地域の安全を守り、人の役に立てる魅力のある警察官。警察官への就職や転職を考えるなら、やはり仕事内容だけでなく年収も気になるところです。
今回は、全国の警察官の9割以上を占める、都道府県警察で働く警察官の年収について、退職金や福利厚生と併せて詳しく解説していきます。
警察官になる方法や仕事内容についても解説していますので、警察官の仕事に興味のある方はぜひ参考にしてください。
(2024年8月 更新)
・氏名:松野拓(まつのたく)
・所属:資格の大原・公務員講座(東京水道橋校)
・おもに大学学内講座を担当(10大学以上歴任)。事務系、公安系、技術系、福祉・心理系、保育士、大卒、高卒、社会人経験者など、多くのジャンルで合格指導を経験
警察官は、警察庁で政策の企画立案を行なう国家公務員と、都道府県警察で地域住民の暮らしを守る地方公務員に分かれています。
国家公務員と地方公務員では、給料計算の基準となる給料表が異なるため、仕事内容だけでなく年収も異なり、一般に、平均年収は国家公務員のほうが高くなっています。
ここでは、警察官の9割以上を占める地方公務員を中心に、平均年収や初任給について詳しく見ていきましょう。
警察官の年収は、毎月一定額支払われる給料と、残業や特殊業務などに支払われる手当、6月と12月に支払われるボーナス(勤勉手当と期末手当)に分けられます。
自治体によって給料や手当の基準は異なるため、どの自治体も年収が同じというわけではありません。
令和2年度地方公務員給与実態調査によると、警察官(地方公務員)の平均給与月額は、456,572円(平均給料月額323,548円+平均諸手当月額133,024円)となっています。
また、警察官のボーナスは国家公務員のボーナス(給与月額の4.45月分)を基準に、各自治体の財政状況に応じて設定されています。
ボーナスを国家公務員と同水準と仮定して計算すると、警察官の年収は以下のようになります。
年収=平均給与月額×12ヵ月+ボーナス
=(平均給料月額+平均諸手当月額)×12ヵ月+平均給料月額×4.45月
=(323,548円+133,024円)×12ヵ月+323,548円×4.45月
=6,918,652.6円≒700万円
一般的なサラリーマンの平均年収は約500万円ですので、警察官の平均年収はそれよりも高い水準だといえるでしょう。
警察官の初任給は学歴によって変わります。令和2年地方公務員給与実態調査によると、経験年数1年未満の警察官の平均給料月額は、大学卒で215,401円、短大卒で196,409円、高校卒で183,216円となっています。
また、初任給は所属する都道府県によっても変わり、都市圏のほうが高くなる傾向にあります。
大学卒 | 高卒 | ||
---|---|---|---|
東京都 | 253,300円 | 213,900円 | 地域手当含む |
大阪府 | 235,562円 | 199,898円 | 地域手当含む |
愛知県 | 238,900円 | 200,100円 | 地域手当含む |
福岡県 | 219,000円 | 189,000円 | 地域手当含む北海道 |
北海道 | 203,800円 | 173,400円 |
令和2年度地方公務員給与実態調査をもとに、経験年数別の平均年収を簡易的な手法で算出すると、以下のようになります。
警察官の年収は経験年数によって増えていき、勤続25年を超える頃には800万円を超えています。もちろん、年収の増え方は個人差がありますが、どの経験年数でも年収は高い水準にあるといって良いでしょう。
経験年数 | 平均年収 |
---|---|
1年~5年 | 約510万円 |
5年~10年 | 約570万円 |
10年~15年 | 約640万円 |
15年~20年 | 約720万円 |
20年~25年 | 約780万円 |
25年~30年 | 約820万円 |
30年~35年 | 約840万円 |
35年以上 | 約830万円 |
※諸手当は経験年数によらず、月額133,924円(令和2年度地方公務員給与実態調査平均諸手当月額の値)として算出
警察官は高卒と大学卒で初任給に差がありますが、採用後は学歴によらず経験年数と階級に応じて年収が上がるため、全体で見ると高卒と大学卒の年収差はほとんどありません。
年収決定のカギとなる階級は、昇任試験によって上がります。一般的に、大学卒の場合は採用後2年、高卒の場合は採用後4年で最初の昇任試験に挑戦できます。
昇任試験には学歴や性別などの条件がなく、実績と努力に応じて挑戦できるため、学歴がなくても、自分の努力次第で年収を増やせるでしょう。
公務員のボーナスは微妙な増減はあるものの、必ず支給されます。「この安心感は何にも代えられなかった」と先日定年で警察官を退官した方がいっていました。
