警察官になるには、国家公務員試験か都道府県が実施する警察官採用試験に合格しなければなりません。警察官を目指すなら、まずは採用試験の内容を知って、どのような力が求められているのか、どのような対策が必要なのかを知っておきましょう。
この記事では、警察官採用試験の概要と、採用試験を受けるにあたって注意したいポイントを解説しています。
この記事を参考に、ぜひ警察官への第一歩を踏み出してください。
・氏名:白井雄士
・所属:資格の大原・公務員講座(梅田校)
・指導経歴:受験指導歴6年、おもに大学内講座の講義とクラス管理、人物対策を担当
・教養社会科学や人文科学、一部の専門科目を担当しながら、一年間でおよそ300件の書類添削と、100件以上の面接指導を行ない、一人でも多くの受講生様の目標実現をサポートしています。ぜひお気軽に相談してください!
警察官は、警察庁で働く国家公務員と、都道府県警察で働く地方公務員に分かれています。国家公務員と地方公務員で、採用までの流れが異なるため、まずはその違いを知っておきましょう。
また、今回の記事では警察官の多数を占める都道府県警察の警察官について詳しく解説していきます。
全国の警察官のうち、9割以上が都道府県警察で働く地方公務員です。地方公務員の警察官は、交番勤務やパトロールなどを通して、地域住民の安全・安心な暮らしを守ります。
地方公務員として働くなら、各自治体が実施している警察官採用試験を受験しましょう。試験に合格すると「警察官採用候補者名簿」に名前が載り、試験翌年度の4月以降に順次採用されて「巡査」の階級が与えられます。
採用後はすぐに現場に入らず、まずは警察学校で、警察官に必要とされる基本的な知識や技術、体力を身につけなければなりません。警察学校は全寮制で、大学卒の場合は6ヵ月間、それ以外の場合は10ヵ月間入校します。
警察学校卒業後は、交番勤務となり、その後は経験年数や実績、実力に応じてキャリアアップしていくことになります。
地方公務員の採用試験は、試験を実施する自治体によって採用人数や採用条件、試験内容が若干異なります。まずは就職したい自治体の警察官採用案内や警察署のホームページを確認してみましょう。
警察庁で働く警察官は国家公務員であり、警察組織の中枢を担うため警察官僚やキャリアと呼ばれています。現場で働くことはほとんどなく、警察組織全体の政策や企画立案、各機関との調整といった役割を担います。
なお、警察庁と似た言葉に警視庁というものがありますが、警視庁は東京都警察を指す言葉であり、警視庁の警察官は国家公務員ではなく地方公務員です。
警察庁で働きたいなら、まずは国家公務員試験(国家一般職試験または国家総合職試験)合格を目指しましょう。
国家公務員試験に合格したのち、警察庁へ官庁訪問を行ない、そこで合格すれば警察官として内定を受けられます。
警察庁の採用試験合格者は毎年30人前後と、非常に難易度の高い狭き門となっており、合格するためにはしっかりと時間をかけて試験対策する必要があります。
都道府県警察官は、地域の安全を一番現場で守る仕事であり、直接住民の方の安心安全を守れる仕事です。犯人を逮捕したり、自殺しようとする人間を説得して自殺を思いとどまらせたりする業務。「住民のヒーロー」として、警察官でしか成し得ないような業務や経験がたくさんあります!
