行政書士は、契約や許認可の手続きに関する書類を取り扱える職種です。行政書士として活動するためには、国家資格に合格しなければなりません。
実際に行政書士として活動したら、どのくらいの年収を得られるのかが気になる方もいるのではないでしょうか。
今回は、行政書士の年収について詳しく解説します。働き方別の年収目安や、年収を上げるコツも解説しているので、行政書士として活動することに興味がある方はぜひ最後までご覧ください。
みなさん、こんにちは。資格の大原 行政書士講座の持田です。行政書士は、さまざまな分野にチャレンジでき、困っている方の役に立つこともできる魅力的な国家資格です。取得して良かったと感じる方も多いでしょう。
行政書士の平均年収はどのくらいなのでしょうか。弁護士や司法書士など、他の士業資格の年収もまとめたので、併せて参考にしてください。
行政書士の平均年収は、約400~600万円といわれています。しかし、これはあくまで平均値で、実際は個人によってかなり差があります。
日本行政書士連合会のアンケートでは、以下のような調査結果が出ました。このデータから平均年収を考えるためのヒントが得られます。
年間売上高 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
500万円未満 | 3,415 | 78.7% |
1,000万円未満 | 492 | 11.3% |
2,000万円未満 | 230 | 5.3% |
3,000万円未満 | 80 | 1.8% |
4,000万円未満 | 35 | 0.8% |
5,000万円未満 | 23 | 0.5% |
1億円未満 | 36 | 0.8% |
1億円以上 | 11 | 0.3% |
未回答 | 16 | 0.4% |
合計 | 4,338 | 100.0% |
引用:日本行政書士連合会「月刊日本行政 2018年10月号」
データからは、8割が年間売上高500万円未満であることが分かります。しかし、少数ではありますが、売上高5,000万円以上の方がいるのも事実です。
現状は年収500万円未満の方が多数とはいえ、1,000万円以上稼いでいる方も全体の約2割います。頑張り次第で、高収入も目指せるでしょう。
行政書士が取り扱い可能な書類は、数多くあります。案件や業務も幅広く、報酬もそれぞれ異なるので、年収は個人差が多いのが現状です。
どのような案件を受けるか、どのような働き方を選択するかによって年収は変動するでしょう。高収入を得たい場合は、すでに高収入の行政書士の方を見つけて話を聞くのがおすすめです。年収アップのコツや、顧客獲得の方法について学べるでしょう。
行政書士以外の士業系の年収が気になる方も多いと思います。行政書士と大きく違いはあるのでしょうか。
職種 | 平均年収 |
---|---|
弁護士 | 728万5,000円 |
税理士 | 683万5,000円 |
司法書士 | 878万7,000円 |
いずれも、行政書士に比べると難易度の高い職種のため、平均年収も高い傾向にあるようです。しかし、行政書士同様にあくまで平均年収なので、受ける案件や所属する事務所などにより、個人差が出ると考えられるでしょう。
どれだけ稼げるかは、個人個人の努力次第です。ご自身の得意分野を伸ばし、顧客を獲得しましょう!
さまざまな働き方を選択できるのが、行政書士の魅力の一つです。働き方により年収も変動します。
1つ目は、事務所に勤務する働き方です。雇用形態や経験により年収は異なります。実績を積めば500万円以上の年収も狙うことも可能です。
最初は決して高い年収とはいえませんが、顧客がついていなくても安定した給料をもらえるので、行政書士になりたてでも安心して働けます。独立を考えていても、顧客も実績もゼロの場合、初めは事務所などに勤務して経験を積むのがおすすめです。
2つ目は、現在の仕事を辞めずに副業として活動する方法です。行政書士として働きたいけれど、専業は不安という方も少なくないでしょう。顧客がいないうちから独立して活動するのはリスクがあるうえ、本当に自分に合う仕事か見極めたい場合もあるかもしれません。
そのような場合は今の仕事と並行し、副業として活動する方法がおすすめです。本業の仕事があるため、大きく稼ぐことは難しくなりますが、リスクを抑えたうえで行政書士として活動できます。
ちなみに行政書士として活動するには、日本行政書士連合会の名簿に行政書士として登録し、登録料を支払う必要があります。副業でも必ず支払わなければならないので、注意してください。
3つ目は、独立開業して活動する場合です。将来的に高い年収を得られる可能性がありますが、開業当初は顧客や受けられる案件があまりないことも多く、安定するまでは年収200万円程度となることも考えられます。
しかし、経験を積んで顧客や高単価の案件を増やしていけば、年収1,000万円以上も狙えるでしょう。複数の企業と顧問契約を結ぶことも、事業安定の一つの方法です。
