日商簿記3級合格の近道は過去問?
効果的な学習方法を解説

日商簿記検定は、転職や独立に有利な資格の一つです。実際に受験を考えている方も多いのではないでしょうか。

しかし、いざ受験しようと思っても、知識がゼロの場合はどこから対策をとっていいかわからないと思います。

この記事では、日商簿記3級の難易度や合格率、試験の出題傾向と対応策について詳しく解説します。日商簿記3級を受験しようと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

【長畑講師の自己紹介】

こんにちは。資格の大原 簿記講座の長畑と申します。簿記の指導歴10年以上の私が皆様をナビゲートいたします。1人でも多くの方に簿記の魅力がお伝えできれば幸いです!

日商簿記3級は難しい?試験レベルと勉強時間の目安を解説

日商簿記3級の試験レベルはどのくらいなのでしょうか。ここでは、過去の全国平均合格率や、目安となる勉強時間に加え、試験について解説します。

日商簿記3級の試験レベルと全国平均合格率

2025年4月現在、簿記3級は「小規模な株式会社で経理実務を行なうことができるレベル」となっています。

出題範囲は商業簿記の基本的な知識なので、計画的に勉強すれば短期間でも十分合格が可能です。過去6回の全国合格率は以下のようになっています。

実受験者数 合格者数 合格率
170回 18,935名 8,024名 42.4%
169回 21,026名 6,041名 28.7%
168回 19,588名 5,785名 29.5%
167回 20,927名 8,520名 40.7%
166回 23,977名 8,706名 36.3%
165回 25,727名 8,653名 33.6%

引用簿記 3級受験者データ

日商簿記3級は、比較的合格しやすい試験ではあり、毎年30%から40%の方が合格しています。

日商簿記3級試験のコンセプト

日本商工会議所より、試験のコンセプトが以下のように公表されております。

【簿記検定の4つのコンセプト】

1.日々の学習の成果、到達度を測る
本検定試験は学習の成果・到達度を測る試験であり、日々の学習の成果が試験結果に反映される出題内容としています。
2.スピードと正確性を求める
ビジネスの現場では時間管理は不可欠です。そのため本試験では、スピードと正確性を求める出題内容としています。特に、会計処理で必ず必要な仕訳については、速く確実に行うことを重要視しています。
3.試験範囲のすべての学習を求める
試験対策(例えば、過去問だけに頼った学習など)にとどまらない真の簿記学習を奨励します。したがって試験範囲すべての理解度を問うことにし、出題範囲から標準的な問題をランダムに出題しています。ヤマを張った学習では対応できませんので、ご注意ください。
4.1級まで継続した学習を奨励する
初級から1級までステップ・バイ・ステップで上位級をめざせる出題内容としています。

引用 2021年度からの新たな日商簿記検定試験のコンセプトなどについて

日商簿記3級の合格に必要な勉強時間は約100時間

日商簿記3級に合格するために必要な勉強時間は約100時間といわれています。個人差はありますが、1日に4時間から6時間程度の勉強時間が確保できれば、最短1ヵ月で合格が可能です。実際には1日2時間から3時間程度のペースで進めながら試験に臨む方が多いようです。

仕事などで平日は勉強時間がとれない方もいると思います。そのようなときは、土日を利用して集中的に勉強時間をとるなど工夫しましょう。無理せず自分のペースで勉強を進めていくことが大切です。

3・2級は「ネット試験」で随時受験が可能

日商簿記3級と2級については、インターネットでの受験が可能です。本試験では、インターネット上で試験実施から合格証発行ができるようになり、合否もその場ですぐに知ることができます。

ネット試験は、自宅での受験ではなく、商工会議所が指定認定した会場で受験することになります。これまでの統一試験方式(ペーパーテスト)も残るので、どちらの方式で受験するか選択が可能です。

ネット試験の試験問題は、データベースからランダムに抽出される仕組みとなります。これにより受験者ごとに出題される問題が異なります。統一試験方式(ペーパーテスト)で出題される問題も同様に、データベースから抽出されます。そのため、3級と2級の試験問題は終了後も公表されません。

資格の大原 簿記3級講座HPを見る

最短1ヵ月で合格を目指せる! 新感覚のWeb通信「パススル 簿記」はコチラ

日商簿記3級の出題傾向は?