また、国家公務員で警察庁に配属されれば、日本全体の治安維持に携わることとなり、よりスケールの大きい仕事に携わることとなります。
例えば、道路交通法に基づく違反運転行為の周知などは代表的なものですね。
ここからは、多くの人が志望する、都道府県の警察官採用試験について、試験区分や受験資格、難易度を解説していきます。
警察採用試験は学歴によって、大卒のⅠ類、短大卒のⅡ類、高卒のⅢ類に分かれています(自治体によっては大卒をA区分、大卒以外をB区分としている場合もあります)。
受験資格は学歴や年齢、身体要件からなり、自治体によって条件が異なります。受験資格をクリアしていなければ試験を受けられないため、自分が受験資格に当てはまるか必ずチェックしておきましょう。
一例として、警視庁の令和3年度採用試験受験資格をご紹介します。
年齢と学力
Ⅰ類(大学卒業程度) | 昭和61年4月2日以降に生まれた人で大学(学校教育法による大学(短期大学を除く)を卒業または令和4年3月までに卒業見込みの人 |
---|---|
昭和61年4月2日から平成12年4月1日までに生まれた人で大学卒業程度の学力を有する人 | |
Ⅲ類(高校卒業程度) | 昭和61年4月2日以降に生まれた人で高校(学校教育法による高等学校)を卒業または令和4年3月までに卒業見込みの人 |
昭和61年4月2日から平成16年4月1日までに生まれた人で高校卒業程度の学力を有する人 |
身体要件
項目 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
身長 | おおむね160cm以上であること | おおむね154cm以上であること |
体重 | おおむね48kg以上であること | おおむね45kg以上であること |
視力 | 裸眼視力が両眼とも0.6以上、または矯正視力が両眼とも1.0以上であること | |
色覚 | 警察官としての職務執行に支障がないこと | |
聴力 | 警察官としての職務執行に支障がないこと | |
疾患 | 警察官としての職務執行上、支障のある疾患がないこと | |
その他の運動機能 | 警察官としての職務執行に支障がないこと | |
次のいずれかに該当する人は、受験できません。
・日本国籍を有しない人 ・禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでまたはその執行を受けることがなくなるまでの人 ・東京都職員として懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から2年を経過しない人 ・日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法またはその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党そのほかの団体を結成し、またはこれに加入した人 ・平成11年改正前の民法の規定による準禁治産の宣告を受けている人(心神耗弱を原因とするもの以外) |
引用:警視庁「令和3年度警視庁採用サイト」
警察官採用試験は年に複数回実施されており、自治体によって実施する回数や時期が異なるため、複数の自治体を併願して受験できます。
自治体によっては男性と女性で試験日程を別にしていたり、募集していない区分があったりするため注意が必要です。
警視庁の令和3年度試験日程を見てみると、試験は4月、9月、1月の計3回実施され、それぞれの一次試験の1ヵ月ほど前に1週間ほどの申込期間が設けられています。男性と女性、Ⅰ類とⅢ類で受験日が異なり、Ⅱ類(短大卒程度)の募集はありません。
希望する自治体の試験日を逃さないように、試験の詳しいスケジュールや注意事項は、各都道府県警察の採用案内や公式ホームページなどで早めに確認しておきましょう。
警視庁 令和3年度採用試験スケジュール
試験回・種別 | 第1次試験 | 第2次試験 | 申込受付期間 | ||
---|---|---|---|---|---|
男性 | 第1回 | Ⅰ類 | 4月11日 | 5月8日、9日、15日、16日 | 3月5日~12日 |
第2回 | Ⅰ類 | 9月20日 | 10月9日、10日 | 7月26日~8月2日 | |
Ⅲ類 | 9月19日 | ||||
第3回 | Ⅰ類 | 1月9日 | 1月29日 | 11月26日~12月6日 | |
Ⅲ類 | |||||
女性 | 第1回 | Ⅰ類 | 4月11日 | 5月22日 | 3月5日~12日 |
第2回 | Ⅰ類 | 9月20日 | 10月16日 | 7月26日~8月2日 | |
Ⅲ類 | 9月19日 | ||||
第3回 | Ⅰ類 | 1月9日 | 1月30日 | 11月26日~12月6日 | |
Ⅲ類 |
警察官採用試験では専門的な知識が必要とされないため、それほど難易度は高くありません。一次試験で実施される教養試験では、一般的な知識が問われるだけなので、志望先に合わせた対策をとすると良いでしょう。
ただし、試験自体はそれほど難しくないとはいえ、自治体の採用予定人数と応募者数によっては、合格の倍率がとても高くなる年もあります。
例えば、警視庁採用試験の過去3年間の採用倍率は以下のとおりとなっており、男性4~12倍、女性5~15倍と年度によってかなりの差があります。
令和2年度 | 令和元年度 | 平成30年度 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 女性 | 男性 | 女性 | 男性 | 女性 | |
Ⅰ類 | 4.6倍 | 5.5倍 | 4.9倍 | 9.0倍 | 5.9倍 | 8.6倍 |
Ⅱ類 | 募集なし | 募集なし | 募集なし | |||
Ⅲ類 | 7.2倍 | 6.5倍 | 12.3倍 | 15.6倍 | 6.6倍 | 9.5倍 |
先述のとおり、警察官採用試験はいくつかの自治体を併願できるため、合格する可能性を少しでも増やすためにも、複数の自治体を併願しておくと良いでしょう。
警察官試験は春と秋に大きなシーズンがあり、兵庫県警などの一部の警察官試験では冬試験まで含めて年に3回の試験の実施がされることもあります。
警察官としての進路を実現するためには気になる警察官試験をできるだけ「併願」することが大切です。
併願することで、筆記試験の傾向や面接での相性などで、自身にマッチしたところをより見つけることができます。
併願する際も、基礎となる筆記試験対策や面接試験対策は大きく変わりません!
