでください。
(2024年8月 更新)
・氏名:田辺慎一
・所属:資格の大原・公務員講座(東京水道橋校)
・担当科目は、数的処理、数学、物理、化学。直近の出題傾向を取り入れ、講義を展開している。また、公開模擬試験の作成にも力を入れており、2024年度も多くの試験で的中している。
国家一般職試験は、国家公務員試験の一種です。国家公務員試験には国家一般職試験以外にも、国家総合職試験や国家専門職試験などがあります。
国家一般職試験に合格し採用されると省庁などに勤務し、法律や政令に基づいた定型的な事務に従事します。国家総合職試験に合格して採用された方が全国各地や海外の転勤を経て中央省庁で活躍するのに対し、国家一般職試験に合格し採用されると特定の職場に長く勤めて現場で政策を実行し、企画立案をサポートするという特徴があります。
ここでは、国家一般職試験の概要を説明し、国家総合職試験との違いを解説します。
国家一般職試験は受験資格に応じて、大卒程度試験、高卒者試験、社会人試験に分かれています。それぞれの受験資格は以下の通りです。
※大学・短大または高専の卒業および卒業見込みの方は21歳未満でも受験可
※中学卒業後2年以上5年未満の方も受験可
また、試験は一次試験と二次試験に分かれており、問われる内容が異なります。
国家一般職試験は、一次試験と二次試験で構成され、受験資格に応じて試験内容が異なります。
一次試験では基礎能力試験と専門試験、論文(または作文)試験があり、二次試験では人物評価のための面接があります。
一次試験の専門試験では、行政や技術などの区分から一つを選んで受験します。
※事務区分では適性試験を実施します。
特定の分野に対するエキスパートとしての活躍が求められるため、働きたい職種に応じた専門区分を選択するようにしましょう。
一次試験は基礎能力試験(多肢選択式)と専門試験(多肢選択式)、論文または作文試験で構成されます。
基礎能力試験は国家一般職に必要な基本的な能力(知能と知識)が問われ、教養試験とも呼ばれています。合格基準点があるため、基準を確実に超えられるように学習を進めましょう。
基礎能力試験では、配点の高い現代文や英語、数的処理への対策が鍵となります。
また、基礎能力試験と専門試験の配点は1:2(高卒者事務区分は2:1)です。合格するためには配点の高い専門試験への対策が重要となります。基礎能力試験の基準点をクリアできるようになったら、専門試験へ力を入れるようにしましょう。
二次試験では、人物評価のための個人面接のみ行なわれます。
人柄やコミュニケーション力などの対人能力が問われるため、志望動機を明確にし、面接の練習を積んでから試験に臨みましょう。
国家一般職試験と国家総合職試験は二次試験の内容が大きく異なります。
国家一般職試験の二次試験は面接のみですが、国家総合職試験の二次試験には、論文や討論の試験もあり、より総合的な力が求められます。このため、国家総合職試験のほうが難易度は高くなっています。
また、受験資格についても違いがあり、国家総合職試験には高卒者・社会人試験区分がなく、国家一般職試験にはない院卒者試験が設けられています。
国家一般職試験は、他の多くの公務員試験と一次試験実施日程が重複しません。また、年齢要件を満たせば、受験可能です。
一次試験では、基礎能力試験と専門試験と論作文が出題されますが、出題科目の多くは他の公務員試験と一致します。国家一般職試験合格のための特別な対策を行なうことなく、他の公務員試験対策と同様の対策で受験いただけます。
また、国家公務員総合職試験より採用予定人数が多いため、筆記試験対策・論作文対策・人物試験対策を丁寧に行なえば、内定獲得のチャンスがあります。
国家一般職試験は問われる範囲が広く、内容も深いため、漫然と学習しているだけでは合格にたどり着けません。
ここでは、国家一般職試験攻略のポイントと、過去問を使った学習の重要性について解説します。
国家一般職試験は試験範囲の広さが特徴です。このため、試験範囲全体をカバーする網羅的な学習ではなく、的を絞った効率的な学習が必要です。
また、試験の配点率を知り、それに応じて学習時間を確保するといった工夫も大切です。
試験によっては科目を選択して解答する区分もあるので、どの科目を選ぶか早めに決めておいたほうがよいでしょう。
例えば、専門試験のうち最も受験者の多い行政区分では、政治学、行政法、経営学、国際関係、英語基礎などの16科目から8科目を選択します。
具体的にどのような知識がどういった形式で問われるのかを把握するために、過去問を解いて問題の傾向を知っておきましょう。
過去問を解くメリットは4つあります。