また、自宅で子育てをしながら開業する方もいます。自分の生活基盤や、ペースに合わせて活動しやすいことも独立開業の魅力といえます。
行政書士として活躍できるステージはさまざまです。多くの選択肢があるのもこの資格の魅力です。
行政書士ができる業務は多岐にわたりますが、おもな業務は大きく分けて3つあります。それぞれの業務内容と、目安となる報酬額について解説します。
行政書士が扱える書類は非常に多く、知識のない方が完璧に作成するには難易度の高い書類がほとんどです。
行政書士は、書類作成について悩んでいる方から相談を受けられますが、行政書士の独占業務以外の相談は受けられません。行政書士の独占業務とは、大きく分けて以下の3つです。
相談料は1時間あたり3,000円から5,000円ほどが相場のようですが、初回は無料で受けているところもあります。1件あたりの報酬はそれほど高くないので、相談料だけで大きく稼ぐことは難しいでしょう。
行政書士は官公署に提出する書類の作成と、その書類を代理で提出することが可能です。官公署とは、警察や各省庁、都道府県庁や市役所などを指します。
書類は許認可に関するものが多く、1万種類を超えるといわれています。報酬は扱う書類によって差があり、複雑で難易度の高いものは1件10万円を超えるものもあります。
仮に、1件10万円の案件を中心に受ければ、月5件の受注で50万円の売上となり、毎月継続できれば年収600万円以上を狙うこともできるでしょう。
売買、賃貸借、請負などの契約に関する書類の作成も、行政書士が行なえる業務です。契約書の作成は、独占業務の一つである「権利義務に関する書類」に該当します。
この書類に関しても決められた報酬額はなく、事務所によりさまざまです。1万円未満で受ける事務所もあれば、8万円以上で受けているところもありますが、1件あたり1万円から4万円であることが多いようです。
行政書士になったらどのような業務をするか、思い浮かべながら試験勉強に臨むのもモチベーション維持につながります。
行政書士は案件の報酬額を自由に決められますが、実績や知名度のない方が単価を上げても、顧客の獲得は難しいでしょう。
ここでは、年収を上げるためのコツを3つご紹介します。
行政書士の業務は幅広く多岐にわたり、難易度の高い案件ほど報酬が高い傾向にあります。
難易度が高い専門分野であれば、受けられる行政書士の数は少なくライバルが減るため、その分野を狙うことで稼げるチャンスが増えるでしょう。
難易度が高いと、初めは苦労の連続かもしれません。しかし、専門分野にフォーカスすればターゲットも絞れるので、集客もしやすくなると考えられます。
どれほど仕事ができたとしても、存在を知ってもらえなければ案件は受注できません。
そこでおすすめなのが、インターネットの活用です。ホームページやSNSを利用して、どのような業務を行なっているのか、依頼することのメリットは何かなどを発信しましょう。
現代では、悩みの解決策をインターネットで調べる方が多くいるため、そういった方を意識した情報を発信すると、存在をアピールできます。
行政書士だけでも高収入を目指せますが、司法書士などの資格を組み合わせて活動すれば、さらなる年収アップを狙えます。
例えば、会社を作りたいと考えるクライアントがいたとしましょう。会社を作る際には手続きがいくつもあり、行政書士しか扱えないものと司法書士しか扱えないものがあります。
通常、クライアントは各手続きをそれぞれのプロに依頼しますが、両方の資格を持つ人であれば、すべての手続きを一括で行なえます。そうなると、その分獲得できる報酬が増え、クライアントとしても複数人に頼む手間が省けるため、お互いにとって大きなメリットだといえるでしょう。
このように資格を組み合わせることで、仕事の幅もターゲットの層も広げることが可能です。知識も増えるので、顧客からの信頼もアップするでしょう。
他資格との組み合わせを考えた場合、社会保険労務士の資格もお持ちの方が多いです。行政書士試験の合格は、社会保険労務士試験の受験資格にもなっていますので、次の資格として狙ってみるのもよいでしょう。
行政書士は国家資格が必要な職種のため、試験に合格しなければ活動ができません。ここで、行政書士試験の詳細と合格率について押さえておきましょう。
行政書士試験の過去5年間の合格率は、以下のとおりです。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
令和2年度 | 41,681 | 4,470 | 10.7% |
令和元年度 | 39,821 | 4,571 | 11.5% |
平成30年度 | 39,105 | 4,968 | 12.7% |
平成29年度 | 40,449 | 6,360 | 15.7% |