警察官採用試験は一次試験と二次試験に分かれています。試験内容は自治体によって異なりますが、おおむね筆記試験や身体検査、論作文検査、体力検査などが行なわれます。
一次試験はおもに筆記試験(教養試験、論作文試験)、身体検査、資格経歴等の評定、適性検査からなります。
教養試験では、文章理解、判断推理、数的処理などの一般的な知識が問われます。論作文試験では特定の課題に対して文章を作成し、文章の構成力や表現力などを確認します。
各自治体が定めた身長、体重などの基準を満たしているか検査します。
柔道・剣道の段位や、スポーツ大会の出場歴、語学の資格などを、自治体が独自に設けた基準で評価して加点します。
警察官の適性があるかを、マークシート方式などにより検査します。
二次試験では面接試験、体力試験などが行なわれます。自治体によっては身体検査や適性検査を二次試験で行なう場合もあります。
警察官として適性があるかを面接によって判断します。志望動機を整理して自分をしっかりとアピールしましょう。個人面接の場合が多いですが、集団面接や集団討論を行なう自治体もあります。
警察官に必要な基本的な身体能力があるかを検査します。
※体力試験については次の項で詳しく解説します。
警察官採用試験では、警察官が仕事をするにあたって最低限必要となる体力や筋力があるかを検査するため、体力試験も行なわれます。
試験の種目は腕立て伏せ、バーピーテスト、上体起こし、反復横とびなどで、自治体によって内容が異なります。種目と合格基準を公表している自治体もあり、一例として大阪府警察と愛知県警察の体力試験の種目と合格基準を紹介します。
令和3年度大阪府警察 警察官採用試験 体力検査
検査項目 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
バーピーテスト | 2分間完全に実施できること | 1分20秒間完全に実施できること |
上体起こし | 17回以上 | 7回以上 |
腕立て伏せ | 10回以上 | 7回以上 |
反復横とび | 20秒間に38回以上 | 20秒間に32回以上 |
握力 | 平均35kg以上 両手とも30kg以上 |
平均20kg以上 両手とも20kg以上 |
引用:大阪府警察「令和3年度大阪府警察官(巡査)採用選考」
令和3年度愛知県警察 警察官採用試験 体力検査
検査項目 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20mシャトルラン | 32回以上 | 14回以上 |
腕立て伏せ | 12回以上 | 4回以上 |
握力 | 左右平均32kg以上 | 左右平均19kg以上 |
立ち幅とび | 180cm以上 | 113cm以上 |
上体起こし | 30秒間で18回以上 | 30秒間で12回以上 |
反復横とび | 20秒間で41回以上 | 20秒間で36回以上 |
引用:愛知県警察本部「令和3年度受験案内」
教養試験は確かに難しく見えるかもしれませんが、一般知識はこれまでの中学や高校での学習内容の復習の要素が強く、また文章理解や数的処理についてはパターン化された問題も多くあるため、対策内容は十分に試験で活用されていきます。
また、体力については飛び抜けた能力を求めるものではなく、今後の警察学校などについていけるかの「基礎体力」を図るものですので、運動部経験がない方でも十分対策可能です。
実際、毎日柔軟と少々のプランクしかしないアラサーの私が最近試しにやってみても、評定のちょうど平均値を出すことができました。
また面接でも輝かしい実績は不要です。それよりもしっかりと元気よく、「なぜ警察官になりたいのか」を伝えてくることを意識しましょう!