公務員試験では、以前出題された問題であっても、表現や数値を変更して再度出題されることがよくあります。また、同じような問題が、数年続けて出題されることもあります。
数多くの過去問を解くことにより、本試験の際には、まったくの初見ではなく、見たことがある問題、つまり、解答プロセスを理解できている問題を解くことになります。このような問題を着実に正答することで、択一試験の得点力を伸ばすことにつながります。
また、時間配分を考える際には、「正答率50%レベルの問題を確実に正答すること」を念頭に置きましょう。確実に解けそうな問題に時間を多く割き、難解な問題を飛ばすことにより、択一試験における合格ラインを突破することにつながります。
過去問での学習効果を最大限引き出すためには、勉強を始める前に過去問の活用法を知っておく必要があります。
ここでは、過去問を使うときのポイントと、過去問をいつどのように使えばよいかについて解説します。
過去問を使うときのポイントは4つあります。それぞれ解説していきます。
過去問は最低10年分解くようにしましょう。
取り組む年数が少なすぎると、年ごとの傾向がつかめません。10年分解けば、どの部分が追加され、削除されたのか、また、問われる内容がどのように変化しているのかがわかります。
逆に、取り組む年数が増えすぎると、1年ごとにかける学習時間が減ってしまい、学習効果が下がります。
古すぎる過去問は、今の問題と傾向が大きく変わっている可能性もあります。特に時事に関する情報は常に更新されているため、古い過去問は学習の妨げとなりかねません。
過去問を解いたら必ずすぐに復習しましょう。
過去問を使った学習で特に避けるべきは、問題を解いて点数に一喜一憂し、復習せずやりっぱなしにすることです。
知識の定着を図るためにも、過去問は解いたらすぐに復習するようにしましょう。
過去問は一度ではなく複数回解くようにしましょう。1ヵ月程度期間をあけて再度解くと、知識の定着具合を知ることもできます。
また、過去問を何度か解いているうちに、だんだん点数が上がってくると、自分の成長を感じられ、モチベーションアップにもつながります。
試験時間内に問題が解けなければ、知識があっても意味がなくなってしまいます。試験では問題を解く時間配分が重要です。
時間を計りながら過去問を解くことで、実際の試験をイメージできるようになります。問題を解くのにどれくらいの時間がかかっているかを把握できれば、実際の試験でのペース配分を考える際の参考になるでしょう。
過去問の利用時期は人によって様々です
テキストでの学習と並行して過去問を解いたり、試験本番の数ヵ月前から模擬試験的に使用したりする場合があります。
過去問を解くことで知識の定着度や出題傾向、難易度を知ることができますので、もったいぶらずにできるだけ早く過去問に取り組みましょう。
過去問の使い方は取り組む時期によって異なります。
学習の初期や中期は、知識の定着のために過去問を使用しましょう。
テキストなどでの学習と並行して過去問を解くことで、テキストで得られた知識が、実際にどのように試験で問われているのかを確認できます。また、期間をあけて何度か解けば、知識の定着度合いを確認できます。
学習の後期には、知識の最終確認と仕上げのために過去問を使用しましょう。
この時期は過去問を模擬試験的に使用します。自分に足りない知識を洗い出して、知識の最終確認を行ないましょう。時間を計って実際の試験と同様に取り組むことで、時間配分の確認も行なえます。
過去問を使い始める時期は人によって様々ですが、少なくとも試験の数ヵ月前には、テキストでの学習から過去問での学習へ移行するようにしましょう。
よくテキストを読んで知識や解法を暗記するまで過去問を解かないという方がいますが、公務員試験対策としては間違いです。
公務員試験は、他の多くの国家資格試験よりも過去問をアレンジした問題の出題が多く、過去問を解きながら知識の確認と暗記を行なう方が効率的です。講義を受け、一通りテキストの確認をしたら、すぐに過去問に挑戦することをおすすめします。
合格者の多くが、科目にもよりますが、本試験までに最低でも3~5回は同じ問題を解いています。問題集には重要度が記載されていますので、重要な問題は必ず解けるようにしましょう。問題集の順番で答えを覚えてしまう方もいますので、そのような場合は、いつもと解く順番を変えてみるとよいです。
国家一般職で毎年のように出題される項目はいくつかありますが、判断推理で最初に学習する論理を取り上げます。
ある研究室の学生について、次のことがわかっているとき、論理的に確実にいえるものはどれか。
選択肢2.