日商簿記3級は決して難しい試験ではありません。出題傾向を知り、繰り返し問題に取り組めば合格は十分可能です。

試験の出題傾向
第1問 仕訳問題15問(45点)
第2問 個別問題2問(20点)
補助簿・勘定・決算仕訳・会計用語記入など
第3問 決算書類作成問題(35点)
精算表・財務諸表など

第1問は仕訳問題

第1問では仕訳問題が15問出題されます。すべての学習範囲から満遍なく出題され、試験のコンセプトである「試験範囲のすべての学習を求める」は仕訳問題で具現化されています。

第2問は個別問題

特定の項目について深い理解を試すような様々な形式の問題が出題されます。最も対策が立てづらい設問といえます。

第3問は決算書類作成問題

決算整理仕訳と集計作業を総合的に問う問題が出題されます。財務諸表の作成問題の出題頻度が高く、次いで精算表の作成問題が出題されています。

合格のためにまずトレーニングをすべきは、第1問と第3問となります。第1問と第3問は基本に忠実で、かつ配点も合計80点と高いため、この2問だけで合格点(70点)を獲得することも可能です。

【長畑講師ならではのポイント】

第1問と第3問を攻略することが、合格へのカギです!そのために必要となるのが、「仕訳」を行なう力です。これからはじめて簿記を学習しようという方には、聞き馴染みのない用語かと思いますが、「仕訳」という作業について、わかりやすく説明されている書籍やスクールを利用することをおすすめします!

日商簿記3級に合格するために効果的な学習方法

最新の教材で学習する

大前提として、最新の教材で学習することが必要です。また、簿記は、出題範囲が頻繁に変わる傾向があります。試験の出題範囲は必ず最新の情報をチェックし、勉強範囲に漏れがないかを十分に確認しながら学習を進めましょう。

問題集は何度も繰り返し解く

問題集は1度だけではなく、何度も繰り返し解くようにしましょう。問題集を解くことにより、自分の苦手な部分が見えてくるはずです。そのままなんとなく答えを見て理解した気になっては、同じことの繰り返しになる可能性が高くなります。

間違えた部分は一度参考書などに戻り、どうしてそうなるのかを確認しましょう。その後、同じ問題に再度挑戦します。そうすることにより、苦手だった部分の理解が深まるでしょう。

大切なことは、類似した問題に繰り返しつまずかないことです。同じ問題だからと答えを暗記するのではなく、解き方を理解することを意識しながら取り組むようにしましょう。

参考書で勉強したらすぐ解く

問題を解く力を身につけるにはインプットだけでは足りません。アウトプットが重要になります。

参考書で勉強したら、すぐに問題集で実際の問題を解いてみましょう。そうすることにより、内容が理解できているかを確認できます。

問題集はインプットした知識をアウトプットするために最適なツールです。自分がどの分野が苦手なのか、知識が足りないのかを確認することもできるので、問題集を活用してどんどんアウトプットしていきましょう。

また、問題集に加えて最新の出題形式に対応している本試験仕様の問題を掲載した問題集も採り入れるとよいでしょう。新試験は「スピードと正確性」を要求するため、ボリュームは多めに作られています。本試験仕様の問題を、本番を想定した時間配分で解くトレーニングが合格には欠かせません。

【長畑講師ならではのポイント】

簿記は、教科書に書いてあることを、すべて暗記できれば合格できるような試験ではありません。問題集に収録されている問題を、すべて制限時間以内で解答できるようになれば合格できる試験です。したがって、「教科書を読む時間」<「問題集を解く時間」というバランスで学習するようにしましょう!

大原講師陣が過去問仕様の問題を解説!

【定番問題】給料の支給

問題

従業員へ当月分の給料¥800,000 の支払いにあたり、従業員負担の社会保険料¥75,000 と源泉徴収所得税¥56,000を差引いた残額を当社の普通預金口座より各従業員の指定口座へ振り込んだ。

解答

(給料)
800,000
(社会保険料預り金)
75,000
(所得税預り金)
56,000
(普通預金)
669,000

ポイント

①給料を支払った、②社会保険料を預かった、③源泉所得税を預かった、④普通預金口座より振り込んだ、の4つの要素が問題文に隠れていることを読み取りましょう。

  • 給料を支払った
    給料は費用のグループであるため、借方に仕訳します。
  • 社会保険料を預かった、③源泉所得税を預かった
    社会保険料と源泉所得税の預り金は負債のグループであるため、貸方に仕訳します。預かった社会保険料等は、後日に納付する「義務」があるため負債であると覚えましょう。
  • 普通預金口座より振り込んだ
    普通預金は資産のグループであるため、その減少取引として貸方に仕訳します。

【定番問題】証ひょうから仕訳

問題

出張旅費を自費で立替払いしている従業員が出張から帰社したため、代金を現金で手渡した。なお、出張旅費に関する領収書は次のとおりである。

解答

(旅費交通費)
18,900
(現金)
18,900

ポイント

領収書の但し書きに「旅客運賃として」と記載されている点に注目しましょう。ここから、仕訳の借方科目は旅費交通費であることが判明します。また、代金は現金で手渡ししていることから、貸方科目は現金であることがわかります。「自費で立替払いしている~」という文章もありますが、これは仕訳に関係ありません。あくまでも簿記は「会社の立場」で仕訳をします。従業員自身に関する部分は仕訳をしませんので、注意しましょう。

【難問】貸倒れ

問題

得意先が倒産し、売掛金¥74,000が回収不能となった。商品注文時に受取っていた¥14,000の手付金と相殺するとともに、残額は貸倒れとして処理する。なお、残額のうち¥20,000 は当期に販売した商品にかかる売掛金であり、貸倒引当金勘定の残高は¥45,000であった。

