特別連載
「10分でわかる!○○業界トピックス」
vol.4(税理士業界編)

コラムタイトル:活躍できる税理士に求められる能力 ~将来のために身に付けておくべきスキルとは~

コラムタイトル:活躍できる税理士に求められる能力 ~将来のために身に付けておくべきスキルとは~

資格の大原による、お役立ち情報をお届けするコラムシリーズです。
(公開:2024.8.22)

はじめに

ビル群をバックに、未来への希望に満ちた男女の税理士たちのイメージ写真です。

税理士 試験合格後も、業界の変化に対応し続けることが求められる税理士業界。デジタル化やグローバル化といった大きな潮流を理解し、それに適応できる柔軟性と学習意欲が、これからの税理士に求められる重要な資質となります。本記事では、変革期にある税理士業界で、身に付けておくべき知識や能力について解説します。

【この記事のポイント】

・税理士試験の合格後、身に付けておくべき知識や能力について解説
・税理士業界でのAIの活用用途と活用領域について知る
・コンサルティング業務に強い税理士になるための知識と能力

税理士に求められる知識や能力について

都会で精力的に働く税理士たちのイメージ画像です。

近年、税務申告や会計処理のデジタル化が急速に進んでいます。2023年10月からインボイス制度が導入されたことも相まって、税理士には従来の知識に加え、最新のデジタルツールやソフトウェアの活用能力が求められています。具体的には、クラウド会計ソフトやデータ分析ツール、サイバーセキュリティに関する基礎的な知識などが挙げられます。

また、グローバル化が進むなか、中小企業でも海外取引が増加していることを受け、租税条約の基本的な理解や、移転価格税制の知識、外国税額控除制度の理解など、国際税務に関する知識がますます重要になっています。

税制については改正が多いため、常に最新の情報をキャッチアップする姿勢が不可欠です。なお、複雑化する税制を顧客にわかりやすく伝えるコミュニケーション力や、プレゼンテーションスキルも身に付けておくと非常に有利です。

また、税理士は単なる税務申告の代行だけでなく、顧客企業の経営戦略に関与するコンサルティング能力も求められるため、財務分析やM&Aなどに関する知識も必要となります。

税理士業界におけるAIの活用用途・領域

マジックアワー時のビル群をバックに、AIの文字が浮かんでいる画像です。

税理士業界におけるAIの活用は、業務を効率化する重要な要素です。単純作業の自動化だけでなく、高度な分析や意思決定支援など、AIは税理士の業務を多面的にサポートする存在となっています。AIを効果的に活用することで、高度な付加価値を提供できる能力が、これからの税理士には求められます。主な活用用途と領域について具体的に解説します。

1.データ入力・申告書の作成支援

AIを活用した技術により、領収書や請求書などの紙の書類をスキャンし、自動的にデータ化することが可能になっています。さらに、機械学習によって、これらのデータを適切な勘定科目に自動仕訳することができます。また、AIが過去の申告データや最新の税制改正情報を学習することで、より正確で効率的な税務申告書の作成が可能になります。

2.税務・会計上の異常検知

AIによるデータ分析により、不自然な取引や会計処理の誤りを自動的に検出することができます。これにより、人間の目では見逃しがちな微細な異常も発見でき、より精度の高い監査や内部統制が可能になります。

3.財務計画とリスク分析

機械学習アルゴリズムを用いて過去のデータを分析し、将来の財務状況や税負担を予測することができます。また、AIによるデータ分析を通じて、税務調査のリスクが高い領域を特定し、事前に対策を講じることができます。

4.自然言語処理による法令解釈支援

税法や会計基準などの複雑な法令文書をAIが解析し、特定の状況に適用される条項を抽出したり、解釈を支援したりすることができます。これにより、税理士の法令調査の効率が大幅に向上します。