論理の問題では、条件を三段論法や対偶で整理してから、正答を導きます。しかし、闇雲に条件を整理しようとしても、どのように整理すればよいのかが見えにくく、正答を導くために時間を要することが想定されます。
そのため、選択肢をヒントにし、どの条件から整理すればよいかを決めてから問題を解くとよいでしょう。
なお、本問では、三段論法と対偶に加え、命題の分割がポイントになります。
「A→B∧C」の命題は、「A→B」と「A→C」と分割可能です。分割した後のそれぞれの命題にて三段論法や対偶を考えることができます。
論理の問題は、三段論法や対偶を用いると解答できる問題が頻出です。また、国家一般職以外の公務員試験でも数多く出題されます。
テキストの例題や練習問題を数多く解き、論理の基本を身につけましょう。
ある市町村の各地区について調査したところ、次のことがわかった。これから論理的に確実にいえるものはどれか。
選択肢1.
論理の問題では、一見すると三段論法で整理できないような条件であっても、工夫をすると整理できるようになる問題があります。
条件を整理するために、包含関係を用いるとよいでしょう。包含関係とは、「A∧B→A」の関係を指します。
なお、本問では「人口1,200人以上」を「人口1,000人以上」にできます。選択肢1.をヒントにし、三段論法と対偶に加え、包含関係を用いると、「公民館→人口1,200人以上⇒人口1,000人以上→診療所」と整理することができます。
近年の論理の問題では、一見すると三段論法では整理できない問題が出題されるようになっています。その際には、包含関係を用いることができるかどうかを考えてみましょう。
新傾向の問題に対応できるようにするためには、常に最新の情報を入手し、数多くの過去問に触れることが重要です。新傾向の問題は他公務員試験でも出題が予想されますので、日頃から様々な問題に触れることが重要です。
ある大学には、法文系と自然科学系の二つの専攻があり、スポーツサークルは、フットサルサークルとテニスサークルがある。この二つのサークルの2年生と3年生が共同で新入生歓迎会を行なうことにし、担当幹事を次の方法で決めることにした。いくつかの条件を示し、その条件すべてに反しない学生がいた場合、その者が担当するというものである。次の4つの条件を示したところ、すべてに反しない学生は2人いた。その2人は、ある属性のみは共通していたが、それ以外の属性はいずれも異なっていた。共通する属性として最も妥当なものはどれか。
選択肢3.