「地域手当」とは通称「都会手当」といわれ、都市部の高い物価水準に合わせて支給されます。警視庁(東京23区)の場合、実に基本給の20%プラスです。
警察官の階級で警視正より上は国家公務員になります。したがって、警視から警視正になる場合、その段階で一度退職金が支給されます。
公務員である警察官は、ボーナスや手当、退職金、福利厚生も充実しています。ここでは、警察官の基本給以外の収入や、福利厚生について解説します。
国家公務員のボーナスは法律で定められており、令和3年のボーナスは標準報酬月額の4.45月分となっています。
地方公務員のボーナスは国家公務員のボーナスを基準に、各自治体が予算に応じて設定するものです。例えば、東京都の警察である警視庁のボーナスは4.55ヵ月、神奈川県警察や福岡県警察は4.45ヵ月となっています。
警察官の退職金は、退職理由により異なり、自己都合の場合は定年退職の場合に比べて退職金が低くなっています。
令和2年度地方公務員給与実態調査によると、平均退職手当金は約1,711万円となっており、退職区分に応じた退職金は以下のとおりです。
警察官には、一般行政職員にも支払われる扶養手当や地域手当など以外にも、捜査等業務手当や交通整理手当、警ら手当、爆発物等処理手当などの特殊勤務手当も支払われます。豊富な手当は警察官の魅力の一つといえるでしょう。
また、警察官は手当の支給割合がほかの職種より多いという特徴を持っています。令和2年度の警察官の平均諸手当月額は133,024円で、給与月額の3割程度を占めており、一般行政職の平均諸手当月額83,867円と比べると、その多さがうかがえます。警察官の年収の高さは手当の多さによるものといって良いでしょう。
警察官の手当の種類や支給額の多さは、大変な仕事の裏返しともいえるもので、これらの業務を行なう強い心身が警察官に求められているといえるでしょう。
警察官は休暇制度や給付金などの福利厚生も充実しています。福利厚生の内容は自治体によって異なりますが、参考として警視庁の福利厚生制度をご紹介します。
参考:令和3年度警視庁採用サイトより
巡査部長で定年退官する人と、警視で定年退官する人の退職金には1千万円くらいの差がつく場合があるそうです。警察官の官舎の家賃は市場の3割程度です。民間人では易々住めないような超都会にも官舎はたくさんあり、通勤は便利だそうです。
しかし、友達や恋人が呼べなかったり、門限があったりとなかなか制限が厳しいので、若い警察官は割とすぐに出てしまうそうです。私の知ってる警察官でも、官舎を使っているのはむしろ家庭を持っている人が多いです。
ここからは、警察官の仕事内容と求められる力について解説していきます。
ひとくちに警察官といっても、交番に勤務する地域警察や、スピード違反や飲酒運転を取り締まる交通警察など、その職種はさまざまです。警察官のおもな職種とその仕事内容を簡単にご紹介します。
地域の安全を守り、ときには危険な仕事もしなければならない警察官には、正義感や協調性、何事にも動じない精神力や、いざというときに力を発揮できる身体能力も必要です。収入の多さだけで続けられる仕事ではないといえるでしょう。
警察官採用試験では教養だけでなく適性や身体能力も問われます。警察官を目指すなら、どうして警察官になりたいのかをしっかりと考えておきましょう。
警察学校卒業後の新人の配置は今でこそ全員交番ですが、一昔前までは女性警察官の交番勤務は珍しく、交通課や生活安全課が主流でした。時代に合わせて配属先も変化しています。
マニアックな話ですが、警察組織の部署の呼び名で、○○警察というのは警視庁だけで、他の道府県警は○○部です。面接試験でそこまで気を使って話をしていた受講生さんは、やっぱり受かりました。
警察官の採用方法は国家公務員と地方公務員で異なり、さらに地方公務員の場合は受験する自治体によって試験内容が異なります。警察官になるなら、まずは採用試験の内容を知っておきましょう
国家公務員として警察庁で働くなら、国家総合職試験か国家一般職試験の合格を目指しましょう。試験に合格したあと、警察庁への官庁訪問で合格すると、採用の内定を受けられます。
また、地方公務員として各都道府県警察で働くなら、各自治体が実施する採用試験を受験しましょう。試験に合格すると「警察官採用候補者名簿」に登録され、試験翌年度以降、順次採用される仕組みです。
ここでは、各都道府県警察の採用試験について詳しく解説していきます。
警察官採用試験は受験資格に応じて、Ⅰ類(大卒程度)、Ⅱ類(短大卒程度)、Ⅲ類(高卒程度)に分かれています。