解答

(前受金)
14,000
(貸倒損失)
20,000
(貸倒引当金)
40,000
(売掛金)
74,000

ポイント

①売掛金が回収不能(無くなった)、②前受金と相殺した、③当期発生の売掛金が含まれている、④貸倒引当金が前期末に設定されている、の4つの要素が問題文に隠れていることを読み取りましょう。

  • 売掛金¥74,000が回収不能(無くなった)
    売掛金は資産のグループであるため、その減少取引として貸方に仕訳します。
  • 前受金¥14,000と相殺した
    前受金は負債のグループであるため、その減少取引として借方に仕訳します。
  • 当期発生¥20,000の売掛金が含まれている
    当期に発生した売掛金が回収不能となった場合は、貸倒引当金を使用せず、貸倒損失(費用)と仕訳します。
  • 貸倒引当金が前期末に設定されている
    売掛金の残額(¥74,000-¥14,000-¥20,000=¥40,000)には、貸倒引当金が設定されているため、これを取り崩すために借方に仕訳します。

考え方

関連しあっている収益と費用は、なるべく同じ期に対応させて、損益計算書を作ると覚えましょう。

  • 1期に売上(収益)→2期に貸倒れ

    1期末に「貸倒引当金繰入(費用)」を計上することで1期に収益と費用を対応させる。

    2期の貸倒時には、引当金を取り崩すことで費用を計上しない。

  • 1期に売上(収益)→1期に貸倒れ

    貸倒時に「貸倒損失(費用)」を計上することで1期に収益と費用を対応させる。

参考日商簿記3級Webセミナー

日商簿記3級の合格を目指すなら大原

大原は、資格の一発合格を目指すための学校です。ここでは簿記3級合格者を多数輩出している大原の特徴を4つにわけて紹介します。

1.簿記3級だけでもコースが豊富

簿記3級を受験したい方のなかでもレベルは人それぞれです。まったく知識がない初心者の方もいれば、ある程度知識があり試験直前に集中して問題を解きたいなど、さまざまな方がいます。

大原では、簿記3級だけでも豊富なコースがそろっています。「ゼロから学校で学びたい」、「独学で知識を学んでいるので模擬試験だけを集中的に受けたい」「ネット試験での合格を目標に学びたい」など、それぞれのニーズを満たすコースが用意されているので効率的に学ぶことが可能です。

2.合格のための万全なサポート体制

大原では、受講生が一発で合格できるように、さまざまなサポートを用意しています。
その一つが、気軽に質問できる環境です。疑問や不明点があれば、講師が対応できるようにしています。安心して気軽に質問をすることが可能です。

また、ネット試験と同様にPCでトレーニングできる「3級模擬試験プログラム」(合格コース標準装備)やスキマ時間にスマホで学習できる「Web問題集」などの各種学習ツールもご用意しています。

3.簿記を知り尽くした講師陣による講義

大原の講師陣は、簿記や会計を知り尽くしたプロです。受講生一人ひとりの得意や不得意に向き合いながら行なう講義は、わかりやすいと好評です。

簿記検定は改定が頻繁にありますが、それに合わせて大原の教材も毎年改定されています。簿記を知り尽くした講師陣が作成しているので、教材は常に最新の対策がされており安心して受講できます。

4.簿記を知り尽くした大原だからできるカリキュラム

大原のカリキュラムは、長年のノウハウを存分に生かしたオリジナルのカリキュラムです。はじめての場合は、どのように勉強していいかわからない方も多いと思います。無理したカリキュラムでは、挫折の原因にもなりうるでしょう。

【長畑講師ならではのポイント】

大原ではじめて簿記を学習された方の多くは、簿記学習を「楽しかった」とおっしゃってくださいます。今まで知らなかったことやできなかったことが、できるようになるわけですから、学びは本来とても楽しいものです。大原では、効率よく、ストレスなく、楽しく学習することができます。一緒に楽しく学びましょう!

まとめ

日商簿記3級試験の出題傾向や難易度、ネット試験について解説しました。

大原では、日商簿記3級に一発合格できるように最新の対策を取り入れたカリキュラムや、テキストを用意しています。体験入学や説明会は随時開催していますので、お気軽にご参加ください。

簿記3級 セミナー・説明会・体験入学

簿記1級・2級セミナー・説明会・体験入学

資料請求

講師プロフィール

名前
長畑 拓馬
担当科目
初級~2級、1級工業簿記・原価計算
指導理念
楽しく学ぶ
紹介文
簿記検定講座の専任講師として15年間受講生指導に携わる。東洋大学や日本大学の簿記検定講座での指導実績があり、その論理的な説明は「説明が上手すぎる!」など高い評価を得ている。また、大原オリジナルのテキストや模擬試験も制作しており、中央経済社発刊の「土日で合格る日商簿記初級」を始めとした「大原で合格るシリーズ」の執筆も担当。簿記の初級から1級まで幅広く精通している。

大原の講師が徹底解説!