5.国際税務対応の支援

多国間取引や移転価格税制などの複雑な国際税務案件に対して、AIが各国の税制や過去の判例を分析し、最適な対応策を提案することができます。

6.継続的な税制改正への対応

AIが最新の税制改正情報を学習し、それを既存の税務処理システムに自動的に反映させることで、常に最新の税制に準拠した業務遂行が可能になります。

コンサルティング業務について ~経営コンサル・財務コンサル・DXコンサル~

弁護士たちがコンサル業務の打合せをしているイメージ写真です。

税理士には、顧客企業の経営戦略に関与するコンサルティング能力も必要とされます。本項では、経営・財務・DXのコンサルに焦点をあて、それぞれの分野で必要とされる知識やスキルについて解説します。

① 経営コンサルティング

税理士における経営コンサルティングは、財務・税務の専門知識を基盤としつつ、顧客企業の経営全般に関与し、持続的な成長と価値創造を支援する役割を担っています。企業の財務諸表を深く理解し、経営課題を抽出する財務分析力や、市場分析や競合分析を踏まえ、中長期的な戦略を策定する経営戦略を立案する能力、不採算事業の見直しや新規事業の立ち上げを支援する事業再構築の知識やM&Aの専門知識、基礎的なITの知識などが挙げられます。また、経営者や従業員と効果的に対話し、信頼関係を構築するためのコミュニケーション能力も重要視されています。他には、リスクマネジメントやプロジェクトマネジメントなど問題点に関する対策・解決スキルも必要とされています。

② 財務コンサルティング

税理士における財務コンサルティングは、企業の財務状況を詳細に分析し、経営の健全性と成長を財務面から支援する役割があります。基本的な財務分析力や、資金繰りの改善や最適化を図るためのキャッシュフロー管理、将来の財務予測を行い、様々なシナリオを分析する財務モデリング能力、適切な利益管理や価格設定を支援するための原価計算・管理会計などが挙げられます。また、為替リスクや金利リスクなど、財務関連リスクへの対策を立案する財務リスク管理や、金融機関との交渉や資本市場からの調達など、最適な資金調達方法を提案・実行する能力も求められています。

③ DXコンサルティング

税理士におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)コンサルティングは、顧客企業のデジタル化を促進し、業務効率の向上や新たな価値創造を支援する役割を担っています。企業のビジョンに基づいたDX戦略を策定する能力を身に付けることが基本となってきますが、最新のクラウドベースの会計・税務ソフトウェアを活用できるスキルや、会計・税務におけるAIの活用、ビッグデータを活用した財務・経営のデータ分析スキルなども必要とされます。また、デジタル化を進めるうえでサイバーセキュリティの知識も必須です。さらに、DX導入に伴う組織変革を支援するチェンジマネジメント能力も身に付けておくと良いでしょう。

税理士が専門性を高めておくべき領域とは

室内で、若手弁護士がノートパソコンを片手に資料を確認しているイメージ写真です。

税理士が専門性を高めておくべき領域は、従来の税務・会計の枠を超えて多岐にわたります。まず、税制改正や会計基準の変更に常に対応できるよう、最新の税法や会計制度に関する深い理解が不可欠です。これには国内法規だけでなく、グローバル化に伴う国際税務や移転価格税制などの知識も含まれます。また、デジタル化の進展に伴い、クラウド会計ソフトやAI技術の活用など、ITリテラシーの向上も重要な専門領域となっています。

さらに、顧客企業の経営全般をサポートする観点から、財務分析や経営戦略立案、M&Aや事業承継に関する知識も求められます。これらの領域では、単なる数字の処理だけでなく、経営者の視点に立った提案ができる能力が重要です。加えて、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するため、デジタル戦略やデータ分析、サイバーセキュリティなどの知識も専門性を高めるべき領域となっています。

リスクマネジメントや資金調達、さらには人事・組織マネジメントに関する知識も、総合的なビジネスアドバイザーとして活躍するために必要です。また、環境や社会に配慮したESG経営やサステナビリティに関する知識も、今後ますます重要性を増す専門領域といえるでしょう。

これらの多様な領域において専門性を高めることで、税理士は単なる税務の専門家から、企業の成長と価値創造を多角的に支援できる「ビジネスパートナー」へと進化することができます。常に変化する経済環境や法制度、テクノロジーの進化に対応し、継続的に学習を重ねることが、これからの税理士には求められています。

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