試験は一次試験と二次試験があり、教養試験や論作文試験、体力試験、身体検査、適性検査などで構成されています。試験の内容は自治体によって異なるため、各自治体の採用情報をチェックするようにしましょう。
一例として、警視庁の試験は以下のようになっています。
参考:警視庁「令和6年度警視庁採用サイト」
また、警察官採用試験はほとんどの自治体で年に複数回実施されるため、スケジュールをずらして複数の自治体を受験することもできます。その場合は、情報収集を早めに行ない、スケジュール管理を徹底しておきましょう。
先述のとおり、採用試験の内容は自治体によって異なりますが、どの自治体でも専門的な知識は求められていないため、試験の難易度はそれほど高くありません。
採用試験の合格倍率は、警視庁の場合、以下の表のようになっており、Ⅰ類の試験においては男性が5~6倍、女性が5~7倍で、年度によって大きく差があります。
確実に合格するためには、採用予定人数や応募者に左右されないよう、余裕をもって合格できるような試験対策が必要となるでしょう。
令和5年度 | 令和4年度 | 令和3年度 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 女性 | 男性 | 女性 | 男性 | 女性 | |
Ⅰ類 | 6.0倍 | 5.7倍 | 6.1倍 | 7.4倍 | 5.7倍 | 6.2倍 |
Ⅲ類 | 8.0倍 | 6.0倍 | 10.3倍 | 6.3倍 | 8.5倍 | 6.5倍 |
また、警察官採用試験には、保有資格や経歴に応じた加点制度もあります。
加点対象となるのは柔道や剣道などのスポーツ歴や、英語や中国語などの語学資格、ITパスポートや情報処理資格などさまざまです。合格する可能性を高めたいなら、これらの資格取得を検討してみても良いでしょう。
なお採用情報は毎年変わる可能性があるので、公式サイトから最新情報を確認するようにしましょう。
一次筆記の「国語試験」は警視庁だけの独特の試験で、漢字の読み書きです。大原ではこちらも専用テキストがあります。警視庁の資格加点は、証書などの「原本の持参」と「コピーの提出」が必要です。警察官の試験は公務員試験の中でも珍しく、年齢ではなく学歴区分(A、Bなど)がほとんどです。
警察官試験で行なわれる色覚検査は、免許取得などの時に行なわれるものよりもかなり厳密です。自身の色覚に異常がないか、事前に調べておくことをおすすめします。
全国展開の大原なら、各都道府県警察の試験情報に合わせて試験対策を立てられます。ここでは、警察官採用試験に強い大原の3つの特徴を解説します。
警察官採用試験合格のカギは、志望先に応じて試験対策することであり、そのための情報収集と分析が欠かせません。
全国展開の大原には、各都道府県の試験情報が蓄積されており、その情報をもとに志望先にあった最適な学習プランを立てられます。
合格のノウハウをもとに作られた大原のオリジナルの教材があれば、試験対策を網羅できるため、テキスト選びに迷うことなく学習に集中できます。
大原のカリキュラムは、受講生が納得できるまで質問に対応する「合格サイクル」を中心に作られています。
講義やテキストだけではなかなか知識が身につかない人でも、大原のカリキュラムにある演習、模試、質問を繰り返せば確実に知識を身につけられるでしょう。
また、大原の講座は、教養試験だけでなく体力試験や適性検査も対策できます。
適性も重視される警察官採用試験では、論作文や面接への対策も重要です。
面接対策では、入退室の基本や服装など試験の基本チェックからはじめ、自己分析や志望動機の整理を行ないます。全国から独自に入手した面接体験記をベースに、志望先に応じたリアルな面接練習で、面接をしたことがない人でも自信がつくでしょう。
論作文対策では、実際に出題された約4,000問を掲載したテキストで、論作文の書き方と論点を学びます。基礎を身につけたあとは、個別の添削指導を繰り返して実力をつけ、本番に挑みましょう。
警察官の試験は択一、論作文、面接の対策バランスが大事です。論作文で最も重要なのは形式です。「規定の字数」を「時間内」に「誤字脱字なく」「丁寧な字で」「適当な段落分け」を行なったうえで書かれていることが大前提です。内容はその次に評価されます。
警察官の多くは地方公務員であり、その年収は所属する自治体によって異なりますが、平均して約700万円となっています。
警察官は仕事の特殊さから、支払われる手当の額は公務員のなかでも高額となっていますが、それだけ大変な職業であるともいえるでしょう。
警察官を目指すなら、就職先の自治体に合わせた採用試験対策が欠かせません。
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