ここでは、採用試験を受けるにあたって注意したい3つのポイントを解説します。
警察官採用試験は自治体によって受験資格や試験の内容が異なるため、採用情報のチェックが欠かせません。採用試験情報のチェックポイントは、試験日、受験資格、試験内容、募集人数です。
特に試験を受けられるかどうかを確認するため、受験資格は確実にチェックしておくようにしましょう。また、募集人数の増減によっては合格倍率が大きく変わるため、過去の試験の合格倍率も確認することも必要です。
気になる自治体があれば、早めに試験情報をリストアップして、いつどの自治体を受験するのか、合格するためにどのような試験対策が必要なのかを考えておくと良いでしょう。
採用試験の試験経歴等の評定では、各自治体が指定する資格や経歴を持っていると、試験の点数に加点されます。
対象となる資格や経歴は自治体によってさまざまです。おもに剣道や柔道などの段位、スポーツ大会の出場歴、実用英語検定(英検)や中国語検定などの語学系資格、ITパスポートなどの情報処理系資格などが加点対象となります。
加点となる資格を持っていなくても、そのほかの試験の成績が良ければ合格できますが、より合格に近づくために、加点対象となる資格取得を検討しましょう。
警察官採用試験は多くの自治体で年に複数回実施されます。
早い自治体は3月には試験の申し込み受け付けを始め、4月には最初の1次試験を実施するため、試験情報を逃さないように早めに情報収集を始めましょう。
試験のスケジュールがわかれば、4月は警視庁の採用試験、5月は神奈川県警察の採用試験というふうに、複数の自治体を併願する計画も立てられます。どうしても行きたい自治体があれば、合格するまで何度も受験しても良いでしょう。
また、受験地から離れた場所に住む人でも受験しやすいように、採用試験を複数の自治体が共同で行なう場合もあります(男性警察官)。例えば、警視庁では東京都以外にも1道18県で採用試験を実施しています。
複数の自治体を受験する場合は、いくつもスケジュールを確認しなければならないため、スケジュール管理を徹底するようにしましょう。
大阪府警や警視庁、兵庫県警などの大規模な警察官試験では、他の警察官試験に自身の試験を相乗りさせる、いわゆる「共同試験」の実施もあります。
この共同試験を使えば、さらに試験の受験チャンスを広げることができます。このような情報はHPにて確認することができますので、定期的なHPチェックがおすすめです。
また、HPには、警察が作った説明会動画や職場体験の案内などがあります。ぜひ視聴していただければ、職務内容を理解してみなさんのモチベーションをアップできるでしょう!
警察官を目指すなら、オリジナルの教材とカリキュラムで、志望先に適した試験対策ができる大原がおすすめです。
ここでは、警察官採用試験に強い大原の4つの特徴を解説します。
大原は警察官採用試験を含めた公務員試験で抜群の合格実績を持っており、2020年度大原受講生警察官採用試験最終合格者のべ人数は327人にのぼります。
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圧倒的な学習時間とカリキュラムで、試験一発合格を目指す集中資格習得コースでは、受講生一人ひとりに担当がついて指導します。
受講生は担当者と定期的な個別面談を行ない、習熟度の確認や学習方法、それぞれの受験計画に合わせた受験先の選び方などの相談ができます。
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大原で使用する教材はすべてオリジナルで、プロの講師陣が最新の試験情報を収集・分析して作成しています。
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独学の場合、どのテキストや問題集を使えば良いかわからない、試験傾向がつかめずどのような対策をしたらいいかわからない、といった課題に多くの人が直面するでしょう。
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また、オプション講座のWeb講義(IOT50)を利用すれば、教材だけでは理解できない箇所を、動画形式でも学習できます。
先述のように、どの警察官試験においても基礎的な対策は同じです。資格の大原では、テキストや問題集だけでなく、模擬試験でも試験の重要出題ポイントをみなさんにお伝えしております。
警察官試験に必要な学力は、資格の大原の受講できっちりと養っていただけます。不安な気持ちは十分に理解できますが、ぜひそのままで構いませんので、私たちのカリキュラムについてきてください。そうすれば着実に試験通過に足る学力がついてきます!
警察官は国家公務員と地方公務員に分かれており、国家公務員として働くなら国家公務員試験を、地方公務員として働くなら各都道府県警察の警察官採用試験を受験しましょう。
警察官採用試験では試験内容や日程、合格倍率が自治体によって異なるため、早めに情報収集することが大切です。複数の自治体を併願したり、自治体に合わせた対策を行なったりして、試験合格を目指しましょう。
警察官採用試験に強い大原なら、全国から集められた情報をもとに、志望先に最適な試験対策ができます。
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