論理の問題では、まず三段論法や対偶で整理できるかどうかを考えます。しかし、本問では三段論法や対偶では整理しても正答が出ない問題や、「かつ」「または」を含む条件で分割ができない条件がある場合には、作表すると正答を導けます。
まずは、すべての組み合わせを書き出したのち、各条件に当てはまらない組み合わせを省き、残った組み合わせと選択肢を比較して正答を導きます。
本問では、専攻・サークル・学年に関して8通りの組み合わせがありますが、条件を満たす組み合わせは、「法文系・テニス・2年生」と「自然科学系・フットサル・2年生」の2通りに限定されます。
問題の条件を満たすすべての組み合わせが特定できたら、選択肢を考えましょう。
三段論法や対偶で条件を整理できず、作表により解答する問題が増加傾向にあります。
数多くの過去問に触れることにより、解法の引き出しを多くすることが重要です。また、様々な公務員試験においても類題が出題されていますので、国家一般職対策で得たノウハウを様々な公務員試験で生かすこともできます。
国家一般職試験対策には過去問の活用が効果的です。しかし、過去問は単純に知識を問う試験への対策には有効ですが、文章力やコミュニケーション能力を問う試験にはあまり効果がありません。
国家一般職試験の記述、論作文、面接試験へ対策するためには、スクールなどで専門家に指導してもらうことをおすすめします。
大原では、国家一般職志望者向けの講座を設けており、プロの講師が徹底して指導し、受講生と一緒に合格を目指します。
国家一般職試験には、記述や論文、面接試験もあります。
過去問は知識を問う筆記試験の対策には効果的ですが、論理的思考力を問う論文やコミュニケーション能力を問う面接試験への対策には不向きです。
記述や論文、面接対策を独学ですることもできますが、国家一般職試験のハードルは高く、独学だけで合格するのは困難といえます。
合格のためには、国家公務員試験に対応した資格スクールの利用がおすすめです。
大原には国家一般職志望者のための講座があり、プロの講師による指導の下、一次試験と二次試験の両方の対策ができます。
過去に多くの合格者を輩出している大原のノウハウをもとに、合格のためのカリキュラムと、過去問を徹底分析したオリジナルの教材で、受講生を合格へと導きます。
例えば、国家一般職の一次試験では、配点が最も高い「数的処理」への対策が合格への鍵となっています。しかし、数学が不得意で数的処理につまずく人も多く、なかなか得点源になりにくい科目でもあります。
大原では、数的処理対策専用の講義とテキストを用意しているため、苦手な人も多い数的処理を得点源に変えることができます。
大原では国家一般職試験合格のために、論作文や専門試験の記述問題に対応したテキストを用意しています。
論作文対策では、文章表現が的確か、課題の意図が正しく反映されているかなどをプロ講師が細かく添削し、書けるようになるまで個別指導します。
また、面接試験対策では、面接の心構えや入退出方法、身だしなみなど、面接の基本から指導します。志望試職種に応じた個別指導も行なっており、面接練習を重ねることで確実に面接力がつき自信も生まれます。
論作文試験では、我が国の社会問題に関する内容が出題されます。国家公務員としての視点を持ち、自らの考えを明確に述べることがポイントとなります。
近年の論作文試験の傾向は、問題文中に社会問題に関する資料が掲載されており、資料に基づいて中長期的な視点で解決策を考える問題が出題されています。資料から問題点や課題を把握し、国としてどのように取り組むべきかの考えを示す必要があります。
面接試験では、志望動機・今までで一番頑張ったこと・時事問題に対するご自身の考え・自己PRがよく問われる質問となります。
国家公務員として資質が問われていますから、国家公務員の立場を踏まえて受け答えしていく必要があります。また、国家公務員一般職は、国家全体に関わる業務を行ないますので、論理的思考力や視野の広さをお伝えする必要があります。
今までで一番頑張ったことのエピソードを整理し、面接官に国家公務員として活躍する姿を明確に伝えられるよう、準備を整えていきましょう。
国家一般職試験は国家公務員試験の一つで、法律や法令などに基づき、定型的な事務に従事します。国家一般職試験では、広く深い知識や論理的思考力、コミュニケーション能力などが問われます。
知識が問われる基礎能力試験と専門試験には、過去問を使った逆算的な学習が有効です。過去問での学習のポイントを押さえ、効率的に学習を進めましょう。
また、過去問での対策が難しい、論作文や面接の試験への対策には、国家一般職志望者向けのスクールの利用がおすすめです。
大原では国家一般職志望者向けの講座を設けており、プロの講師の徹底した個別指導で受講生を合格へと導きます。
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