平成28年度 | 41,053 | 4,084 | 10.0% |
引用:一般社団法人行政書士試験研究センター「最近10年間における行政書士試験結果の推移」
合格率が15%を超えた年度もありますが、10%~12%前後で推移しています。決して簡単な試験ではありませんが、出題範囲をきちんと把握して対策を練れば、十分合格を目指せるでしょう。
記事の前半でも少し触れましたが、行政書士試験に合格したら行政書士連合会に入会し、行政書士として登録が必要です。費用として登録料と入会金が必要で、都道府県により異なりますが、その他の費用を合わせると20万円~30万円程度かかります。
行政書士試験の出題範囲は、法令科目と一般知識科目に大きく分けられます。それぞれ、含まれる科目や問題数、配点は以下のとおりです。
<法令科目>
科目 | 問題数 | 配点 |
---|---|---|
基礎法学 | 2問 | 8点 |
憲法 | 6問 | 28点 |
行政法 | 22問 | 112点 |
民法 | 11問 | 76点 |
商法・会社法 | 5問 | 20点 |
合計 | 46問 | 244点 |
<一般知識科目>
科目 | 問題数 | 配点 |
---|---|---|
政治・経済・社会 | 7~8問 | 28~32点 |
情報通信・個人情報保護 | 3~4問 | 12~16点 |
文章理解 | 3問 | 12点 |
合計 | 14問 | 56点 |
なお、行政書士試験に合格するには、以下の3つの条件をすべて満たさなければなりません。
1. 法令科目の分野で122点以上
2. 一般知識科目で24点以上
3. 300点満点中180点以上
行政書士試験の出題範囲は非常に広く、バランス良く点数を取らなければならないため、計画的な学習が必要でしょう。
書店には、行政書士試験の問題集やテキストが多数そろっています。それらを利用して独学で合格する方ももちろんいますが、どこから学習すれば良いのか分からない方も多いでしょう。
やみくもに学習して、結果的に非効率になってしまうことも考えられます。そこで、おすすめしたいのがスクールです。
スクールなら、重要なポイントに絞って講義が行なわれるうえに、テキストも最新情報を取り入れられていることが多いので、効率良く学習できるでしょう。
分からない部分もすぐに質問できるので、苦手を解消して進められるのもメリットの一つです。
スクールの講義を受講することは、非常に効率が良いです。例えば、ある事柄について頻出項目かを知る場合、独学だと過去20年分ほどの本試験問題をすべてご自身で調べる必要があるところ、講義だと講師の「ここはよく出るのでお覚えておきましょう」の一言を聞くだけで済みます。
大原は短期間で合格を目指す方のために、万全のサポートをご用意しています。合格者も多数輩出しており、平成24年から令和2年における行政書士の累計合格実績は1,244名となっています。
合格者を多数輩出できる理由の一つが、テキストです。合格ノウハウを知り尽くした講師陣が試験に合わせて毎年改定しており、試験傾向を徹底分析しています。
また、内容をより深く理解しやすいように、具体例やイラストを豊富に取り入れています。法改正にも素早く対応しており、最新情報をしっかりと詰め込んだテキストになっているといえるでしょう。
受講生のフォロー体制も万全です。大原では講義のあとはもちろん、メールでの質問も対応しています。自宅学習で分からないことがあっても、メールで質問することで苦手を残すことなく学習を進められるでしょう。
また、同じ講義を何度も受けられるため、苦手分野を納得がいくまで学べます。Web講義は24時間視聴できるので復習がしやすく、時間の都合がつかずに欠席することがあっても安心です。
大原では、一問一答式で解答できるアプリもご用意しています。ダウンロードすればオフラインでも利用できるので、時間も場所も問わず学習可能です。
タイムアタック機能や毎回違う順番で出題されるシャッフル機能など、機能も充実しています。ちょっとしたスキマ時間に学習できるため、効率的に得点アップが狙えるでしょう。
法律の学習は流れが大事なので、全講義順番に受講することがポイントです。大原では、教室受講の方でも Web講義が標準装備されているので、万が一教室で受講できないことがあっても心配いりません。
行政書士の年収は個人によって差が大きく、年収500万円未満の方も多くいますが、年収1,000万円以上稼ぐ方もいるのが現状です。
自分の得意分野を作り、受注案件をコツコツと増やしていけば、収入をアップさせられる可能性は十分あります。
大原では、行政書士を目指す方のためのサポート体制が整っています。内容が充実したテキストやスキマ時間の学習に便利なアプリなどがあるので、ぜひご活用ください。
大原の講師が徹底解説!
資格の講座以外の学習スタイル
大原学園グループでは、この他にも資格を取得できる学習スタイルをご用意しています。